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アニール(熱処理)とは?半導体の活性化・RTA・拡散をわかりやすく解説【イオン注入・熱処理3級・第4講】

SEMICON CAMPUS 無料講座イオン注入・熱処理コース3級 入門 ・ 第4講
注入した直後アニールのあと熱をかける結晶は乱れ、赤い不純物は、すき間にいる結晶が整い、赤い不純物が原子の位置に入る
簡易の模式図です。灰色がシリコン原子、赤が不純物の原子です。

今回のテーマは、

「熱処理(アニール)は、なぜ必要で、何を直し、どんな工夫が行われるのか」

答え:注入したままでは、結晶が傷つき、不純物も働けません。高温に保つと、結晶が直り、不純物が原子の位置に入って電気を運ぶようになります。ただし、熱で不純物が広がるので、温度と時間を工夫します。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 注入直後は働けない状態
  • ② アニールの2つの役目
  • ③ 熱の副作用(拡散)
  • ④ 炉と、短時間で熱する方法
  • ⑤ 温度と時間の考え方

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① 注入したままでは、不純物は働けない

大事なポイント:イオン注入の直後は、結晶が乱れ、不純物の多くは、電気を運べない場所にいます。

前の講で、イオンが当たると、結晶が乱れることを学びました。もう1つの問題は、打ち込まれた不純物の位置です。不純物の原子は、止まった場所に、そのまま留まっています。その場所は、多くの場合、シリコン原子の並びのすき間か、乱れた部分の中です。

第1講で、リンが電子を1個余らせて電気を運ぶ、と説明しました。この仕組みが働くためには、不純物の原子が、シリコン原子の代わりに、結晶の原子の位置にはまって、まわりの原子と手をつなぐ必要があります。すき間にいる不純物は、手をつなげないため、電子や正孔を生みません。

したがって、注入が終わった時点のウェハは、不純物の量は入っていても、n型やp型としては、まだほとんど働いていません。この状態から、働ける状態にするのが、熱処理(アニール)です。

確認クイズ:不純物が電子や正孔を生むためには、結晶のどこに入る必要があるでしょう?

答え:シリコン原子の代わりに、結晶の原子の位置です。

② アニールの2つの役目:結晶を直す、不純物を働かせる

大事なポイント:ウェハを高温に保つと、原子が動けるようになり、結晶が整い、不純物が原子の位置に入ります。

アニールとは、ウェハを高温に保つ熱処理のことです。熱を加えると、原子の振動が大きくなり、少しずつ動けるようになります。この動きが、役に立ちます。

1つ目の役目は、損傷の回復です。弾き飛ばされた原子が、空いた場所へ戻り、結晶の並びが整います。非晶質になった部分も、下にある結晶の並びを型として、再び結晶になることがあります(一般的な説明です)。

2つ目の役目は、活性化です。「活性化」とは、不純物が、結晶の原子の位置に入って、電子や正孔を生むようになることです。活性化して初めて、n型やp型としての働きが生まれます。

どれくらいの温度が必要かは、不純物の種類や量で変わります。損傷の回復は、比較的低い温度から始まり、活性化には、およそ900〜1000℃を超える温度が使われる例が多い、という程度に覚えてください(一例です。実際の条件は工程で決まります)。なお、アニールの前には、高温に耐えないレジストを、取り除いておきます。

ここで、1つ注意があります。入れた不純物のすべてが、活性化するとは限りません。濃く入れすぎると、働けない不純物が増えます。▶ 2級でくわしく

確認クイズ:アニールの2つの役目は、損傷の回復と、何でしょう?

答え:活性化(不純物を働かせること)です。

③ 熱の副作用:不純物が広がる(拡散)

大事なポイント:高温にすると、不純物も動き、深い方へ広がります。広がりすぎると、設計より深い接合になってしまいます。

表面からの深さ →濃さ灰色:注入した直後赤:アニールのあと広がり、山は低くなる総量は同じで、深い方へ広がる。面積はほぼ変わらない
簡易の図です。数値は含みません。

アニールで動くのは、シリコン原子だけではありません。不純物の原子も、熱で動き、濃い所から薄い所へ広がります。第1講で学んだ拡散と同じ現象が、ここでも起きるわけです。

広がり方は、温度と時間で決まります。温度が高いほど、時間が長いほど、不純物は遠くまで動きます。しかも、温度による違いはとても大きく、少し温度を上げるだけで、動きやすさが何倍にも増えます(一般的な性質です)。

広がると、2つの困ることがあります。1つ目は、接合が深くなりすぎることです。細かい回路では、浅くてはっきりした接合が必要なので、広がりを小さく抑えたい場面が多くなります。2つ目は、横にも広がることです。注入した場所の外へ、不純物がにじみ出てしまいます。

つまり、アニールには、「損傷を直し、活性化するために、十分な熱が欲しい」けれど、「広がりを抑えるために、熱は少なくしたい」という、両立しにくい要求があります。

確認クイズ:アニールで、不純物の広がりが大きくなるのは、どんなときでしょう?

答え:温度が高いときや、時間が長いときです。

④ 炉アニールとRTA:熱のかけ方を選ぶ

大事なポイント:炉は、多数枚をまとめて、時間をかけて熱します。RTAは、1枚ずつ、ランプで急に熱して、すぐ冷まします。

炉(多数枚をまとめて)RTA(1枚ずつ、ランプで)時間 →温度時間 →温度低めの温度で、長く高い温度で、ごく短く数十分の例数秒の例
温度の高さと時間の長さを、比べるための簡易の図です。横軸の長さは、実際の比ではありません。

炉アニールは、長い管の形の炉に、ウェハを何枚もまとめて入れ、数十分、温度を保つ方法です。温度が均一になりやすい利点があります。ただし、時間が長いため、不純物の広がりが大きくなります。

RTA(ラピッド・サーマル・アニール、急速熱処理)は、ウェハを1枚ずつ、ランプなどで、速く加熱し、1000℃を超える温度でも、数秒だけ保って、すぐに冷ます方法です。資料でも、ウェハを1000℃以上に、ほんの数秒だけ加熱する、と説明されています。時間が短いので、広がりを抑えられます。

ただし、RTAには弱点もあります。短時間で熱するため、温度を正確に測って制御することが難しく、ウェハの面内で温度に差が出やすくなります。また、ウェハにかかる力も大きくなります。冷ますときは、割れや結晶のずれ(転位)を避けるため、ゆるやかに行う、と書かれています。

さらに短い時間(1秒未満)で熱する、フラッシュランプやレーザーによる方法もあります。▶ 2級でくわしく

確認クイズ:広がりを抑えるのに向いているのは、炉アニールとRTAのどちらでしょう?

答え:時間が短い、RTAです。

くわしく見る:広がりの距離を、数字で比べる

不純物の広がる距離の目安は、拡散のしやすさ(拡散係数)D と時間 t から、√(D × t) で表せます。同じ温度で、D = 1×10−14 cm2/s とします。炉で30分(1800秒)なら、

√(1×10−14 × 1800) = √(1.8×10−11) ≒ 4.2×10−6 cm ≒ 42 nm

RTAで10秒なら、

√(1×10−14 × 10) = √(1×10−13) ≒ 3.2×10−7 cm ≒ 3.2 nm

です。時間が180倍違うので、広がりは √180 ≒ 13倍ほど違います(42 ÷ 3.2 ≒ 13)。RTAは温度が高く、Dが大きくなりますが、仮にDが20倍になっても、√(2×10−13 × 10) ≒ 1.4×10−6 cm ≒ 14 nm で、炉より小さくなります。数値は、理解のための仮の値です。

⑤ 温度と時間の考え方:後の工程の熱も足される

大事なポイント:不純物の広がりは、アニールだけでなく、そのあとの熱でも増えます。全体で、どれだけ熱を受けるかを考えて、条件を決めます。

アニールは、1回で終わりではありません。注入のあとにも、膜をつける、酸化するなど、熱のかかる工程が続くことがあります。不純物は、どの工程の熱でも広がるので、全部の熱を合計して考える必要があります。この考え方を、「熱の履歴」や、英語で「サーマルバジェット」と呼ぶことがあります。

一般に、同じ程度の活性化を得るなら、温度を高くして時間を短くしたほうが、不純物の広がりを抑えやすい、とされています。そのため、細かい回路では、炉からRTAへ、さらに短い時間の方法へと、使われる方法が移ってきました(一般的な流れで、時期や工程は条件によって異なります)。

このように、熱処理の条件は、「十分に直し、十分に活性化し、広がりすぎない」という、3つの兼ね合いで決まります。次の講では、熱の別の使い方と、結果を調べる方法を説明します。

確認クイズ:広がりを考えるとき、何を合計して考える必要があるでしょう?

答え:アニールだけでなく、そのあとの工程も含めた、すべての熱です。

安全のひとこと:アニール装置は、1000℃前後の高温になる部分があり、やけどや、強い光による目の傷害に注意が必要です。窒素、酸素、水素などのガスを使うこともあり、水素のように、燃えやすいガスもあります。ウェハも、冷めるまで高温のままです。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。

この講のまとめ

この講のポイント

注入の直後は、結晶が乱れ、不純物も原子の位置にいないため、そのままでは電気を運べません。
アニールで、損傷を直し、不純物を原子の位置に入れて活性化させますが、熱で不純物が広がる副作用もあります。
炉は長時間、RTAは短時間で熱し、広がりを抑えるには、短時間で高温の方法が向いています。

次の講では、熱の別の使い方(酸化など)と、できたものを調べる方法(シート抵抗など)、よくある不良を説明します。

ことばのおさらい

  • アニール:ウェハを高温に保つ熱処理です。
  • 活性化:不純物が結晶の原子の位置に入り、電子や正孔を生むようになることです。
  • 拡散:不純物が、濃い所から薄い所へ広がる現象です。
  • RTA:急速熱処理。ランプなどで、1枚ずつ、短時間で熱する方法です。
  • 炉アニール:炉に多数枚を入れ、長い時間で熱する方法です。
  • サーマルバジェット:全工程で受ける熱の合計の考え方です。

よくある誤解

Q. アニールは、温度を高くするほど、よいのですか?

いいえ。温度が高いと、活性化は進みますが、不純物が広がり、接合が深くなります。時間も含めて、兼ね合いで決めます。

Q. 活性化すれば、入れた不純物は全部、働きますか?

いいえ。濃く入れすぎると、働けない不純物が増えます。2級で詳しく学びます。

参考にした公式情報

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