Semicon Campus半導体を、知るところから。
メニュー
企業の方へ

半導体洗浄の課題:洗いすぎのリスクとドライ洗浄

半導体洗浄の課題:洗いすぎのリスクとドライ洗浄 半導体製造工程
SEMICON CAMPUS 無料講座洗浄コース3級 入門 ・ 第4講

ここまで、汚れを落とす方法を見てきました。でも、じつは、洗うこと自体にも、困りごとがあります。

この記事では、液で洗う「ウェット洗浄」の課題と、液を使わない「ドライ洗浄」という考え方を、順に説明します。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • 洗いすぎると、なぜ困るのか(表面があれる)
  • ウェット洗浄の5つの課題
  • ドライ洗浄には、どんな方法があるのか

① 洗いすぎると、表面があれる

KTH(スウェーデン王立工科大学)の講義資料は、ウェット洗浄の問題として、まず表面のあれ(マイクロラフネス)をあげています。洗う液や、汚れの金属が、シリコンの表面をけずってしまい、ごく細かいでこぼこができる、という問題です。とくに、SC-1に入っているアンモニア水の濃度が高いと、シリコンをけずって傷めると説明されています。

ほどよく洗う 洗いすぎる シリコン 表面がなめらか シリコン でこぼこ(マイクロラフネス) アンモニア水が濃い・温度が高い・時間が長い 洗いすぎ 結果:電気を運ぶ粒が動きにくくなり、ゲート酸化膜の品質も落ちる
図1 洗いすぎで表面があれるイメージ(模式図。KTHの講義資料の説明をもとに作成)
なぜ、表面があれると困るのか?

KTHの資料によると、表面があれると、トランジスタの通り道(チャネル)で電気を運ぶ粒の動きやすさ(キャリア移動度)が下がります。また、熱でつくったゲート酸化膜の品質と、こわれにくさ(絶縁破壊電圧)にも、大きな悪影響があります。つまり、汚れを落とすために洗って、トランジスタの性能を落としてしまうことがあるのです。

根拠

KTH IH2655「Lecture 3: Wafer Clean and Wet Processing」(Mikael Östling、2012年)の「Problems in Wet Cleaning」のスライド。

確認クイズ:SC-1で、何の濃度が高いと、シリコンの表面が傷みやすいですか?

答え:アンモニア水(NH4OH)の濃度です。

② あれを減らす3つの方法

KTHの資料が示す対策は、次の3つです。

  • アンモニア水の濃度を下げる
  • 洗う温度を下げる
  • 洗う時間を短くする

第3講で見た、IMECの「アンモニア水:過酸化水素水:純水=0.05:1:5」は、この1つ目の考え方の例です。

数字で考えてみよう

10リットルの液をつくるとき、アンモニア水はどれくらい必要でしょう。

標準のSC-1(1:1:5)は合計7なので、10 × 1 ÷ 7 ≒ 1.43リットル。IMECの方法(0.05:1:5)は合計6.05なので、10 × 0.05 ÷ 6.05 ≒ 0.083リットル(83ミリリットル)。

1.43 ÷ 0.083 ≒ 約17倍の差です。(「0.05と1の差は20倍」でも、全体の合計がちがうため、約17倍になります)

確認クイズ:表面のあれを減らす方法を、3つ答えてください。

答え:アンモニア水の濃度を下げる、温度を下げる、時間を短くする、です。

③ ウェット洗浄の5つの課題

KTHの資料は、ウェット洗浄の課題として、あれのほかにも、次の5つをあげています。

  • 粒子をもちこむことがある(薬品や純水に、粒子がふくまれる)
  • 乾かすのがむずかしい
  • コストがかかる
  • 廃液の処理が必要
  • 先端の集積技術と相性が悪くなってきた
なぜ、洗うのに、粒子をもちこむのか?

洗う液も、純水も、100%きれいとは限らないからです。KTHの資料には、半導体用の薬品の中に含まれる粒子の数を示すグラフもあります。洗う道具(液)が汚れていれば、洗うほど汚れることになってしまいます。

数字で考えてみよう

第1講で、約400工程のうち約80が洗浄でした。もし、洗浄1回につき、薬品や純水が10リットルいるとすると、80 × 10 = 800リットル(1枚のウェハが通る道のりで)。(10リットルは、考え方を示すための例です)

回数が多いほど、コストや廃液も増えます。洗い方を工夫する意味が、数字でわかります。

確認クイズ:ウェット洗浄の課題を、1つ答えてください。

答え:(例)粒子をもちこむ、乾かしにくい、コストがかかる、廃液の処理が必要、先端技術と相性が悪い、のどれか。

ウェット洗浄(液で洗う) 5つの課題 ① 粒子をもちこむことがある② 乾かすのがむずかしい③ コストがかかる④ 廃液の処理が必要⑤ 先端技術と相性が悪い+ 洗いすぎで表面があれる ドライ洗浄(液を使わない) 4つの方法 ① HF/水蒸気(ガス)② 紫外線オゾン洗浄③ 水素/アルゴンのプラズマ④ 加熱による洗浄気をつけること:エネルギーで、ウェハを傷めないようにする
図2 ウェット洗浄の課題と、ドライ洗浄の方法(KTHの講義資料の整理)

④ 液を使わない「ドライ洗浄」

そこで考えられたのが、液を使わず、ガスやエネルギーで汚れを落とす「ドライ洗浄」です。KTHの資料は、方法として次の4つを紹介しています。

  • HF/水蒸気(ガス)による洗浄:フッ酸の蒸気で、自然酸化膜を落とす
  • 紫外線オゾン洗浄(UVOC):紫外線とオゾンで、有機物を分解する
  • 水素/アルゴンのプラズマ洗浄
  • 加熱による洗浄
ドライ洗浄で、気をつけることは?

低い温度で反応を起こすには、エネルギーが必要です。そのエネルギーは、プラズマ、イオンビーム、短い波長の光、熱などから与えます。ただし、そのエネルギーで、ウェハを傷めないようにすることが大切だと、KTHの資料は述べています。

⑤ 洗う「入れもの」も大切

薬品を入れる容器や、ウェハを運ぶ入れもの(キャリア)も、汚れの原因になります。KTHの資料では、SC-1・SC-2などは、石英またはテフロンの容器、フッ酸は、テフロンの容器を使う、ウェハのキャリアは、石英かテフロンだけ、とされています。

この講のポイント

洗いすぎは、表面をあらして、トランジスタの性能を落とす。対策は、濃度・温度・時間を下げること。ウェット洗浄には、粒子・乾燥・コスト・廃液・先端技術との相性という課題があり、ドライ洗浄も使われる。

次の記事では、洗浄の「出来ばえ」を、どうやって確かめるのかを見ていきます。

ことばのおさらい

  • マイクロラフネス:表面にできる、ごく細かいでこぼこです。
  • ウェット洗浄:液を使って洗う方法です。
  • ドライ洗浄:液を使わず、ガスやエネルギーで洗う方法です。
  • テフロン・石英:薬品にも強く、汚れが出にくい容器の材料です。

よくある誤解

Q. たくさん洗うほど、きれいになりますか?

いいえ。洗いすぎると、表面があれて、トランジスタの性能が落ちることがあります。

Q. 液で洗えば、ぜったいに粒子は増えませんか?

いいえ。薬品や純水にふくまれる粒子が、ウェハにつくことがあります。

参考にした公式情報

タイトルとURLをコピーしました