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半導体のGAA・ナノシートとは?2nm世代で変わったトランジスタの形

FinFETとGAAで、ゲートが通り道を囲む範囲の違いを示した概念図 半導体製造工程
学習レベル★☆☆☆☆初級

最新のスマホのチップには、「2ナノメートル」と呼ばれるものがあります。とても小さそうですが、では、チップの中の何かが、本当に、2ナノメートルなのでしょうか。

実は、この名前は、部品の大きさではありません。2ナノメートル世代で、本当に変わったのは、トランジスタの「形」です。この記事では、前回のFinFETの次に登場した、「GAA(ガア)」と、「ナノシート」という形を、順に説明します。

ホースの水を押さえるたとえが当てはまるのは、「まわりを囲むほど、止めやすい」という考え方の部分だけです。実際のトランジスタの中で、水が流れているわけではありません。

この記事でわかること

  1. この記事の目的:2ナノメートル世代で、トランジスタの何が変わったのかを、つかむこと
  2. 前半:「2ナノメートル」という名前の意味と、FinFETの次の形が必要になった理由
  3. 後半:GAAとナノシートの仕組みと、IBM、Samsung、TSMCの動き
指先ほどのチップとコインが並べて置かれた、2ナノメートル世代のチップを連想させるイメージ
小さなチップのイメージ。2ナノメートルの実物ではありません。 EP119 記事用画像(AI生成)。生成画像を縮小し、JPEGに最適化。
図の要点

  • 最新のチップ
  • 名前は「2ナノメートル」
  • 大きさではなく、世代の名前
助手

博士、「2ナノメートル」って、部品が2ナノメートルなんですか?

博士

いや、世代の名前なんじゃ。大きさそのものではないぞ。

助手

じゃあ、何が変わったんですか?

博士

トランジスタの形じゃ。ゲートが全部を囲む形になったんじゃよ。順に見ていこう。

「2ナノメートル」は、部品の大きさではない

Tom’s Hardwareの記事では、「2ナノメートル」という数字は、チップ上の特定の部分の寸法に、結びついていないと説明されています。ほかの会社の似た世代のプロセスと比べた、消費電力や性能をもとに決められている、という説明で、記事はこの名づけ方を、おおむね、宣伝のための呼び方だと述べています。これは、IBMだけの話ではなく、業界全体の傾向です。「2ナノメートル」は、世代の名前であって、部品の大きさそのものではありません。

確認クイズ:「2ナノメートル」は、何の大きさを表しているでしょう?

答え:特定の部品の大きさではなく、世代の名前です。

FinFETでも、漏れがまた問題になる

前回の記事では、ゲートが通り道を三方向から囲む、FinFETを紹介しました。しかし、トランジスタがさらに小さくなると、どうなるでしょうか。Tom’s Hardwareの記事は、トランジスタが小さくなるほど、スイッチを切れなくする、電圧の漏れが、より大きな問題になると述べています。ゲートが、通り道を三方向から囲むFinFETでも、この問題は、避けられなくなってきました。

確認クイズ:FinFETでは、ゲートは、通り道を、何方向から囲みますか?

答え:三方向です。

ゲートで、ぐるりと全部を囲む「GAA」

そこで登場したのが、「GAA(ゲート・オール・アラウンド)」という形です。名前のとおり、ゲートが、通り道の、まわり全部を囲みます。Tom’s Hardwareの記事では、この方法が、スイッチを切れなくする、電圧の漏れを減らすと説明されています。ホースのたとえでいえば、上と左右に加えて、下からも、ぐるりと押さえる形です。GAAは、ゲートが、通り道を、ぐるりと全部、囲む形のトランジスタです。

FinFETとGAAで、ゲートが通り道を囲む範囲の違いを示した概念図
FinFETとGAAの違いを表した模式図。説明用の図です。
図の要点

  • FinFETは、三方向
  • GAAは、まわり全部
  • 漏れの逃げ道が減る
確認クイズ:GAAでは、ゲートは、通り道をどう囲みますか?

答え:まわり全部を、ぐるりと囲みます。

うすい板を重ねる「ナノシート」

GAAでは、通り道の形も、変わります。The Registerの記事によると、ナノシートの構造では、電流が、何層も重なった、シリコンの板を流れ、その板を、ゲートの材料が、完全に囲んでいます。この、うすい板が、「ナノシート」です。細長いひれの代わりに、うすい板を、何枚も重ねる、と考えると、分かりやすいでしょう。

The Registerの記事では、初期のGAAの設計では、通り道が、縦に積み重ねた、ナノシートでできていると説明されています。ナノシートは、ゲートが、まわり全部を囲める、うすい板状の通り道です。

うすい透明な板が、何枚も重ねられているナノシートのイメージ
うすい板を重ねたナノシートのイメージ。実際のトランジスタとは異なります。 EP119 記事用画像(AI生成)。生成画像を縮小し、JPEGに最適化。
図の要点

  • うすい板を重ねる
  • これが、ナノシート
  • まわりをゲートが囲む
確認クイズ:ナノシートとは、どんな形の通り道でしょう?

答え:うすい板を、何枚か重ねた形で、ゲートがまわり全部を囲みます。

IBMの試作:3枚の板を重ねた2ナノメートル世代

Tom’s Hardwareの記事(2021年)では、IBMが、ナノシートの技術を使った、2ナノメートル世代のチップを発表したと報じられています。IBMは、アメリカのアルバニーの施設で作った、300ミリメートルのウェハを公開しました。ただし、この技術は、まだ研究の段階で、製品にできるチップではない、と記事は注意をうながしています。

IBMの設計は、3枚の、水平なシリコンのナノシートを重ね、それぞれを、ゲートが完全に囲む形です。1枚のナノシートは、厚さ5ナノメートル、幅40ナノメートルで、ゲートの長さは12ナノメートルでした。IBMは、7ナノメートルの現行品と比べて、同じ電力で性能が45%上がるか、同じ性能で消費電力が75%減る、としています。指先ほどの大きさのチップに、最大500億個のトランジスタを載せられるとも説明しましたが、密度の数字までは、示されていません。

IBMの試作で、3枚のナノシートを重ね、それぞれをゲートが囲む様子を示した概念図
IBMの試作の構造を表した模式図。数字は、記事に書かれた試作の値です。
図の要点

  • 3枚の板を重ねた
  • それぞれをゲートが囲む
  • 2ナノ世代の試作
確認クイズ:IBMの試作では、ナノシートを、何枚重ねていましたか?

答え:3枚です。

Samsung:3ナノメートル世代で、GAAの生産を開始

The Registerの記事(2022年)によると、Samsungは、3ナノメートルのプロセスで、初期の生産を始めたと発表しました。Samsungは、この方式を、「MBCFET」と呼んでいます。ナノシートを使うことで、細い線状のナノワイヤを使う方式より、広い通り道がつくれて、性能と省エネに、有利だと説明しました。さらに、ナノシートの幅を変えて、電力と性能のバランスを、調整できるとしています。

同じ記事では、Samsungが、5ナノメートルの製品と比べて、消費電力を最大45%減らし、性能を23%高め、面積を16%小さくできると述べたと紹介されています。第2世代では、消費電力を最大50%減らし、性能を30%高め、面積を35%小さくする計画だとされています。ただし、記事は、初期の生産は、試験的な位置づけだったという見方も、あわせて伝えています。

確認クイズ:Samsungの方式で、ナノシートの幅を変えると、何を調整できますか?

答え:電力と性能のバランスです。

TSMC:2ナノメートル世代で、FinFETから切り替え

The Registerの記事(2022年6月)では、TSMCが、2ナノメートル世代(N2)で、FinFETをやめて、ナノシートの構造に切り替えると、発表したと紹介されています。当時の目標は、同じ電力で、速さを10〜15%上げるか、同じ速さで、消費電力を25〜30%減らすことでした。TSMCの公式ページには、N2が、2025年の第4四半期に、予定どおり、量産を始めたと書かれています。同社は、これを、最初の世代のナノシートトランジスタ技術と位置づけています。なお、The Registerの記事によると、TSMCは、3ナノメートル世代では、まだFinFETを使い続けると、述べていました。TSMCの公式ページでも、2022年に量産を始めた3ナノメートル(N3)は、FinFETの技術だと説明されています。つまり、FinFETからナノシートへの切り替えは、2ナノメートル世代で行われた、ということです。

トランジスタの形が、平ら、FinFET、ナノシートへと変わってきたことを示した概念図
トランジスタの形が、平ら、FinFET、ナノシートへ変わってきたことを表した模式図。説明用の図です。
図の要点

  • 平らな形
  • ひれ状のFinFET
  • 板を囲むナノシート
確認クイズ:TSMCは、2ナノメートル世代で、何から何へ、切り替えましたか?

答え:FinFETから、ナノシートへ、切り替えました。

工程を担当する仕事を、知る

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ことばのおさらい

  • GAA:ゲート・オール・アラウンド。ゲートが、通り道のまわり全部を囲む形です。
  • ナノシート:うすい板状の、電気の通り道です。何枚か重ねて使います。
  • FinFET:ひれ状の通り道を、ゲートで、三方向から囲む形です。
  • 世代(ノード):チップの作り方の、世代の名前です。大きさそのものではありません。

よくある誤解

Q. 2ナノメートルのチップは、部品が2ナノメートルなのですか?

いいえ。「2ナノメートル」は、世代の名前です。特定の部品の寸法を、表しているわけではありません。

Q. ナノシートは、チップ全体を、薄くする技術ですか?

いいえ。ナノシートは、トランジスタの中の、電気の通り道の形です。チップ全体の厚さとは、関係がありません。

まとめ

「2ナノメートル」は部品の大きさではなく、世代の名前で、本当に変わったのは、トランジスタの形です。
GAAは、ゲートが通り道をぐるりと全部囲む形で、通り道には、うすい板のナノシートを重ねます。
IBMが試作を発表し、Samsungが3ナノメートル世代で、TSMCが2ナノメートル世代で、この形を採用しました。

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