洗浄で使う薬液は、どれも危険な物質です。第2講で見たフッ酸、第3講で見たSC-1・SC-2も、そうです。
この講では、特に注意が必要なフッ酸を中心に、なぜ危険なのか、体についたときの流れを、大学の安全資料などをもとに、入門として見ます。
この記事でわかること
- フッ酸が、特別に注意される理由
- 体についたときの、基本の流れ(洗い流す、ゲル、受診)
- 事前に、準備しておくこと
- 実際の作業で従うべきもの(SDSなど)
① フッ酸が、特別に注意される理由
洗浄で使う薬液は、どれも危険な物質です。なかでも、第2講で出てきたフッ酸は、特に注意が必要だとされています。
ワシントン大学の安全資料(フッ酸の注意書き)によると、フッ酸は、痛みがなくても、すぐに処置が必要な薬品です。皮膚についても、すぐには痛くない場合があり、あとから、深い組織が傷むことがあるからです。
また、オーストラリアの小児病院(王立小児病院)の診療ガイドは、皮膚からフッ酸が入ると、全身に低カルシウム血症(血液中のカルシウムが減ること)が起きることがあり、血液の検査や、心電図での監視が必要になる場合がある、としています。
ワシントン大学の資料は、濃いフッ酸が、体の表面の約2%以上に広がると、命にかかわることがある、と述べています。
確認クイズ:フッ酸が皮膚についたとき、痛くなくても、なぜ、すぐ処置が必要ですか?
答え:すぐには痛くなくても、あとから、深い組織が傷むことがあるからです。
② 体についたときの、基本の流れ
大学の安全資料などには、次のような流れが書かれています。
- すぐに、安全シャワーで洗い流す(約5分)。服には薬液がついているので、シャワーを浴びながら、薬液を広げないように気をつけて、脱ぐ
- グルコン酸カルシウムのゲル(約2.5%のもの)を塗る。救助が来るまで、10〜15分ごとに、すり込むように、塗り直す
- 痛みがなくても、必ず、医療機関で診てもらう
ゲルを、10〜15分ごとに塗り直し、救助が来るまで1時間続けたとすると、60 ÷ 15 = 4回、60 ÷ 10 = 6回で、4〜6回です。
安全シャワーで約5分は、5 × 60 = 300秒。長く感じても、洗い流しつづけることが大切です。
確認クイズ:フッ酸が体についたとき、最初にすることは何ですか?
答え:すぐに、安全シャワーで、約5分、洗い流すことです。
③ 準備しておくこと
資料では、フッ酸を使う場所のそばに、グルコン酸カルシウムのゲルを置いておくこと、そして、ゲルには使用期限があるので、期限に気をつけることが、勧められています。万が一のときに、すぐ使えるかどうかが、結果を分けるからです。
第2講で、うすめたフッ酸(水で約1:50)を見ました。割合は、1 ÷ 51 ≒ 約2%です。うすくても、フッ酸であることは変わりません。この講座では、「うすい液なら安全」とは、教えません。扱いは、必ず、職場の決まりに従います。
フッ酸の危険性と、ばく露したときの対応は、ワシントン大学の安全資料(PDF)に、まとめられています。
確認クイズ:フッ酸を使う場所のそばに、置いておくとよいものは?
答え:グルコン酸カルシウムのゲルです(使用期限にも気をつけます)。
④ ほかの薬液でも、気をつけること
フッ酸だけではありません。RCA洗浄のSC-1とSC-2は、どちらも、70〜80℃の高温で使います(第3講)。高温の液は、液そのものの危険に加えて、やけどの危険があります。また、第4講で見たとおり、フッ酸は、石英ではなく、テフロンの容器に入れます。容器の材料を、まちがえないことも、安全の一部です。
ここで書いたのは、あくまで、入門の知識です。実際の作業では、職場の決まり・安全データシート(SDS)・指導者の指示に、必ず従ってください。この記事は、医療の助言ではありません。
確認クイズ:実際に薬液を扱うとき、何に従いますか?
答え:職場の決まり、安全データシート(SDS)、指導者の指示に、従います。
フッ酸は、痛くなくても、すぐに処置が必要。体についたら、安全シャワーで約5分洗い流し、グルコン酸カルシウムのゲルを塗り、必ず受診する。ゲルは使用期限に注意。実際の作業は、職場の決まり、SDS、指導者の指示に従う。
これで、洗浄3級の本編は、ひと通りです。確認テストで、理解をたしかめてみましょう。
ことばのおさらい
フッ酸:自然酸化膜を落とすのに使う薬液。体につくと、痛くなくても、深い組織が傷むことがあります。
グルコン酸カルシウムゲル:フッ酸が皮膚についたときの応急処置に使うゲルです。
低カルシウム血症:血液中のカルシウムが減ること。フッ酸が皮膚から入ると起きることがあります。
SDS:安全データシート。薬品の危険性や、応急処置が書かれた資料です。
よくある誤解
Q. 痛くなければ、受診しなくてもよいですか?
いいえ。資料では、痛みがなくても、必ず、医療機関で診てもらうこととされています。
Q. うすめたフッ酸なら、安全ですか?
いいえ。この講座では、そう教えません。うすくても、扱いは、職場の決まりに従います。

