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ドライエッチングの仕組みとは?プラズマとRIE(反応性イオンエッチング)をわかりやすく解説【エッチング3級・第3講】

ドライエッチングの仕組みとは?プラズマとRIE(反応性イオンエッチング)をわかりやすく解説【エッチング3級・第3講】 お知らせ
SEMICON CAMPUS 無料講座エッチングコース3級 入門 ・ 第3講
真空の容器の中。上の電極に電圧をかけ、ガスをプラズマにする高周波の電源イオン(+):縦に飛ぶラジカル:向きはばらばら黄色の点は電気をもたない活発な粒(ラジカル)、赤い矢印は電気をもつ粒(イオン)の向き
簡易の模式図です。実際の装置は、もっと複雑です。

今回のテーマは、

「プラズマとは何で、なぜ細かい形を縦に削れるのか」

答え:プラズマは、気体の一部が電子とイオンに分かれた状態です。そのイオンを電圧で下へ引き寄せ、ほぼ垂直に当てるので、縦に削れます。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① プラズマとは
  • ② 電子、イオン、ラジカル
  • ③ なぜ真空の容器の中で削るのか
  • ④ ドライエッチングの3つのタイプ
  • ⑤ イオンを縦に引き寄せるしくみ

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① プラズマとは、電気を帯びた粒が混ざった気体

大事なポイント:プラズマは、気体の一部が電子とイオンに分かれて、電気をよく通すようになった状態です。

ふつうの気体プラズマ(弱く電離した気体)分子が、ばらばらに飛ぶ。電気は帯びていない分子の一部が、電子(青)と+のイオン(赤)に分かれる
水色の丸は、電気を帯びていない分子です。青い小さな点が電子、赤い丸が+のイオンです。

水は、冷やすと氷(固体)になり、温めると水蒸気(気体)になります。気体をさらに強いエネルギーで刺激すると、分子や原子から電子が飛び出し、電子と、電子を失って+の電気を帯びたイオンに分かれます。このような状態をプラズマといい、固体、液体、気体に続く、「第4の状態」と呼ばれます。

プラズマには、大事な特徴が2つあります。1つ目は、電気をよく通すことです。電子とイオンが動き回れるからです。2つ目は、全体としては、+と−の量がほぼ釣り合っていることです。そのため、プラズマの塊が、強く電気を帯びるわけではありません。

半導体の工場で使うプラズマは、気体のごく一部だけが電離した、「弱く電離した」プラズマです。この場合、イオンの温度は室温に近いままで、電子だけが数千K(ケルビン、絶対温度)にもなることがあります。軽い電子は動きやすく、エネルギーを受け取りやすいので、電子だけが熱くなるのです。ウェハが熱くなりすぎない理由は、ここにあります。

確認クイズ:プラズマの2つの特徴のうち、1つ目として本文で挙げたのは何でしょう?

答え:電気をよく通すことです。

② プラズマの中の3つの粒:電子、イオン、ラジカル

大事なポイント:電子が気体の分子にぶつかると、反応しやすい粒(ラジカル)と、イオンができます。これが膜を削ります。

電子(青)が、分子(水色)にぶつかる分子衝突ラジカル(中性だが、反応しやすい)イオン(+の電気を帯びる)電子(もう1つ)衝突の結果は、3つ:励起(光る)、分解(ラジカル)、電離(イオン)
1つの分子から、反応しやすいかけら(ラジカル)や、イオンができます。

プラズマの中では、速く動く電子が、気体の分子や原子にぶつかります。ぶつかると、分子が光を出す(励起)、分子がこわれて、かけらになる(分解)、電子が弾き飛ばされて、イオンになる(電離)、のどれかが起きます。

ここで、新しい言葉を2つ説明します。ラジカルは、分子がこわれてできた、電気を帯びていない原子や分子のかけらです。ふつうの分子と違い、相手と結びつきやすい性質があります。イオンは、電子を失って+の電気を帯びた粒です。

エッチングに使われるのは、この2つです。プラズマエッチングの反応に関わる粒は、「イオン」の場合も、「中性の原子やラジカル」の場合もあります。たとえば、フッ素を含むガスを使うと、フッ素のラジカルができ、それがシリコンと結びつきます。このとき、室温でも気体になる物質(揮発性の生成物)ができると、膜は気体として運び去られます。プラズマを使わなければ、同じ反応を起こすには、もっと高い温度が必要です。

確認クイズ:プラズマの中でできる、電気を帯びていないが反応しやすい粒を、何というでしょう?

答え:ラジカルです。

③ なぜ真空の容器の中で削るのか

大事なポイント:プラズマは、圧力を下げた容器の中で、安定して光り続けます。圧力は、削り方にも関わります。

圧力の大きさを、並べてくらべる(Torr、対数目盛り)0.00010.0010.010.1110100以上RIE(0.001〜0.1 Torr)イオンミリング約0.0001 Torr一般的なプラズマエッチング0.1〜5 Torr大気圧は760 Torr(この図の右の外)。どれも、大気圧よりずっと低い
1目盛りごとに10倍です。どのドライエッチングも、大気圧よりはるかに低い圧力のもとで削ります。

ドライエッチングは、ウェハを入れた容器の空気を抜いて、圧力をとても低くします。そのあとで、少量の反応ガスを入れて、削ります。圧力を表す単位には、Pa(パスカル)やTorr(トール)があり、1 Torr ≈ 133 Paです。大気圧は、約760 Torr(約10万Pa)です。

参考資料の数字は、記事によって範囲が違います。プラズマエッチングの記事は、低圧プラズマの圧力を100 Pa未満としています。別の記事は、一般的なプラズマエッチングを0.1〜5 Torr(約13〜670 Pa)、後で出る、イオンとラジカルを組み合わせた方式(RIE)を0.001〜0.1 Torr(約0.13〜13 Pa、数mTorr〜数百mTorr)としています。方式や装置によって、圧力は変わります。どれも、大気圧の約150分の1(5 Torr)以下という、とても薄い気体の中で削ります。

圧力を低くする理由の1つは、粒がぶつかる回数を減らし、プラズマを安定して保つためです。もう1つは、イオンが、途中で他の粒にぶつからず、ウェハまで飛んでくるようにするためです。圧力が低いほど、イオンはまっすぐ飛びやすくなります(この点は一般的な考え方で、第5節で使います)。

確認クイズ:本文では、低圧プラズマの圧力は、およそ何Pa未満とされていますか?

答え:100 Pa未満です。

くわしく見る:圧力の換算と、大気圧との比

1 Torr ≈ 133.3 Pa として、単位を換算します。RIEの圧力が100 mTorrのとき、100 mTorr = 0.1 Torr なので、

0.1 × 133.3 ≈ 13.3 Pa

数mTorrなら、10 mTorr = 0.01 Torr = 約1.3 Pa です。大気圧(760 Torr)と、100 mTorr(0.1 Torr)の比は、

760 ÷ 0.1 = 7,600 倍

です。検算として、大気圧 101,325 Pa ÷ 13.3 Pa ≈ 7,600 と、同じ値になります。

④ ドライエッチングの3つのタイプ

大事なポイント:ドライは、ラジカルで削るタイプ、イオンで削るタイプ、両方を組み合わせた方式(RIE)に分けて考えられます。

化学的(ラジカル)物理的(イオンミリング)RIE(両方)向きがばらばら→ 等方的になりやすいイオンが当たって弾き飛ばす→ 異方的、選択比は低い縦に飛ぶイオンと、ラジカルの組み合わせ→ 異方的で、選択比も確保しやすい
黄色の点がラジカル、矢印がイオンです。細かい性質は、次の講で詳しく学びます。

ラジカルは電気を帯びていないので、電気の力で向きをそろえられず、あちこちへ飛びます。そのため、ラジカルだけで削ると、横にも削れる、等方的になりがちです。

イオンは電気を帯びているので、電圧をかけて、向きをそろえることができます。イオンミリング(スパッタエッチング)は、イオンをウェハにぶつけて、膜を物理的に弾き飛ばす方法です。圧力は10−4 Torrほどにも下げて行い、非常に異方的です。ただし、削る相手を選ぶ度合い(選択比)が低いことが、欠点です。

この2つを組み合わせたのが、反応性イオンエッチング(RIE)です。縦に飛ぶイオンと、反応しやすいラジカルが、一緒にはたらきます。圧力は0.001〜0.1 Torrで、縦に削れて、相手も選びやすいので、現在の細かい回路づくりの中心です。

削る膜に合わせて、ガスを選びます。参考資料では、シリコンにはSF6、酸化膜と窒化膜にはCHF3、レジストの除去には酸素のプラズマ、が挙げられています。

▶ 外部の参考ページ:反応性イオンエッチング装置の例と、使うガスの種類(大学の共用施設のページ・英語)

確認クイズ:イオンをぶつけて物理的に弾き飛ばす方法を、何というでしょう?

答え:イオンミリング(スパッタエッチング)です。

⑤ RIEは、イオンを縦に引き寄せて削る

大事なポイント:RIEは、電圧でイオンを下へ引き寄せ、ほぼ垂直にウェハへ当てます。そのため、縦に削れます。

向きは、上から下(イオンが、ウェハに向かう)上の電極(接地)下の電極(高周波13.56MHz)+イオン(電極の負の電圧に引かれる)ラジカル
下の電極には、負の電圧(自己バイアス)がたまります。そのため、+のイオンが、ウェハへ向かって、ほぼ垂直に引き寄せられます。

反応性イオンエッチング(RIE)のしくみは、次の順に進みます。

  1. 真空の容器に、反応ガスを入れます。
  2. 周波数13.56MHzの高周波を、数百Wかけて、ガスをプラズマにします。
  3. ウェハを置いた電極に、電子がたまり、負の電圧(自己バイアス)が、数百Vほど生まれます。
  4. +のイオンが、この負の電圧に引き寄せられ、ウェハへほぼ垂直に当たります。
  5. イオンが当たった底の部分で、ラジカルによる反応が進み、膜が削れます。

これが、RIEが縦に削れる理由です。イオンは、真上から飛んでくるので、側面にはほとんど当たりません。参考資料にも、「ほぼ垂直にイオンが届くので、とても異方的な形になる」と書かれています。ウェットのような、丸く広がる形にはなりません。

▶ 外部の参考ページ:反応性イオンエッチングの原理と、ICPエッチング装置の例(大学のクリーンルーム装置案内・日本語)

なお、誘導結合プラズマ(ICP)という方式では、とても高い密度のプラズマをつくれますが、形は等方的になりやすくなります。そこで、ICPを「イオンをつくる部分」として使い、別にウェハの電極へ電圧をかけて、異方性を確保する方式もあります。 ▶ 2級でくわしく

確認クイズ:RIEで、イオンがウェハへほぼ垂直に当たるのは、何の電圧に引かれるからでしょう?

答え:ウェハを置いた電極にたまる、負の電圧(自己バイアス)です。

くわしく見る:高周波の1周期と、イオンのエネルギー

周波数13.56MHz = 13.56 × 106 回/秒です。1周期は、

1 ÷ (13.56 × 106) ≈ 7.37 × 10−8 秒 ≈ 74 ナノ秒

です(1ナノ秒=10億分の1秒)。非常に速い振動です。

自己バイアスが300Vのとき、+1個分の電気をもつイオンが、この電圧で加速されると、最大で約300 eV(電子ボルト)のエネルギーをもちます。実際には、途中で他の粒にぶつかり、これより小さくなります。式の形は、一般的な物理の目安です。

安全のひとこと:ドライエッチングでは、毒性や腐食性のある反応性ガスを使います。工場では、専用の設備と決まりで厳重に管理されます。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。

この講のまとめ

この講のポイント

プラズマは、気体の一部が電子とイオンに分かれた状態で、電気をよく通し、ラジカルやイオンが膜を削ります。
ドライは、低い圧力の容器で行い、ラジカル型、イオンミリング、両方を組み合わせたRIEがあります。
RIEは、自己バイアスでイオンを垂直に引き寄せるため、縦に削れて、現在の細かい回路づくりの中心です。

次の講では、縦に削る度合い(異方性)と、削りたい膜だけを削る度合い(選択比)が、どう決まるのかを学びます。

ことばのおさらい

  • プラズマ:気体の一部が、電子とイオンに分かれた状態です。
  • ラジカル:電気を帯びていないが、反応しやすい原子や分子のかけらです。
  • イオン:電子を失って、+の電気を帯びた粒です。
  • RIE:反応性イオンエッチング。イオンとラジカルの両方で削る方法です。
  • 自己バイアス:電子がたまって、ウェハの電極に生まれる負の電圧です。
  • Torr・Pa:圧力の単位です。1 Torr ≈ 133 Paです。

よくある誤解

Q. プラズマは、高温で、ウェハが熱くなるのですか?

いいえ。工場で使う弱電離のプラズマでは、イオンの温度は室温に近く、電子だけが高温です。

Q. ドライは、必ず異方性ですか?

いいえ。ラジカルだけで削ると等方的になりやすく、ICPも等方的になりやすいことがあります。異方性は、イオンの向きをそろえることで生まれます。

参考にした公式情報

圧力の換算、周期とエネルギーの計算、「フッ素のラジカルがシリコンと結びつく」「ラジカルは向きがそろわず等方的になりやすい」「圧力が低いほどイオンがまっすぐ飛ぶ」は、一般的な知識にもとづく目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。数値の計算例は、説明用の仮の値です。

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