第1講で、洗浄の基本は「性質のちがう液を順に使うこと」だと見ました。この記事では、その中身を見ます。
使う液は2つ。「SC-1」と「SC-2」です。そして、順番を入れかえてはいけない理由が、ちゃんとあります。
この記事でわかること
- SC-1とSC-2の、混ぜ方と使い方(比率・温度・時間)
- それぞれが落とす汚れ
- なぜ、SC-1のあとにSC-2を使うのか
① SC-1:アルカリ性の液で、有機物と粒子を落とす
SC-1は、アンモニア水・過酸化水素水・純水を混ぜた液です。KTHの講義資料によると、混ぜる比率は、アンモニア水:過酸化水素水:純水=1:1:5〜1:2:7、温度は70〜80℃、時間は約10分です。液の性質はアルカリ性(pH7より大きい)です。
KTH(スウェーデン王立工科大学)の講義「Wafer Clean and Wet Processing」(Mikael Östling、2012年)。SC-1は、有機物の膜を酸化し、金属を錯体にし、自然酸化膜をゆっくり溶かして酸化し直し、粒子をはがれやすくする、と整理されています。
SC-1の働きは、4つあります。
- 有機物の膜を酸化する(過酸化水素水の力)
- 一部の金属を、液にとけやすい形(錯体)にする(コバルト、ニッケル、銅、亜鉛など)
- 自然酸化膜を、ゆっくり溶かして、酸化し直す
- 粒子を、ウェハからはがれやすくする
比率1:1:5は、合計 1 + 1 + 5 = 7 です。700ミリリットルつくるなら、アンモニア水100、過酸化水素水100、純水500ミリリットルです。
純水の割合は 5 ÷ 7 ≒ 71%。濃い薬品を、かなりうすめて使っています。(比率1:2:7なら、合計10で、純水は70%です)
確認クイズ:SC-1の液は、アルカリ性ですか、酸性ですか?
答え:アルカリ性です(pH7より大きい)。
② SC-2:酸性の液で、金属を落とす
SC-2は、塩酸・過酸化水素水・純水を混ぜた液です。KTHの講義資料では、比率は塩酸:過酸化水素水:純水=1:1:6〜1:2:8、温度は70〜80℃、時間は約10分で、酸性(pH7より小さい)です。アルミニウム、鉄、マグネシウムなどのイオンや、金などの金属を落とします。
KTHの資料によると、SC-1の液の中では、アルミニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオンなどが、アンモニアにとけない水酸化物をつくってしまいます。つまり、SC-1だけでは、これらの金属が落ちきらず、残る(または、くっつく)ことがあります。そこで、酸性のSC-2で、これらを溶かして、仕上げに落とすのです。
1:1:6なら、合計は 1 + 1 + 6 = 8。純水の割合は 6 ÷ 8 = 75%です。
SC-1もSC-2も、約10分かけるので、2つの液だけで 10 + 10 = 約20分。これに、すすぎと乾燥の時間が加わります。洗浄を何十回もくり返す理由が、時間の面からもわかります。
確認クイズ:SC-1の液の中で、金属が、とけない水酸化物になってしまうのは、どんな金属ですか?
答え:アルミニウム、鉄、マグネシウムのイオンなどです。
③ 粒子には、超音波も使う
RCA洗浄に超音波を組み合わせると、粒子を落とす効果が高まります。KTHの資料には、超音波の周波数は、20〜50キロヘルツ、または約1メガヘルツと書かれています。音の波が、粒子のまわりに液をしみこませ、粒子がウェハから離れて、液の中に浮かぶ、という説明です。
1メガヘルツは、1,000キロヘルツです。20〜50キロヘルツと比べると、約1,000 ÷ 50 = 20倍〜 1,000 ÷ 20 = 50倍も高い周波数です。
④ RCA洗浄だけでは足りないとき
- 有機物がたくさんあるとき:硫酸と過酸化水素水を混ぜた液(ピラニア液)を使います。KTHの資料では、硫酸:過酸化水素水=2:1〜4:1で、フォトレジストを二酸化炭素と水に変える、と説明されています。
- 自然酸化膜を落とすとき:うすめたフッ酸(第2講で見たとおり、約1:50)を使います。
ベルギーの研究機関IMECの「より薄い液を使う洗浄法」も、KTHの資料で紹介されています。たとえば、アンモニア水:過酸化水素水:純水が0.05:1:5で、アンモニアの量を、RCAの約20分の1にする考え方です。薬品を減らしながら、粒子・有機物・金属を落とす工夫です。
SC-1の標準は、アンモニア水が「1」。IMECの方法は「0.05」です。1 ÷ 0.05 = 20なので、アンモニア水の量が、約20分の1になっています。
RCA洗浄は、アルカリ性のSC-1(有機物・粒子)、酸性のSC-2(金属)の順。どちらも70〜80℃で約10分。SC-1で残る金属を、SC-2で落とすので、順番に意味がある。
確認クイズ:SC-1とSC-2の温度と時間は、それぞれ、どれくらいですか?
答え:どちらも、70〜80℃で、約10分です。
次の記事では、洗いすぎの問題と、液を使わない「ドライ洗浄」を見ていきます。
ことばのおさらい
- SC-1:アンモニア水・過酸化水素水・純水の、アルカリ性の洗浄液です。
- SC-2:塩酸・過酸化水素水・純水の、酸性の洗浄液です。
- 錯体(さくたい):金属が、液にとけやすい形になったものです。
- 超音波洗浄:音の波の力で、粒子を落としやすくする方法です。
よくある誤解
Q. SC-1だけで、全部の汚れが落ちますか?
いいえ。SC-1の液の中では、一部の金属が、とけない水酸化物になります。だから、酸性のSC-2も使います。
Q. SC-1とSC-2は、どちらを先にしてもいいですか?
基本の順番は、SC-1が先、SC-2があとです。SC-1で残る金属を、SC-2で落とすためです。
RCA洗浄とは? SC-1とSC-2の違いを比べる
RCA洗浄は、性質のちがう2つの液を順に使って、ウェハの汚れを落とす洗浄の基本です。この記事で紹介したKTHの講義資料にもとづき、「SC-1」「SC-2」(「sc1 sc2」「sc-1-2」とも書かれます)の違いを表にまとめます。
| 比べるもの | SC-1 | SC-2 |
|---|---|---|
| 混ぜる液 | アンモニア水・過酸化水素水・純水 | 塩酸・過酸化水素水・純水 |
| 液の性質 | アルカリ性(pH7より大きい) | 酸性(pH7より小さい) |
| 比率(資料の例) | 1:1:5〜1:2:7 | 1:1:6〜1:2:8 |
| 温度・時間 | 70〜80℃・約10分 | 70〜80℃・約10分 |
| 落とす汚れ | 有機物・粒子 | 金属 |
| 順番 | 先 | あと(SC-1で残る金属を落とす) |
なぜSC-1のあとにSC-2を使うのか
SC-1の液の中では、アルミニウム、鉄、マグネシウムなどのイオンが、アンモニアにとけない水酸化物をつくることがあります。そのため、SC-1だけでは金属が残る場合があり、酸性のSC-2で仕上げに落とします。順番に意味があるのは、このためです。
よくある質問:RCA洗浄・SC-1・SC-2
Q. RCA洗浄とは何ですか?
アルカリ性のSC-1と、酸性のSC-2という2つの液を、この順に使って、有機物・粒子・金属などの汚れを落とす洗浄方法です。それぞれ約10分、純水ですすぎながら進めます。
Q. SC-1とSC-2の違いは何ですか?
SC-1はアンモニア水・過酸化水素水・純水を混ぜたアルカリ性の液で、有機物と粒子を落とします。SC-2は塩酸・過酸化水素水・純水を混ぜた酸性の液で、金属を落とします。
Q. SC-2は何を落とす液ですか?
アルミニウム、鉄、マグネシウムなどのイオンや、金などの金属です。SC-1で残りやすい金属を、仕上げに落とします。

