今回のテーマは、
「配線の材料は、なぜアルミから銅に変わり、どうやって銅の配線をつくるのか」
答え:銅のほうが電気を通しやすく、電気の流れによる断線にも強いからです。ただし銅は削って形にできないため、溝に銅を埋めて、余りを研磨で除く方法(ダマシン法)でつくります。
この記事でわかること
- ① アルミ配線のつくり方
- ② 銅に変わった理由
- ③ ダマシン法の手順
- ④ バリア膜とシード層
- ⑤ ビアも同時に埋める方法
※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。
① アルミ配線:金属を付けて、削って形にする
大事なポイント:最初の配線材料はアルミでした。アルミは、金属の膜を全面に付けてから、不要な所をエッチングで削って形にします。
配線とは、部品どうしをつなぐ細い金属の線です。参考にした資料では、アルミは最初に使われた配線材料で、膜を付けやすく、シリコンや酸化ケイ素とよく密着するため、使いやすかったと説明されています。
アルミ配線のつくり方は、次の手順です。エッチングは、膜を削って形をつくる工程です(エッチングコースで学びます)。
- ウェハの上に、アルミの膜を全面に付けます。
- レジストで、残したい配線の形をつくります。
- エッチングで、レジストのない所のアルミを削ります。
- 配線のすき間を、絶縁膜で埋めます。
このように、金属を全面に付けてから、削って形にする方法です。資料には、最初はウェットエッチング、のちにドライエッチングで形にした、と書かれています。1970年代には、純粋なアルミではなく、シリコンや銅を混ぜた合金が使われるようになりました。
ここで、絶縁膜で埋めたあとの表面には、配線の高さの分だけ段差が残ります。第1講で学んだとおり、そのままでは次の層の邪魔になるため、研磨で平らにする工程が必要になります(第4講で学びます)。
確認クイズ:アルミ配線は、どんな順番でつくりますか?
答え:金属の膜を全面に付け、レジストで形をつくり、エッチングで削ります。最後に、すき間を絶縁膜で埋めます。
② アルミから銅へ:変わった理由と、困りごと
大事なポイント:回路が細かくなると、アルミでは抵抗が高すぎるようになり、1990年代後半に銅が使われはじめました。ただし銅は、アルミと同じ方法では形にできません。
回路が細かくなると、配線も細くなります。細い線ほど、電気の通りにくさ(抵抗)が大きくなります。資料には、1990年代後半に、アルミの抵抗が細い配線では高くなりすぎ、銅に変わった、と書かれています。銅は、価格が低めの金属の中で、室温の電気抵抗がいちばん低い部類の材料だからです。
もう1つの理由は、電気の流れによる断線への強さです。配線に電気が流れ続けると、金属の原子が少しずつ動いて、配線が切れることがあります(エレクトロマイグレーション。第5講で学びます)。資料には、銅は、アルミより、この現象が起きにくいと書かれています。
ところが、銅には困りごとがあります。ドライエッチングは、膜を気体の物質に変えて、真空ポンプで排気することで削ります。しかし、資料によれば、銅は、産業で使える気体の化合物がなく、アルミのようにはエッチングで削れません。そのため、銅の配線は、「削って形にする」のではなく、「溝に埋めて形にする」方法でつくります。これが次の節のダマシン法です。
確認クイズ:銅の配線が、アルミと同じ「削って形にする」方法でつくれないのは、なぜですか?
答え:産業で使える、気体の銅の化合物がなく、エッチングで銅を気体にして除けないためです。
くわしく見る:抵抗の目安を、計算で比べる
配線の抵抗は、材料の性質(抵抗率)、長さ、断面積で決まります。
抵抗 R = ρ × 長さ ÷ 断面積
室温でのバルク(かたまり)の抵抗率の目安は、銅が約1.7、アルミが約2.7(単位はµΩ·cm)です(一般的な値の目安で、細い配線では変わります)。長さ1mm、断面が幅1µm×高さ0.5µmの配線では、アルミで約54Ω、銅で約34Ωになります。
銅:1.7×10⁻⁸ ×(1×10⁻³)÷(1×10⁻⁶ × 0.5×10⁻⁶)= 34 Ω
実際の細い配線では、次の節のバリア膜が断面を占めるため、この差は小さくなります。資料にも、アルミから銅への改善は「控えめ」と書かれています。
③ ダマシン法:溝に埋めて、研磨で余りを除く
大事なポイント:ダマシン法は、絶縁膜に溝をほり、銅を埋め、溝の外の余った銅を研磨で除いて、配線をつくる方法です。
ダマシン法の手順は、次のとおりです。
- 絶縁膜に、配線の形の溝をほります(露光とエッチングで形をつくります。それぞれ別のコースで学びます)。
- 溝の内側に、薄い膜(バリア膜とシード層。次の節で説明します)を付けます。
- 溝からあふれるまで、銅を付けます。電気めっき(銅イオンを含む液にウェハを浸し、電気を流して、表面に銅を付ける方法)が使われます。
- CMPで、溝の外の余った銅(資料では「オーバーバーデン」といいます)を除きます。
CMPは、銅と絶縁膜の境目で、くり返し止められることが重要だと、資料に書かれています。銅配線は、CMPがあって、はじめて実用になった技術です。研磨で、表面も平らになるので、次の層をそのまま重ねられます。
名前の由来は、金属の表面に溝をほって別の金属を埋める、ダマスカスの装飾の技法といわれています(一般的な説明です)。
確認クイズ:ダマシン法で、溝の外の余った銅は、どうやって除きますか?
答え:CMP(研磨)で除きます。
④ バリア膜とシード層:銅を守り、めっきの土台をつくる
大事なポイント:銅は絶縁膜やシリコンへ広がると、トランジスタの性能を悪くします。そのため、バリア膜で銅を包みます。
銅の原子は、シリコンの中へ入りこむと、電気の流れを乱す欠陥(資料では「深い準位のトラップ」)をつくります。そのため、銅の配線は、バリア膜で、完全に包む必要があります。資料には、バリアには、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)などが挙げられています。
バリア膜は、薄すぎると、銅が広がって、近くの部品がだめになります。厚すぎると、バリア膜が配線の断面の一部を占めて、全体の抵抗が高くなり、銅にした良さが消えます。そこで、バリア膜は、銅を止められる範囲で、できるだけ薄くします。
もう1つ、シード層があります。電気めっきは、電気を流して銅を付けるため、表面に電気を通す膜が必要です。そこで、バリア膜の上に、薄い銅の膜を金属を飛ばして付ける方法(PVD。成膜コースで学びます)で付けます。これがシード層で、めっきの土台になります。配線の上の面は、窒化シリコンなどの「ふた」の膜で覆われます(図の紫の膜。一般的な説明です)。シード層に切れ目があると、その部分には銅が付かず、不良になります(一般的な説明です)。
確認クイズ:バリア膜が薄すぎると、どんな問題が起きますか?
答え:銅の原子が広がり、近くの部品の性能が悪くなります。
くわしく見る:バリア膜が、銅の断面積をどれだけ減らすか
幅100nm、深さ200nmの溝に、バリア膜を両側と底に、厚さ5nmずつ付けたとします(仮の値です)。銅が入る部分は、幅が 100 − 5 × 2 = 90nm、高さが 200 − 5 = 195nm です。
銅の断面積 = 90 × 195 = 17,550 nm² (溝全体は 100 × 200 = 20,000 nm²)
17,550 ÷ 20,000 = 0.8775 なので、銅の断面積は、約88%に減ります。抵抗は断面積に反比例するため、1 ÷ 0.8775 ≒ 1.14倍、つまり約14%増えます(バリア膜の抵抗は無視した目安です)。配線が細いほど、この影響は大きくなります。
⑤ ビアも一緒に埋めるデュアルダマシンと、めっきの工夫
大事なポイント:上下の配線をつなぐ縦の穴(ビア)と配線の溝を、1回の銅めっきで同時に埋める方法が、デュアルダマシンです。
多層配線では、上の層と下の層の配線を、縦につなぐ必要があります。この縦の穴をビアといいます。ビアも、銅で埋めます。資料によれば、デュアルダマシンは、溝とその下のビアを、1回の銅の付け方で一度に埋める方法です。工程が少なく済みます。
ここに、難しさがあります。細くて深いビアの奥では、銅イオンがゆっくり届くため、めっきが遅くなります。入口が先にふさがると、中に空洞(ボイド)が残ります。資料にも、このような埋め込みで、内部にボイドができることが書かれています。
これを避けるため、めっき液に添加剤を加えて、底から先に銅を付ける(ボトムアップ、資料では「超コンフォーマル」な埋め込み)工夫が使われます。細い溝やビアを、すき間なく埋めることが、銅配線の大きな課題です。ボイドの不良は、第5講で学びます。
▶ 2級でくわしく:めっきの添加剤が、底から先に銅を付けるしくみ。
確認クイズ:溝と、その下のビアを、1回の銅めっきで同時に埋める方法を、何といいますか?
答え:デュアルダマシンです。
安全のひとこと:めっき液や研磨液などの薬品は、種類によって危険なものがあります。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。
この講のまとめ
アルミは金属を付けて削る方法で形にしますが、銅は、削りにくいため、溝に埋めて、余りを研磨で除くダマシン法でつくります。
銅は、抵抗が低く、断線にも強いため、細かい配線に向きますが、バリア膜で包まないと、周りに広がります。
溝と下のビアを同時に埋めるデュアルダマシンでは、すき間なく埋めることが課題です。
次の講では、配線と配線のあいだの絶縁膜と、多層配線で電気信号が遅くなる理由(RC遅延)、low-k材料を学びます。
ことばのおさらい
- 抵抗:電気の通りにくさです。
- ダマシン法:絶縁膜に溝をほり、銅を埋めて、余りを研磨で除く方法です。
- バリア膜:銅が周りへ広がるのを防ぐ膜です。
- シード層:電気めっきの土台になる、薄い銅の膜です。
- 電気めっき:液に浸して電気を流し、表面に金属を付ける方法です。
- ビア:上下の配線をつなぐ、縦の穴(と、そこに埋めた金属)です。
- デュアルダマシン:溝とビアを、1回の銅の付け方で同時に埋める方法です。
- ボイド:埋め込みのときにできる空洞です。
よくある誤解
Q. 銅は、アルミよりずっと抵抗が低いので、配線の抵抗は大きく下がりますか?
いいえ。バリア膜が断面を占めるため、実際の改善は「控えめ」と資料に書かれています。
Q. バリア膜は、厚いほど安全ですか?
いいえ。厚いと、配線全体の抵抗が高くなります。銅を止められる範囲で薄くします。
参考にした公式情報
- Wikipedia「Copper interconnect」(銅への移行、ダマシン法、バリア膜、デュアルダマシン、ボイド、めっきの工夫、導入の時期)
- Wikipedia「Interconnect (integrated circuits)」(アルミ配線の特徴とつくり方、合金、銅への移行の時期)
- Wikipedia「Chemical-mechanical polishing」(銅配線とCMPの関係)
銅とアルミの抵抗率(約1.7、約2.7µΩ·cm)、抵抗の式、バリア膜5nmなどの数値、シード層の説明、ダマシンの名前の由来は、一般的な知識にもとづく目安です(仮の値を含みます)。図は、記事用に描いた簡易の図です。
