今回のテーマは、
「研磨や配線では、どんな不良が起きるのか。それをどう見つけるのか」
答え:銅が凹む、絶縁膜が減る、傷や残りかすがつく、埋め込みで空洞ができる、電流で断線する、といった不良があります。段差の測定や電気テストで調べて、原因の工程へ戻します。
この記事でわかること
- ① 凹みと削れすぎ
- ② 傷と残りかす
- ③ 埋め込みの空洞
- ④ 電流による断線
- ⑤ 不良の見つけ方
※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。
① ディッシングとエロージョン:凹みと削れすぎ
大事なポイント:研磨のあと、広い銅配線の中央が凹むのがディッシング、密な所の絶縁膜まで削れるのがエロージョンです。
CMPは、高い所を狙って削りますが、配線の形(広さや密度)によって、削れ方にむらが出ます。このむらを、2つに分けて説明します。参考にした研究資料では、ディッシングを「銅の配線が、隣の酸化膜より凹んでいる高さ」、エロージョンを「酸化膜の、元の高さと研磨後の高さの差」と定義しています。
ディッシングは、幅の広い配線で目立ちます。講義資料によれば、パッドが完全に硬い板ではなく、少し曲がるため、広い配線の中央で銅が余分に削れます。エロージョンは、銅の配線が近くに多くある所で起きます。そこでは、配線のあいだの酸化膜に、強い圧力がかかり、酸化膜が削れます。銅の密度が高いほど、どちらも起きやすくなります。
困る理由は2つあります。1つは、銅が薄くなって、配線の抵抗が高くなることです。もう1つは、表面が平らでなくなり、次の層の工程で、段差の問題が戻ってくることです。研究資料には、場所によって抵抗や容量が変わり、表面の凹凸が製造上の問題になる、と書かれています。
対策として、資料には2つの方法が書かれています。幅の広い配線に絶縁膜の島を入れて銅の密度を下げる方法(スロッティング)と、配線のない広い所に、電気的につながらない銅の島を足して密度を上げる方法(ダミーフィル)です。銅の密度を、研磨しやすい範囲にそろえるのが狙いです。
確認クイズ:幅の広い銅配線の中央が、凹んで削れる不良を、何といいますか?
答え:ディッシングです。
くわしく見る:凹んだ分だけ、抵抗がどれだけ増えるか
銅の厚さが300nmの配線が、ディッシングで50nm凹んだとします(仮の値です)。残る厚さは 300 − 50 = 250nm です。幅と長さが同じなら、断面積は厚さに比例し、抵抗は断面積に反比例するので、
300 ÷ 250 = 1.2 倍(約20%増)
になります(バリア膜などは無視した目安です)。わずかな凹みでも、薄い配線ほど、抵抗への影響が大きくなります。
② 傷と残りかす:研磨のあとに残るもの
大事なポイント:研磨では、表面に傷がついたり、粒や削りくずが残ったり、薬品で腐食したりすることがあります。洗浄が大切です。
研磨は、粒で表面を削る工程なので、表面に細い傷(スクラッチ)がつくことがあります。大きな粒が混ざった場合や、硬いごみがパッドとウェハのあいだに入った場合に起きやすい、と一般に説明されます。傷が深いと、配線や絶縁膜が欠けて、不良につながります。
また、研磨のあとには、スラリーの粒や、削りくずが、表面に残ります。残ったままだと、次の工程で、膜がうまく付かない、配線が短絡(つながってしまう)するなどの原因になります。だから、研磨のあとは、洗って、粒や削りくずを落とします。
参考にした資料には、CMPの不良として、ほかに、スラリーの薬品による腐食、強い力による割れ、層の境目でのはがれ、が挙げられています。割れやはがれは、第4講で学んだように、強度の低い絶縁膜で特に心配されます。
確認クイズ:研磨のあとに、スラリーの粒や削りくずが残ると、どうなる心配がありますか?
答え:次の工程で、膜がうまく付かない、配線が短絡するなどの不良の原因になります。
③ ボイド:埋め込みでできる空洞
大事なポイント:細くて深い溝やビアに銅を埋めるとき、入口が先にふさがると、中に空洞(ボイド)が残ります。
第3講で学んだように、銅は、めっきで溝やビアに埋めます。細くて深い所では、奥に銅イオンが届くのが遅く、奥のめっきが遅くなります。入口が先に銅でふさがると、その下に、空洞が残ります。この空洞がボイドです。参考にした資料にも、このような埋め込みで、内部にボイドができることが書かれています。
ボイドは、配線の断面を減らして抵抗を上げたり、ひどいと配線を切ったりします。また、最初は問題がなくても、使っているうちに、ボイドが成長して断線することがあります。ボイドは、埋め込みの工夫(底から先に付ける)と、検査で防ぎます。
ほかにも、シード層(めっきの土台)に切れ目があると、その部分には銅が付かず、空洞や欠けの原因になります(一般的な説明です)。
確認クイズ:めっきで、溝の入口が先にふさがると、何ができますか?
答え:中に、空洞(ボイド)ができます。
④ エレクトロマイグレーション:電流で配線が壊れる
大事なポイント:配線に電流が流れ続けると、電子が金属の原子を押して動かし、配線の一部が切れたり、盛り上がったりします。
エレクトロマイグレーションは、電子が金属の原子に勢いを与えて、原子が少しずつ動く現象です。参考にした資料では、粒の境目や膜の境目など、原子の結びつきが弱い所で、特に起きやすいと説明されています。電流が大きい、温度が高い、電流が一部に集中する、といった条件で、進みやすくなります。
原子が動くと、2つの故障が起きます。原子が抜けた所にはボイドができ、配線が切れます(開放)。原子がたまった所にはヒロックという盛り上がりができ、隣の配線と接触すると、短絡(ショート)します。
銅は、アルミより、この現象に強いとされます。資料によれば、同程度の信頼性で、銅はアルミの約5倍の電流密度に耐えます。ただし、配線が細くなると、電流密度が上がり、問題はなくなりません。対策として、配線を広くする、ビアを複数にして電流を分ける、90度の角を避ける、設計の検査ソフトで確認する、などがあります。細い銅配線でも、電流密度と温度に余裕をもたせて設計します。
確認クイズ:エレクトロマイグレーションで、原子が抜けた所と、たまった所には、それぞれ何ができますか?
答え:抜けた所にボイド(断線のもと)、たまった所にヒロック(盛り上がり。隣と短絡のおそれ)ができます。
くわしく見る:寿命の見積もり式(ブラックの式)
配線が壊れるまでの平均時間(MTTF)の目安として、資料には、次の式が紹介されています。
MTTF = A ÷ Jⁿ × exp(Eₐ ÷ kT)
Jは電流密度、Tは温度(ケルビン)、Eₐは活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Aは配線の断面積などで決まる定数で、nは、ブラックは2としたと書かれています。温度が高いほど寿命は短くなります。nが2のとき、電流密度が2倍になると、寿命は、
1 ÷ 2² = 1/4
になります(他の条件が同じとした目安です)。なお資料には、この式は、ナノメートルの大きさの配線では、当てはまりが怪しくなる、とも書かれています。
▶ 2級でくわしく:活性化エネルギーと温度による寿命の変化。
⑤ 不良の見つけ方:形を測る検査と、電気を測る検査
大事なポイント:研磨後の形は段差などを測って、配線の良し悪しは電気を測って調べます。結果を研磨や設計に戻して、不良を減らします。
不良は、見つけて、原因を直すことが大切です。調べ方は、大きく2つに分けられます。
- 形を測る:研磨後の表面の高さの変化を、針でなぞる方法(段差計、プロファイロメトリ)などで測ります。研究資料には、段差の測定が、ディッシングとエロージョンの調べに有用だと書かれています。外観の検査で、傷や残りかすを調べる方法もあります(一般的な説明です)。
- 電気を測る:配線の抵抗を測って、断線(抵抗が極端に高い)や、短絡(つながってはいけない所がつながっている)を調べます。研究資料には、試験用の配線パターンの電気の測定から、配線の厚さを求められると書かれています。また、高温で長時間電流を流す試験を行い、結果から寿命を見積もる方法が、エレクトロマイグレーションの評価に使われます。
測った結果は、研磨の条件や、配線の設計(密度をそろえるなど)に戻します。不良を見つけるだけでなく、原因の工程へ戻して、直すことが大切です。
この講までで、平坦化と配線の工程の、全体像を学びました。平らにする(第1講)、研磨する(第2講)、銅を埋める(第3講)、絶縁膜を選ぶ(第4講)、不良を防ぐ(第5講)が、1つの流れになっています。
確認クイズ:配線の断線やショートを調べるのは、形を測る検査と、電気を測る検査のどちらが向いていますか?
答え:電気を測る検査です(抵抗を測って、断線や短絡を調べます)。
安全のひとこと:研磨液や洗浄に使う薬品は、種類によって危険なものがあります。検査装置や、高温の試験でも同様です。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。
この講のまとめ
研磨では、広い銅配線が凹むディッシング、密な所の絶縁膜が減るエロージョン、傷や残りかすが起きます。
埋め込みではボイドができ、使っているうちに、電流で原子が動くエレクトロマイグレーションで、断線や短絡が起きます。
形を測る検査と電気を測る検査で不良を見つけ、研磨条件や設計に戻して減らします。
これで、平坦化(CMP)・配線3級の5講は終わりです。2級では、研磨の条件や、配線の信頼性を、式を使って、さらにくわしく学びます。
ことばのおさらい
- ディッシング:広い銅配線の中央が、凹んで削れる不良です。
- エロージョン:配線が密な所で、絶縁膜が削れて低くなる不良です。
- スロッティング:広い配線に絶縁膜の島を入れて、銅の密度を下げる方法です。
- ダミーフィル:配線のない所に、電気的につながらない銅の島を足す方法です。
- スクラッチ:研磨でつく、細い傷です。
- ボイド:配線や埋め込みの中にできる空洞です。
- エレクトロマイグレーション:電流で、金属の原子が動いて、配線が壊れる現象です。
- ヒロック:原子がたまってできる、配線の盛り上がりです。
よくある誤解
Q. 研磨すれば、どんな配線の形でも、同じように平らになりますか?
いいえ。配線が広い所や密な所では、ディッシングやエロージョンが起きます。そのため、配線の密度をそろえる工夫をします。
Q. 銅は、エレクトロマイグレーションが起きないのですか?
いいえ。アルミより強いだけで、細くなって電流密度が上がると、問題になります。
参考にした公式情報
- MITのBoning研究室の論文「Overview of Methods for Characterization of Pattern Dependencies in Copper CMP」(2000年、冒頭の要旨と導入を読んだ)(ディッシングとエロージョンの定義、パターン依存、段差測定と電気測定)
- NPTEL「Module 4: Removal Techniques」Lecture17(エロージョン、銅の密度、スロッティング、ダミーフィル)
- NPTEL「Module 4: Removal Techniques」4_3_2(ディッシングの定義、広い配線での発生)
- Wikipedia「Chemical-mechanical polishing」(CMPの不良(腐食、割れ、はがれ))
- Wikipedia「Copper interconnect」(ボイドと埋め込み)
- Wikipedia「Electromigration」(エレクトロマイグレーションの仕組み、ボイドとヒロック、ブラックの式、銅とアルミ、対策)
300nmと50nmの凹み、電流密度2倍などの数値は、理解のために置いた仮の値です。スクラッチの原因と、傷・残りかす・シード層の切れ目の説明、外観検査は、一般的な知識にもとづく目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。MITの資料は、要旨と導入部のみを読みました。
