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SC-1洗浄(APM)のメカニズム|ゼータ電位とアンモニア・過酸化水素水でパーティクルを除去する原理【洗浄3級・第3講 補講】

SC-1洗浄(APM)のメカニズム|ゼータ電位とアンモニア・過酸化水素水でパーティクルを除去する原理【洗浄3級・第3講 補講】 半導体製造工程
SEMICON CAMPUS 無料講座洗浄コース3級 入門 ・ 第3講 補講

第3講では、SC-1とSC-2の中身と、使う順番を見ました。この補講では、RCA洗浄が生まれた経緯と、SC-1が粒子まで落とせる理由、そして今の洗浄がRCAからどう変わってきたかを、もう少し掘り下げます。

本編で出てきた言葉を、別の角度から見直すと、理解がぐっと深まります。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • RCA洗浄の名前の由来と、生まれた経緯
  • SC-1が、もともと狙っていなかった粒子にも効く理由
  • SC-1・SC-2のあとの、ウェハ表面の状態と、うすめたフッ酸の使い方
  • 今の洗浄が、RCAからどう変わってきたか

① RCA洗浄は、いつ、どこで生まれたのか

「RCA」は、アメリカの会社の名前(Radio Corporation of America)です。この会社で働いていたヴェルナー・カーン(Werner Kern)が、1965年ごろに基本の手順をつくりました。それを、同僚のD・プオティネンとともに、1970年の論文にまとめています。

根拠

アメリカ・ペンシルベニア州立大学のJ. Ruzyllo教授の解説(The Electrochemical Society Interface 2010年春号)によると、1970年の論文は、過酸化水素水(ものを酸化する薬品)をもとにした、洗浄の最初の体系的な方法でした。内容は、「酸化と錯体づくり」の二段構えで、(1)pHの高いアルカリ性の液、(2)pHの低い酸性の液、の順に処理するものです。1965年ごろに開発されたという点は、百科事典Wikipediaの「RCA clean」の項目によります。

「酸化」とは、物質を酸素と結びつけて、性質を変えることです。「錯体(さくたい)」は、第3講で見たとおり、金属が液にとけやすい形になったものです。つまり、この二段構えは、「汚れを変えて、液にとかして落とす」考え方でした。

もともとは、有機物の膜と金属を落とすためのものでした。ところが、最初のアルカリ性の液(SC-1)が、粒子を落とすのにも非常に効果的だとわかり、いまも洗浄の土台になっています。Ruzyllo教授は、SC-1について「いまも、あらゆるシリコン洗浄の手順の要石である」という趣旨で述べています。

数字で考えてみよう

論文が出たのは1970年です。2026年から数えると、2026 − 1970 = 56年。半世紀以上たっても、基本の考え方が使われつづけています。

確認クイズ:RCA洗浄の「RCA」は、何の略ですか?

答え:アメリカの会社の名前、Radio Corporation of Americaです。

② SC-1は、なぜ粒子を落とせるのか

粒子(パーティクル)は、ウェハの表面に、くっついています。落とすには、「くっつく力に勝つ」か、「くっつきにくくする」必要があります。SC-1については、後者の説明がよく知られています。

そのカギになる言葉が、ゼータ電位(ぜーたでんい)です。液の中で、物の表面がもつ電気の偏り(帯電)の度合いのことです。そして、同じ種類の電気をもつ物どうしは、反発し合います。

なぜ、SC-1は粒子をはがれやすくするのか?

Wikipediaの「RCA clean」の項目によると、SC-1は、ウェハの表面と、粒子の表面の、ゼータ電位を変えて、おたがいに反発させるため、水にとけない粒子でも、取りのぞけるとされています。反発し合えば、いったんはがれた粒子が、また、くっつきにくくなります。

さらに、SC-1の中の過酸化水素水は、ウェハの表面に、約1ナノメートルの、うすい酸化膜をつくります。アンモニア水が、この膜と表面を少しずつ溶かすので、膜と一緒に、粒子もはがれていく、という見方もできます。(この点は、解説ごとに説明の仕方が分かれるため、ここでは、一つの見方として紹介しています)

数字で考えてみよう

1ミリメートルは、1,000,000ナノメートルです。だから、1ナノメートルは、0.000001ミリメートル。酸化膜の厚さ「約1ナノメートル」は、ほとんど原子の層を重ねた程度の、うすさです。

確認クイズ:「ゼータ電位」とは、何の度合いですか?

答え:液の中で、物の表面がもつ電気の偏り(帯電)の度合いです。同じ種類の電気をもつ物どうしは反発し合います。

SC-1の液(アルカリ性・70〜80℃)ウェハ(キャリアに立てて、まとめて沈める)ヒーター(液を70〜80℃に保つ)新しい液循環・ろ過
図1 SC-1槽の模式図(仕組みを説明するための、編集部の自作の図です。実際の装置の形とは異なります)
実物を見てみよう(外部サイト・画像あり)

ここで見たような、ウェハを液にまとめて沈めて洗う装置(バッチ式の洗浄装置)の実物は、装置メーカーの公式ページで見られます。

SCREEN SPE Tech「Wet Station WS-620C / WS-820C / WS-820L」(英語)

③ SC-1・SC-2のあとの、ウェハの表面

Wikipediaの「RCA clean」の項目によると、SC-1のあとには、鉄などの金属が、少し残ります。それを、SC-2で落とします。第3講で見た、「順番に意味がある」理由です。SC-2のあとの表面には、うすい保護の膜が残り、汚れから表面を守ります。むき出しのシリコンは、とても反応しやすく、すぐに汚れてしまうからです。

その、うすい酸化膜を、あえて取りたいときに使うのが、うすめたフッ酸です。同じ項目によると、フッ酸と水を1:50、または1:100に混ぜた液を、25℃で約15秒、使います。うすい酸化膜と、一部のイオンの汚れを落とすことができます。

なぜ、フッ酸のあとは、注意が必要なのか?

むき出しになったシリコンは、とても汚れやすいからです。非常に純度の高い薬品と、きれいな容器を使わないと、せっかく落とした表面に、また、汚れがつく(再汚染)おそれがあります。第2講で見た、「自然酸化膜は、すぐにまたできる」ことの裏返しです。

数字で考えてみよう

フッ酸と水を1:100で混ぜると、フッ酸の割合は、1 ÷ 101 ≒ 約1%です。1:50なら、1 ÷ 51 ≒ 約2%でした。さらに、フッ酸の処理は約15秒。SC-1の約10分(600秒)と比べると、15 ÷ 600 = 40分の1の、短い時間です。

確認クイズ:SC-1のあとに、鉄などの金属が残るのは、なぜ、問題ですか?

答え:金属は、シリコンの中で電気の流れ方を変え、トランジスタの特性をずらすからです。そのため、SC-2で落とします。

④ いまの洗浄は、RCAからどう変わったか

Ruzyllo教授の解説(2010年)によると、洗浄は、先端の製造で、全工程の、少なくとも3分の1を占めると考えられています。(正確な数字は、公開されていないため、推定です)第1講で見た、0.18マイクロメートル世代の、約5分の1(400工程のうち約80工程)より、さらに割合が増えているということです。

また、同じ解説によると、いまの洗浄は、元のRCAのレシピから、それほど遠くありませんが、次のような特徴があります。

  • うすめた薬液を、広く使う(第3講のIMECの方法が、その例です)
  • 手順を、できるだけ簡単にする
  • ウェハを1枚ずつ洗う枚葉洗浄(まいようせんじょう)を重視する
  • オゾン水(オゾンをとかした水)を、広く使う

さらに、微細な構造がとてもこわれやすく、新しい材料も増えたため、液を使わないドライ洗浄の役割が大きくなる、と述べられています。例として、超臨界CO2(二酸化炭素を、圧力と温度で、液体と気体の中間の状態にしたもの)、極低温の窒素のつぶを吹きつける洗浄、低圧のフッ酸蒸気による洗浄が、挙げられています。

数字で考えてみよう

400工程の3分の1は、400 ÷ 3 ≒ 133工程です。また、同じ解説では、いま管理する粒子は、20年前より、2桁小さい(100分の1)とされています。たとえば、20年前に100ナノメートルの粒子を気にしていたなら、いまは約1ナノメートルの粒子を気にする、という意味です。金属汚れも、2桁低い量まで管理します。

確認クイズ:いまの洗浄の特徴として、述べられているものは、どれですか?(うすめた薬液、枚葉洗浄、オゾン水、濃い薬液の大量使用)

答え:うすめた薬液、枚葉洗浄、オゾン水の広い利用です。濃い薬液の大量使用は、述べられていません。

この補講のポイント

RCA洗浄は、1960年代にカーンがつくり、1970年の論文で広まった、アルカリ性のSC-1と、酸性のSC-2の二段構え。SC-1は、もともと狙っていなかった粒子にも効き、いまも土台。ただし、いまの洗浄は、うすい薬液・枚葉洗浄・オゾン水・ドライ洗浄へと変わりつつある。

次は、第4講で見た、洗いすぎの問題の、もう一歩先を見ていきます。

ことばのおさらい

RCA:アメリカの会社の名前。RCA洗浄は、ここで生まれた洗浄法です。

酸化:物質を、酸素と結びつけて、性質を変えること。

ゼータ電位:液の中で、物の表面がもつ、電気の偏りの度合い。

枚葉洗浄:ウェハを1枚ずつ洗う方式。

超臨界CO2:圧力と温度で、液体と気体の中間の状態にした、二酸化炭素。

よくある誤解

Q. RCA洗浄は、もう古くて、使われていないのですか?

いいえ。解説によると、いまの洗浄の薬液も、元のRCAのレシピから、それほど遠くありません。薬液をうすめたり、手順を簡単にしたりしながら、土台として使われています。

Q. SC-1は、金属を落とすための液ですか?

もともとは、有機物の膜と金属が主な狙いでした。ところが、粒子を落とすのにも非常に効果的だとわかり、いまは、粒子を落とす役割でも、よく知られています。

参考にした情報

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