今回のテーマは、
「付けた膜が、狙いどおりかを、どうやって確かめるのか」
答え:膜を壊さずに、光で厚さを測り、電気で通りにくさ(シート抵抗)を測ります。ウェハの数か所を測って、均一さや付き回りも、数字で確かめます。
この記事でわかること
- ① 何を測るのか
- ② 光で厚さを測る(エリプソメトリ)
- ③ 電気で測る(シート抵抗)
- ④ 均一さと付き回りを数字にする
- ⑤ 膜の応力と、5講のまとめ(方法の使い分け)
※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。
① 膜は、何を測って確かめるのか
大事なポイント:膜は、付けただけでは終わりません。厚さ、均一さ、付き回り、電気の性質、応力を測って、狙いに合うかを確かめます。
第1講で、膜に求められる5つの条件(厚さ・均一さ・付き回り・純度・温度)を学びました。このうち、付けたあとで確かめられる項目を、測り方といっしょに、整理します。
- 厚さ:狙いの厚さか。光で測るのが一般的です(第2節)。
- 電気の性質:配線の膜なら、電気の通りにくさ(シート抵抗)を測ります(第3節)。
- 均一さ・付き回り:ウェハの何か所かを測って、数字で比べます(第4節)。
- 応力:膜がもつ力で、割れやすさや、ウェハの反りが決まります(第5節)。
測り方には、膜を壊さずに測る方法と、ウェハを割って断面を見る方法があります。工場の生産では、測ったウェハを、そのあとの工程にも回すので、壊さずに測れる方法が、よく使われます。ゲート絶縁膜の厚さの管理には、光を使うエリプソメトリや反射率の測定が使われている、と説明されています。断面を電子顕微鏡で見る方法もありますが、くわしくは2級で扱います。 ▶ 2級でくわしく
確認クイズ:膜の測り方で、ウェハを壊さない方法の利点は何でしょう?
答え:測ったウェハを、そのまま次の工程へ回せることです。
② 光で厚さを測る(エリプソメトリ)
大事なポイント:エリプソメトリは、光が膜で反射したときの変化から、厚さを求める方法です。壊さず、速く測れます。
ふつうの光は、いろいろな向きに振動しています。振動の向きをそろえた光を、偏光といいます。エリプソメトリは、この偏光を膜に当てて、反射したあとの偏光の変化を調べる方法です。
- 偏光を、ウェハに斜めに当てます。
- 反射してきた光の、偏光の状態の変化を測ります。(振幅の比Ψ(プサイ)と、位相のずれΔ(デルタ)という2つの値で表します)
- 膜の層の構成(何層で、何の材料か)を仮定して、測った値に合うように計算し、厚さを求めます。
この方法は、膜の厚さのほか、屈折率(光が膜の中で曲がる度合い。材料ごとに決まった値)も求められます。屈折率は、材料の種類や、膜の質を知る手がかりになります。
特徴は、次のとおりです。
- 壊さず、触れずに測れます(非破壊・非接触)。
- 真空の装置は、いりません。
- 1か所を測る時間は、1秒未満とされています。
- 測れる厚さは、0.1nm程度から、数μmまでです。
確認クイズ:エリプソメトリは、何を膜に当てて、厚さを測る方法でしょう?
答え:偏光(振動の向きをそろえた光)です。
くわしく見る:ウェハ1枚を測る時間(目安)
1か所を測るのに、1秒かかるとします(資料では、1秒未満とされるので、これは上限の目安です)。ウェハの49か所を測るなら、
1秒 × 49か所 = 49秒
かかるとして、実際には、それより短い時間で済みます。厚さを測る場所を、増やしやすいのが、この方法の利点です。
③ 電気で測る(シート抵抗と四探針法)
大事なポイント:金属などの膜の厚さや質は、電気の通りにくさ(シート抵抗)でも確かめられます。膜が薄いほど、シート抵抗は大きくなります。
薄い膜の電気の通りにくさを表すのに、シート抵抗を使います。正方形の膜の、向かい合う2辺のあいだの抵抗のことです。単位は、Ω/sq(オーム・パー・スクエア)と書きます。sq は square(正方形)の略です。
おもしろい性質があり、正方形なら、大きさに関係なく、抵抗が同じになります。たとえば、10Ω/sqの膜は、1cm角でも1m角でも、10Ωです。細長い膜は、正方形の個数で数えます。たとえば、21Ω/sqの膜で、縦横が3:1の細長い板なら、正方形が3個直列につながったと考えて、21 × 3 = 63Ωです。
膜の材料の電気の通りにくさ(抵抗率ρ)が決まっていれば、シート抵抗は、
シート抵抗 = ρ ÷ 厚さ t
と表せます。つまり、膜が薄くなるほど、シート抵抗が上がります。逆に、シート抵抗を測れば、厚さを求めることもできます。
測るときは、四探針法を使います。4本の針を膜に当て、外側の2本に電流を流し、内側の2本で電圧を測ります。電圧を測る針には、ほとんど電流が流れないため、針と膜の接触の抵抗が、結果に混ざりません。
確認クイズ:シート抵抗が10Ω/sqの膜を、正方形2個ぶんの細長い形にすると、抵抗はいくつでしょう?
答え:20Ωです(正方形2個が直列、10 × 2 = 20)。
くわしく見る:膜の厚さを、シート抵抗から求める(仮の数字)
ある金属膜の抵抗率を、ρ = 2×10−5 Ω·cm とします(仮の数字です)。厚さ100nm = 10−5 cm のとき、
シート抵抗 = 2×10−5 ÷ 10−5 = 2 Ω/sq
です。厚さが半分の50nmなら、4Ω/sqで、2倍になります。逆に、5Ω/sqと測れたときの厚さは、
t = ρ ÷ シート抵抗 = 2×10−5 ÷ 5 = 4×10−6 cm = 40 nm
です(1nm = 10−7 cm)。ただし、薄い膜では、抵抗率が、厚い材料の値と変わることがあります。実際の管理には、膜ごとの校正が必要です。
④ 均一さと付き回りを、数字にする
大事なポイント:均一さは、ウェハの複数の点の厚さのばらつきで表します。付き回りは、溝の側面と上面の厚さの比で表します。
均一さは、ウェハの何か所かを測って、そのばらつきを割合で表します。計算の一例は、次のとおりです。
- 5か所を測ります(たとえば、98、100、101、99、102 nm)。
- 平均を出します。(98+100+101+99+102)÷ 5 = 500 ÷ 5 = 100 nm。
- 最大と最小の差を、平均の2倍で割ります。(102 − 98)÷(2 × 100)= 4 ÷ 200 = 0.02。つまり、±2%です。
割合の数え方は、会社や装置で、少しずつ違います。大切なのは、ばらつきを、数字で表すことです。
付き回り(ステップカバレッジ)は、溝や段差の側面や底に、どれくらい付いたかを表します。一般には、側面(または底)の厚さを、上面の厚さで割り、割合にします。たとえば、上面が100nm、側面が40nmなら、40÷100 = 40%です。100%に近いほど、形に沿って付いています。第2講の蒸着では低く、第3講のCVD、第4講のALDでは、高くなりやすい傾向があります。
確認クイズ:上面に100nm、溝の側面に80nm付いたとき、付き回りは何%でしょう?
答え:80%です(80 ÷ 100)。
くわしく見る:付き回りを比べる(仮の数字)
同じ深さの溝で、方法Aは、上面100nm・側面10nm、方法Bは、上面100nm・側面90nmだったとします(仮の数字です)。
方法A:10 ÷ 100 = 10% 方法B:90 ÷ 100 = 90%
Bのほうが、形に沿って付いています。溝がもっと深く細くなると、Aのような方法では、側面や底に、ほとんど付かなくなります。
⑤ 膜の力(応力)と、5講のまとめ:方法の使い分け
大事なポイント:膜には、引っぱる力や押す力(応力)がかかり、強いと割れたり、ウェハが反ったりします。方法は、目的に合わせて使い分けます。
応力とは、膜の中にたまった、縮もうとする力や広がろうとする力のことです。縮もうとする力(引張応力)が強い膜は、ひびが入りやすくなります。第3講で見たとおり、LPCVDの窒化膜は、引っぱる向きの応力が強く、200nmより厚くすると、ひびが入ることがあります。
膜の応力で、ウェハ全体が、わずかに反ります。この反りの大きさから、応力を見積もる方法があります(くわしくは2級で扱います)。 ▶ 2級でくわしく
最後に、5講のまとめとして、成膜の方法の使い分けを表にします。表は、ここまでの資料にもとづいた、おおまかな目安です。
| 方法 | 付き方 | 特徴 | おもな使い道(この講座で出たもの) |
|---|---|---|---|
| 蒸着 | 一方向、陰ができる | 高真空で、熱して飛ばす | 金属の膜 |
| スパッタ | 蒸着より回りこむ | 高融点の材料もOK、密着が良い | 金属配線、銅のシード層 |
| CVD | 形に沿いやすい | LPCVDは均一、PECVDは低温 | ポリシリコン、酸化膜、窒化膜 |
| ALD | 1層ずつ、穴の奥まで均一 | とても遅い | ゲート絶縁膜(高誘電率) |
確認クイズ:LPCVDの窒化膜が、厚くなるとひびが入りやすいのは、何が強いためでしょう?
答え:引っぱる向きの応力(引張応力)が強いためです。
この講のまとめ
膜は付けて終わりではなく、厚さ・電気の性質・均一さ・付き回り・応力を、壊さずに測れる方法で、数字で確かめます。
厚さは、光のエリプソメトリで測り、金属膜は、四探針法のシート抵抗(ρ ÷ 厚さ)でも確かめられます。
成膜は、PVD・CVD・ALDの特徴を比べ、付き方、速さ、温度の目的に合わせて、方法を選びます。
これで、成膜コース3級は終わりです。2級では、膜の質や、装置の条件、応力の測り方などを、もう一歩くわしく学びます。
ことばのおさらい
- 偏光:振動の向きをそろえた光です。
- 屈折率:光が、膜の中で曲がる度合いです。材料ごとに決まった値があります。
- シート抵抗:正方形の膜の、向かい合う辺のあいだの抵抗です。単位はΩ/sqです。
- 四探針法:4本の針で、電流を流す針と電圧を測る針を分けて測る方法です。
- ステップカバレッジ(付き回り):溝や段差の側面などに、膜がどれくらい付いたかを表す割合です。
- 応力:膜の中にたまった、縮もうとする力や、広がろうとする力です。
よくある誤解
Q. 膜の厚さは、断面を切って見ないと、わからないのですか?
いいえ。エリプソメトリなど、壊さずに光で測る方法が、よく使われます。
Q. シート抵抗は、膜の大きさで変わりますか?
いいえ。正方形なら、大きさに関係なく、同じ値です。膜の厚さが薄くなると、大きくなります。
参考にした公式情報
- Wikipedia「Ellipsometry」(エリプソメトリのしくみ、測れる厚さの範囲、1か所1秒未満、非破壊)
- Wikipedia「Sheet resistance」(シート抵抗の定義、ρ÷厚さ、単位、四探針法、10Ω/sqと3×1の例)
- Wikipedia「Four-terminal sensing」(電流と電圧の針を分けて、接触の抵抗を除くこと)
- Wikipedia「Semiconductor device fabrication」(エリプソメトリや反射率によるゲート絶縁膜の厚さの管理)
- Wikipedia「Chemical vapor deposition」(窒化膜の引張応力と、ひび)
- Wikipedia「Sputter deposition」(スパッタの特徴)
- Wikipedia「Atomic layer deposition」(ALDの特徴)
均一さの計算式(最大と最小の差÷(2×平均))、付き回りの割合の定義、膜の抵抗率の数字(2×10⁻⁵ Ω·cm)、応力とウェハの反りの向き、断面を電子顕微鏡で見ること、使い分けの表の整理は、一般的な知識または仮の数字による目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。

