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半導体の熱酸化とシート抵抗とは?4探針法とよくある不良をわかりやすく解説【イオン注入・熱処理3級・第5講】

SEMICON CAMPUS 無料講座イオン注入・熱処理コース3級 入門 ・ 第5講
酸化の前酸化のあとシリコンシリコン酸化膜(二酸化ケイ素)もとの表面酸化膜の厚さのうち、約46%は、もとの表面より下(シリコンを使った分)、約54%は上へ伸びた分酸素や水蒸気
簡易の図です。向きは、表面から酸化膜が育つ向きです。割合は資料の値(約46%)にもとづいています。

今回のテーマは、

「熱は、アニールのほかに何に使われ、できあがりは、どう調べるのか」

答え:熱は、酸化膜をつくる、膜を緻密にする、金属とシリコンを反応させるなどにも使われます。できあがりは、電気の通りにくさ(シート抵抗)などで調べ、値のずれから不良の原因を探ります。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 熱酸化
  • ② 熱のそのほかの使い方
  • ③ 電気の通りにくさ(シート抵抗)で調べる
  • ④ そのほかの検査
  • ⑤ よくある不良と原因

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① 熱酸化:シリコンを酸化膜に変える

大事なポイント:高温の酸素や水蒸気にさらすと、シリコンの表面が、二酸化ケイ素の膜に変わります。膜の一部は、シリコンを使ってできます。

熱をかける工程の代表が、熱酸化です。ウェハを、およそ800〜1200℃で、酸素や水蒸気にさらすと、シリコンが酸素と結びつき、二酸化ケイ素(SiO2、ガラスの仲間で、電気を通しにくい)の膜ができます。

酸素を使う方法をドライ酸化、水蒸気を使う方法をウェット酸化といいます。ウェット酸化は膜が速く育つので、厚い膜に向きます。ただし、できた膜はやや粗く、絶縁の性能や界面の状態では、ドライ酸化に劣るとされます。ドライ酸化は遅いものの、質のよい膜になります。厚い膜は、ドライとウェットを組み合わせてつくることが多い、と説明されています。

酸化膜は、イオン注入にも関係します。注入の前に、ウェハの表面へ薄い酸化膜を置いて、チャネリングや表面の汚れ、傷みを減らす使い方があります。また、不純物の通り道をふさぐマスクとして、酸化膜を使うこともあります。

酸化では、膜が上へ伸びるだけでなく、下のシリコンも使われます。厚さの約46%が、もとの表面より下にあたる、と資料に書かれています。つまり、膜をつけるほど、シリコンが、その分だけ薄くなります。

確認クイズ:速く育つが、やや粗い膜になるのは、ドライ酸化とウェット酸化のどちらでしょう?

答え:ウェット酸化です。

くわしく見る:酸化で使われるシリコンの厚さ

酸化膜の厚さのうち、約46%(0.46倍)が、もとの表面より下にあたります。酸化膜を100 nm育てたとき、使われるシリコンの厚さは、

100 × 0.46 = 46 nm

です。検算として、シリコンが1に対して、酸化膜は約2.17になる、と資料にあります。46 × 2.17 ≒ 99.8 nm となり、約100 nm と合います。この計算は、理解のための例です。

② 熱のそのほかの使い方:緻密にする、反応させる

大事なポイント:熱は、膜を緻密にする、不純物を押し込む、金属とシリコンを反応させるなどにも使われます。

アニールと酸化のほかにも、熱はいろいろな目的で使われます。それぞれに、「なぜ必要か」があります。

  • 押し込み(ドライブイン):表面に入れた不純物を、熱で深い所まで広げます。浅いままでは、目的の深さにならないからです。
  • 膜の緻密化:CVDなどでつけた膜は、すき間が多いことがあります。熱で密にすると、膜が丈夫になり、電気的な性質も安定します。RTAで膜を緻密にする、と資料にもあります。
  • 金属とシリコンの反応:金属の膜をシリコンの上につけて熱すると、反応して、電気を通しやすい接触部分ができます。金属と半導体のつなぎ目の抵抗を下げるために使われます(一般的な説明です)。
  • 界面の改善:水素を含むガスの中で熱し、シリコンと絶縁膜のあいだの欠陥を減らす方法もあります(一般的な説明です)。

これらはいずれも、温度と時間で、結果が大きく変わる点が共通です。第4講で学んだ、不純物が広がる問題と、同じ考え方が使われます。

確認クイズ:表面に入れた不純物を、熱で深い所まで広げる工程を、何というでしょう?

答え:押し込み(ドライブイン)です。

③ シート抵抗:薄い層の電気の通しにくさを測る

大事なポイント:シート抵抗は、薄い層の、正方形1枚あたりの抵抗です。単位はΩ/□(オーム・パー・スクエア)です。値が小さいほど、電気を通しやすい層です。

シートの膜(不純物を入れた層)電流 I電流 I電圧 V電圧 V外側の2本で電流を流し、内側の2本で、電圧を測る4本の針が一直線に並ぶ
簡易の図です。針の間隔は一定です。

アニールのあとに、まず調べるのは、シート抵抗です。「注入した層が、狙いどおりに働いているか」を、電気の通しにくさで確かめます。

シート抵抗は、膜の厚さを t、材料の抵抗率を ρ(ロー)とすると、Rs = ρ ÷ t で表されます。正方形の薄い膜を、向かい合う2辺で測った抵抗が、大きさに関係なく同じ値になる、という考え方です。単位は、ふつうの抵抗と同じΩですが、シート抵抗とわかるように、Ω/□と書きます。

測るには、4探針法が使われます。4本の針を一直線に並べ、外側の2本で電流を流し、内側の2本で、電圧を測ります。電流を流す針と、電圧を測る針を分けるので、針と膜のあいだの接触抵抗の影響を避けられます。資料にも、接触抵抗がシート抵抗と同じくらい大きくなることがあるため、4探針法が使われる、と書かれています。

注入した層では、活性化した不純物が多いほど、電気を運ぶ粒が増えて、シート抵抗は小さくなります。したがって、シート抵抗は、活性化がうまくいったかを確かめる、簡単で分かりやすい指標になります。

確認クイズ:4探針法で、外側の2本の針は、何をするのでしょう?

答え:電流を流します。(電圧は内側の2本で測ります)

くわしく見る:シート抵抗の計算例

抵抗率が 0.01 Ω·cm の層が、厚さ 0.1 µm(=10−5 cm)のとき、

Rs = 0.01 ÷ 10−5 = 1000 Ω/□

です。シート抵抗が 100 Ω/□ の層で、長さ 100 µm、幅 2 µm の配線をつくると、長さ÷幅 = 50(正方形50個分)なので、

R = 100 × 50 = 5000 Ω

です。4探針法では、広い薄膜なら、Rs ≒ 4.53 × V ÷ I という、よく使われる式があります(一般的な式です)。V = 2.0 mV、I = 1.0 mA なら、V÷I = 2 Ω で、Rs ≒ 9.1 Ω/□ です。この計算は、理解のための仮の値です。

④ そのほかの検査:分布、膜の厚さ、ごみと傷

大事なポイント:シート抵抗だけでは、深さや分布は分かりません。目的に応じて、別の方法を組み合わせます。

シート抵抗は、層全体の平均的な電気の通しにくさを教えてくれますが、「不純物が、どの深さにどれだけいるか」は分かりません。深さごとの濃さを調べる方法として、SIMS(二次イオン質量分析)があります。試料の表面をイオンで少しずつ削り、飛び出す粒を質量で分けて数える方法です。▶ 2級でくわしく

酸化膜や、そのほかの膜の厚さは、光を当てて、反射の様子から測る方法がよく使われます。ウェハを傷つけずに測れるので、工程の途中でも使えます。

また、ウェハの表面についた、ごみ(パーティクル)や、傷の検査もあります。ごみが残ったままアニールすると、そこだけ膜が不均一になり、不良の原因になります。

実際の工場では、製品のウェハとは別に、試験用のウェハに、同じ条件で注入とアニールを行い、シート抵抗などを測ることがあります(一例です)。製品を傷つけずに、装置の状態を、定期的に確かめるためです。

確認クイズ:深さごとの不純物の濃さを調べる方法として、本文で挙げたのは何でしょう?

答え:SIMS(二次イオン質量分析)です。

⑤ よくある不良と、その原因

大事なポイント:シート抵抗や分布のずれは、注入、アニール、ウェハのどこに原因があるかを、順にたどって探します。

アニールの温度(右ほど高い)→シート抵抗低すぎる:活性化が足りず、高い十分に活性化すると、下がる傾向を示す模式図です(数値は含みません)。実際の曲線は、不純物と量で変わります
縦軸が低いほど、電気を通しやすい状態です。

よくある不良を、原因とあわせて並べます。いずれも、これまでの講で学んだ内容につながっています。

  • シート抵抗が高すぎる:アニールの温度が低い、時間が短いなど、活性化が足りない場合や、ドーズ量が少ない場合があります。
  • シート抵抗が、ウェハの面内でばらつく:走査のむらで、当たる量が違う、または、アニール中の温度むらが、原因になります。
  • 接合が深すぎる:温度が高すぎる、時間が長すぎる(広がりすぎ)、またはチャネリングで、深い所へ入ったことが考えられます。
  • 電流のもれが多い:損傷が、アニールで直りきらず、欠陥として残っている可能性があります。
  • 反りやずれ(転位):RTAなどで、急に熱して冷ます際に、温度の差が大きいと、ウェハにかかる力で起きることがあります。
  • 意図しない元素の混入:質量分離が不十分で、別の元素が入ったことが、原因になりえます。

不良は、1つの原因とは限りません。ドーズ量、エネルギー、傾き角、アニールの温度と時間などを、順に疑って、1つずつ確かめます。シート抵抗を見る際は、図のように、アニール温度が低すぎると高く、十分な温度で下がる傾向を知っておくと、判断しやすくなります。

確認クイズ:シート抵抗が高すぎるとき、疑う原因の1つは何でしょう?

答え:アニールの温度が低い、または時間が短くて、活性化が足りないことです。

安全のひとこと:酸化やアニールでは、高温の炉、酸素や水素などのガス、場合によって、塩化水素のような腐食性のガスを使うことがあります。シート抵抗の測定では、針でウェハを傷つけないように扱います。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。

この講のまとめ

この講のポイント

熱酸化は、高温でシリコンを酸化膜に変える工程で、膜の厚さの約46%は、シリコンを使ってできます。
熱は、押し込み、膜の緻密化、金属との反応などにも使われ、結果は温度と時間で大きく変わります。
できあがりは、シート抵抗(4探針法)などで調べ、値のずれから、注入、アニール、ウェハのどこに原因があるかをたどります。

これで、イオン注入と熱処理の3級は終わりです。次の段階では、分布の計算や、活性化の限界、浅い接合をつくる方法など、より細かい内容を学びます。

ことばのおさらい

  • 熱酸化:高温で、シリコンを酸素や水蒸気と反応させ、酸化膜をつくることです。
  • ドライ酸化・ウェット酸化:酸素を使う方法と、水蒸気を使う方法です。
  • 押し込み(ドライブイン):熱で、不純物を深い所まで広げることです。
  • シート抵抗:薄い層の、正方形1枚あたりの抵抗(Ω/□)です。
  • 4探針法:4本の針で、電流と電圧を分けて測る方法です。
  • SIMS:深さごとの濃さを調べる、二次イオン質量分析です。

よくある誤解

Q. シート抵抗は、オームと同じ単位ですか?

次元は同じですが、シート抵抗とわかるように、Ω/□と書きます。正方形1枚あたりの値で、大きさに関係しません。

Q. シート抵抗が低ければ、不純物の分布も正しいといえますか?

いいえ。シート抵抗は、層全体の平均的な値です。深さごとの分布は、SIMSなど、別の方法で調べます。

参考にした公式情報

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