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平坦化とは?半導体でなぜ表面を平らにするのか、段差・露光のピント・多層配線からわかりやすく解説【平坦化・配線3級・第1講】

SEMICON CAMPUS 無料講座平坦化(CMP)・配線コース3級 入門 ・ 第1講
① 膜を重ねた直後下の配線の形で、でこぼこになる② 研磨でこすって削るヘッド研磨パッド押しつける力回転薬液+砥粒の液(スラリー)が間に入る③ 平らになったどこも同じ高さ高い所と低い所がある表面がなめらか
水色が膜、灰色がウェハです。膜を付けたり削ったりすると、表面に高い所と低い所(段差)ができます。それを研磨で削ると、高さがそろいます。(簡易の模式図)

今回のテーマは、

「なぜ、半導体づくりでは表面を平らにする工程が要るのか」

答え:段差があると、光で形を描くときにピントが合わず、上に重ねる配線も切れやすくなるからです。そこで、表面を研磨して平らにします。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 平らでないと何が困るか
  • ② 光で形を描くときのピント
  • ③ 配線を重ねるときの段差
  • ④ 平らにするとは何か
  • ⑤ 平らにする工程が使われる場所

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① 平らでない表面:段差はどうしてできるのか

大事なポイント:ウェハの表面は、膜を付けたり削ったりするたびに、凸凹(段差)ができます。この段差を放っておくと、次の工程がうまくいきません。

ウェハは、半導体の材料(多くはシリコン)でできた薄い円盤です。膜は、その表面に付ける薄い層で、厚さは数nm〜数µmです(1µmは1000nm、1nmは10億分の1メートルです)。配線は、トランジスタなどの部品どうしをつなぐ、細い金属の線です。回路は、膜を付けて、不要な所を削り、また膜を付ける、というくり返しでつくります。

ここで、表面の様子を考えてみます。ウェハの上に、高さ0.3µmの配線を並べたとします。その上に絶縁膜(電気を通さない膜)を付けると、膜は下の形にそって付くため、配線のある所だけ盛り上がります。つまり、表面には配線の高さにあたる約0.3µmの段差が残ります(膜厚や形で変わる、目安の話です)。

1回の段差は小さく見えても、回路づくりでは、これを何十回もくり返します。そのため、段差は、そのままにすると積み重なり、あとの工程の邪魔になります。この講では、邪魔になる理由を2つ(露光のピント、配線の切れ)に分けて学びます。

確認クイズ:ウェハの上に高さ0.3µmの配線を並べ、その上に膜を付けると、表面はどうなりやすいでしょう?

答え:配線のある所だけ盛り上がり、段差が残りやすくなります。

② 露光のピントが合わなくなる

大事なポイント:回路の形を光で描く露光には、ピントが合う範囲があります。表面の段差がその範囲より大きいと、ぼやけた形になります。

段差が小さい:どちらもピントが合うピントが合う範囲低い面高い面どちらの面にも、くっきり形が写る段差が大きい:片方がぼやけるピントが合う範囲高い面低い面光が広がり、ぼやける高い面にはピントが合うが、低い面は合わない
黄色の枠が、ピントが合う範囲です。左は、高い面も低い面も枠に入ります。右は、段差が枠より大きく、高い面が枠の外に出てぼやけます。(簡易の模式図。数値は入れていません)

露光は、光を当てて、回路の形をレジスト(光に反応する樹脂の膜)に焼き付ける工程です。カメラと同じように、ピントが合う範囲があり、これを焦点深度といいます。回路の線が細くなるほど、この範囲は狭くなります。参考にした資料でも、最新の微細な技術では、必要な平らさが「オングストローム(1オングストロームは0.1nm)」の単位になると書かれています。

表面に段差があるとどうなるでしょうか。高い所にピントを合わせると低い所がぼやけ、低い所に合わせると高い所がぼやけます。段差が焦点深度の範囲に収まれば問題ありませんが、範囲より大きいと、1か所にしかピントが合いません。ぼやけた所では、設計どおりの細い線が描けず、線が太ったり、つながったりします。

そこで、段差を、ピントが合う範囲に収まるまで減らすことが、平らにする大きな目的の1つです。資料でも、研磨でウェハ全体を、露光装置の焦点深度の範囲に入れられると説明されています。

確認クイズ:段差が、ピントが合う範囲より大きいと、どうなりますか?

答え:高い所と低い所の両方にピントを合わせられず、片方がぼやけます。

くわしく見る:仮の数値で、段差と焦点深度を比べる

ピントが合う範囲が0.2µmだと仮定します(理解のための仮の値で、実際の装置の値ではありません)。段差が0.3µmだと、0.3 > 0.2 なので、高い面と低い面を同時には範囲に入れられません。

0.3µm(段差) > 0.2µm(ピントが合う範囲) → 片方がぼやける

研磨で段差を0.05µmまで減らすと、0.05 < 0.2 なので、両方が範囲に入ります。このように、段差の大きさと焦点深度を比べると、平らにする必要があるかどうかが分かります。

③ 配線の積み重ねで、段差が増えていく

大事なポイント:配線は何層も重ねます。段差を放っておくと、層ごとに段差が引き継がれ、配線が切れやすくなります。

平らにしない:段差が積み重なる急な坂で、線が細く・切れやすい毎回平らにする:どの層もきれい線をまっすぐ、同じ太さで作れる配線(金属の線)膜次の膜
左は、段差を放置して層を重ねた例です。段差が上の層まで引き継がれ、その上を通る配線は、段差の角で細くなったり切れたりしやすくなります。右は、層ごとに平らにした例です。(簡易の模式図)

現在の回路は、配線を1層だけでなく、何層にも重ねて(多層配線といいます)つくります。参考にした資料では、複雑な回路では15層を超えることもあると書かれています(2018年時点の記述です)。

層を重ねるたびに、段差がそのまま引き継がれると、上へ行くほど表面の高低差が大きくなります。また、金属の配線が段差を乗り越える所では、角で膜が薄くなったり、切れたりしやすくなります(断線)。資料にも、研磨が使われる前は、表面の荒れによる断線を避けるため、上の層ほど配線の幅やすき間を大きく取る決まりがあった、と書かれています。研磨で平らにできるようになって、より細かい配線がつくれるようになりました。

つまり、平らにすることは、配線を細かく、何層にも重ねるための前提です。第3講以降で、この積み重ねの中で配線がどうつくられるかを学びます。

確認クイズ:層ごとに平らにしないで配線を重ねると、配線にはどんな心配がありますか?

答え:段差の角で配線が細くなったり切れたり(断線)しやすくなります。

くわしく見る:段差の積み重ねを、単純に足し算する

1層ごとに0.1µmの段差が引き継がれ、平らにしないまま5層重ねたとします(単純化した目安です。実際の高さは形や膜で変わります)。

0.1 × 5 = 0.5 µm

1層では0.1µmで済む段差が、5層では約0.5µmになります。前の節の例(ピント範囲0.2µm)と比べると、大きく超えてしまいます。層ごとに平らにすれば、段差は毎回ほぼ0に戻ります。

④ 「平らにする」とは、どういうことか

大事なポイント:目的は、鏡のようにすることではなく、次の工程が許す範囲まで、ウェハ全体の高さをそろえることです。そのために研磨が使われます。

平らにすることを、平坦化(へいたんか)といいます。表面を平らにする方法には、いくつかあります。その中で、ウェハ全体を研磨する方法が、CMP(化学機械研磨、Chemical Mechanical Polishing)です。CMPは、薬液で表面を変化させる化学の作用と、細かい粒で削る機械の作用を、組み合わせた方法です。くわしくは、次の第2講で学びます。

ここで大切なのは、ただ表面を磨くのではなく、「高い所を選んで削る」ことです。資料には、CMPは凸凹のある表面をならして、ウェハを平らにし、次の回路の要素を重ねる準備をする、と書かれています。また、全体を焦点深度に収めるだけでなく、場所によって材料を選んで除くこともできます。

平らさに終わりはありません。次の工程(たとえば露光)が必要とする平らさに入れば、目的は果たせます。必要以上に削ると、時間も材料も無駄になり、次の講以降で学ぶ不良の原因にもなります。

確認クイズ:CMPとは、何と何を組み合わせた方法でしょう?

答え:薬液による化学の作用と、細かい粒で削る機械の作用です。

⑤ 平らにする工程が使われる場所

大事なポイント:CMPは、素子を分ける溝の酸化膜、層の間の絶縁膜、タングステンの栓、銅配線など、回路のいろいろな所で使われます。

参考にした資料では、CMPは、酸化膜、タングステン、銅などに対して開発された、と説明されています。代表的な使い道を、3つ挙げます。

  • 素子分離(STI):トランジスタどうしを電気的に分ける壁を、シリコンに溝を掘って、酸化膜で埋めてつくります。溝を埋めると、表面には酸化膜が余って残ります。CMPで、その余りを削り、活性領域(トランジスタをつくる部分)の高さに合わせます。
  • 層間絶縁膜:配線と配線のあいだを埋める絶縁膜です。段差が残らないよう、膜を付けたあとで研磨して平らにします。第4講で学びます。
  • 銅配線:銅は削って形をつくるのが難しく、溝に銅を埋めて、あふれた分をCMPで除く方法が使われます。第3講で学びます。

このように、CMPは、回路の多くの層で何度も使われる、基本の工程です。研磨で表面が平らになるおかげで、次の層の露光が正しく行えます。

確認クイズ:素子分離の溝を酸化膜で埋めたあと、表面に余った酸化膜は、どうやって除かれますか?

答え:CMP(研磨)で除かれます。

この講のまとめ

この講のポイント

膜を付けたり削ったりすると表面に段差ができ、そのままだと次の工程の邪魔になります。
段差が焦点深度より大きいと露光のピントが合わず、配線を重ねるときは断線の原因になります。
表面を研磨して平らにする工程がCMPで、素子分離、層間絶縁膜、銅配線など、多くの層で使われます。

次の講では、CMPの装置と、研磨パッド、研磨液(スラリー)、圧力と回転のはたらきを学びます。

ことばのおさらい

  • ウェハ:半導体の材料でできた、薄い円盤です。
  • 膜:ウェハの表面に付ける、薄い層です。
  • 配線:部品どうしをつなぐ、細い金属の線です。
  • 段差:表面の高い所と低い所の高さの違いです。
  • 焦点深度:ピントが合う範囲の幅です。
  • 多層配線:配線を何層にも重ねた構造です。
  • 平坦化:表面を平らにすることです。
  • CMP:化学機械研磨。化学の作用と機械の作用を組み合わせて、表面を研磨して平らにする工程です。

よくある誤解

Q. 平らにするのは、見た目をきれいにするためですか?

いいえ。露光のピントを合わせ、上に重ねる配線の断線を防ぐためです。必要な平らさに入れば目的は果たせます。

Q. CMPは、銅配線だけに使われるのですか?

いいえ。素子分離の酸化膜、層間絶縁膜、タングステンなど、いろいろな膜に使われます。

参考にした公式情報

段差0.3µm、焦点深度0.2µm、0.1µm×5層などの数値は、理解のために置いた仮の値です。膜が下の形にそって付く、配線が段差の角で細くなる、という説明は、一般的な知識にもとづく目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。

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