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半導体のFinFETとは?平らから立体になったトランジスタ

半導体のFinFETとは?平らから立体になったトランジスタ 半導体製造工程
学習レベル★☆☆☆☆初級

スマホは、年々、速くなっています。それなのに、電池は、前よりも持つようになりました。不思議だと思いませんか。

その裏には、チップの中の、トランジスタの「形」の変化があります。長いあいだ、平らだったトランジスタが、立体に変わったのです。この形を、「FinFET(フィンフェット)」といいます。この記事では、なぜ平らな形では困ったのか、立体にすると何がよくなるのかを、順に説明します。

ホースの水を押さえるたとえが当てはまるのは、「上からだけでは止めきれず、まわりを囲むと止めやすい」という考え方の部分だけです。実際のトランジスタの中で、水が流れているわけではありません。

この記事でわかること

  1. この記事の目的:FinFETが、なぜ平らなトランジスタに代わったのかを、つかむこと
  2. 前半:平らなトランジスタが、小さくなると困る理由
  3. 後半:ゲートで三方向から囲む形と、その効果、課題
明るいカフェで、スマホを楽しそうに使っている人のイメージ
スマホを使う人のイメージ。実際の人物や場面ではありません。 EP118 記事用画像(AI生成)。生成画像を縮小し、JPEGに最適化。
図の要点

  • 速くなるスマホ
  • 電池は、持つようになった
  • 裏には、トランジスタの形
助手

博士、スマホは速くなったのに、どうして電池が持つようになったんですか?

博士

理由のひとつは、トランジスタの形じゃ。平らだった形が、立体になったんじゃよ。

助手

立体にすると、何がよくなりますか?

博士

電気が漏れにくくなるんじゃ。順に、見ていこう。

トランジスタは、ずっと平らだった

トランジスタの中では、「ソース」から「ドレイン」へ、「通り道」を通って、電気が流れます。この通り道を、開けたり閉めたりするのが、「ゲート」です。IEEE Spectrumの記事では、トランジスタは、長いあいだ、二次元の、平らな構造だったと説明されています。ゲートと、そのすぐ下にある絶縁の膜が、平らな面の上に乗っている、というつくりです。平らなトランジスタでは、ゲートは、通り道の「上」にだけ、乗っています。

確認クイズ:平らなトランジスタで、ゲートは、通り道のどこにありますか?

答え:通り道の上に乗っています。

小さくなると、通り道の下から漏れる

トランジスタを小さくすると、ソースとドレインの距離も、短くなります。IEEE Spectrumの記事によると、この距離が短くなりすぎると、電気が、通り道の下の部分を通って、漏れてしまうようになりました。通り道の下は、上にあるゲートの力が、いちばん届きにくい場所です。そのため、スイッチを切ったつもりでも、電気が逃げていき、電力が無駄になります。

前々回のリーク電流の記事で説明した、切っても漏れる電気が、ここでも問題になっていました。ゲートから遠い、通り道の下の部分が、電気の逃げ道になっていたのです。

平らなトランジスタで、ゲートが通り道の上にあり、下から電気が漏れることを示した概念図
平らなトランジスタで、ゲートが届きにくい場所を表した模式図。説明用の図です。
図の要点

  • 平らな形
  • ゲートは、通り道の上だけ
  • 下から電気が漏れる
確認クイズ:平らなトランジスタで、電気が漏れやすいのは、通り道のどの部分でしょう?

答え:ゲートの力が、いちばん届きにくい、通り道の下の部分です。

立体にするという発想

この問題を、たとえ話で考えてみましょう。ホースの水を止めたいとき、上から押さえるだけでは、押さえきれずに、下から水が漏れてしまいます。しっかり止めるには、上と左右の、まわりを囲んで押さえる方が、効果があります。

トランジスタでも、同じ考え方が使われました。IEEE Spectrumの記事では、設計者たちが、電気が、ゲートの管理から外れた場所へ逃げられない、立体的な設計に、目をつけたと説明されています。通り道を、平らな面から、立体に変えて、ゲートで囲む。これが、FinFETの発想です。通り道のどこにも、ゲートの力が届かない場所を、残さない。それが、立体にする目的です。ホースのたとえで、まわりを囲むほど押さえやすくなるのと、同じ考え方です。

ホースが三方向から指でつままれ、水が止まっているイメージ
ホースを三方向から押さえるイメージ。実際のトランジスタではありません。 EP118 記事用画像(AI生成)。生成画像を縮小し、JPEGに最適化。
図の要点

  • ホースを上から押さえる
  • 下から水が漏れる
  • まわりを囲むと、止めやすい
確認クイズ:ホースのたとえで、「上と左右から囲む」ことは、トランジスタの何にあたるでしょう?

答え:ゲートで、通り道のまわりを囲むことです。

フィン(ひれ)の上に、ゲートをかぶせる

IEEE Spectrumの記事では、IntelのFinFETは、シリコンの土台から、ひれ(フィン)のように突き出した、尾根状の通り道を使う設計だと説明されています。ゲートは、この通り道に対して、垂直に走り、通り道の上に、またがるようにかぶさります。こうして、通り道のまわりに、三つのゲートができあがります。Intelは、この構造を、「Tri-Gate(トライゲート)」と名づけました。

通り道の、上と左右の三方向を、ゲートが囲むため、電気が、ゲートの管理から外れた場所へ、逃げにくくなります。FinFETは、ひれ状の通り道を、ゲートで、三方向から囲む形のトランジスタです。

平らな形と、フィンを三方向から囲む形の違いを示した概念図
平らな形と、フィンを囲む形の違いを表した模式図。説明用の図です。
図の要点

  • 平らな形は、上だけ
  • フィンの形は、三方向
  • 逃げ場をなくす
確認クイズ:Intelの立体のトランジスタで、ゲートは、通り道を、いくつの面から囲むでしょう?

答え:上と左右の、三つの面から囲みます。

22ナノメートルで、速く、省エネに

IEEE Spectrumの記事によると、この立体のトランジスタは、Intelの「Ivy Bridge」という、22ナノメートルの世代のプロセッサで使われる、と紹介されました。Intelの発表では、従来の平らな32ナノメートルのトランジスタと比べて、低い電圧のときに、37%速く動き、消費電力は、半分以下になるとされています。電圧が低いときの性能が高いため、スマホのような、電池で動く機器に向いている、と記事は述べています。

ただし、この記事は、ニューヨーク・タイムズの記事を引いて、慎重な見方があったことも紹介しています。FinFETは、速さでは有利でも、電力の管理では、別の方式のほうが有利かもしれない、という、業界の推測です。Intelは、パソコンやサーバーでは強い一方、急成長するスマホやタブレットの市場には、入りこめていませんでした。そのため、この立体のトランジスタは、Intelにとって、大きな賭けだったとされています。

確認クイズ:Intelの発表で、立体のトランジスタは、低い電圧のとき、平らなものより、何%速いとされましたか?

答え:37%です。

FinFETとTri-Gateは、何が違うのか

Semiconductor Engineeringの記事(2012年)では、FinFETとTri-Gateの違いが説明されています。ひれの上にスペーサーがある、一般的なFinFETは、通り道の「二方向」にゲートがある、二重ゲートの素子です。これに対して、Tri-Gateは、通り道の「三方向」にゲートがあるため、その名前がついています。Intelの論文では、Tri-Gateは、条件がもっとも緩やかで、製造しやすいと主張されたそうです。Tri-Gateは、FinFETの一種ですが、ゲートが三方向にある点が違います。

IEEE Spectrumの記事も、IntelのTri-Gateを、FinFETの設計として説明しています。この記事でも、Intelの方式を、FinFETの一種として扱います。

二重ゲートのFinFETとTri-Gateの違いを示した概念図
二重ゲートのFinFETと、Tri-Gateの違いを表した模式図。説明用の図です。
図の要点

  • FinFETは、二方向
  • Tri-Gateは、三方向
  • Intelは三方向の方式
確認クイズ:Tri-Gateと、二重ゲートのFinFETの違いは、何でしょう?

答え:Tri-Gateは三方向、二重ゲートのFinFETは二方向に、ゲートがあります。

課題:ひれを薄くするほど、そろえにくい

立体にしても、すべてが解決したわけではありません。Semiconductor Engineeringの記事では、IMECの研究者の指摘として、ひれが薄くなるほど、「しきい電圧」を、そろえにくくなると紹介されています。しきい電圧とは、スイッチが入りはじめる電圧です。対策として、ゲートの金属の性質を調整する方法がありますが、そのぶん、製造の工程が増えます。

その後も、FinFETは使われ続けた

FinFETは、その後、広く使われるようになりました。TSMCの公式ページには、TSMCが、2022年に、3ナノメートルのFinFET(N3)を、世界で最初に、大量生産に移したと書かれています。2020年の5ナノメートル、2018年の7ナノメートルも、FinFETでした。長いあいだ、FinFETは、最先端のチップの、標準的な形だったのです。

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ことばのおさらい

  • ゲート:電圧を加えて、電気の通り道を開け閉めする部分です。
  • 通り道(チャネル):ソースからドレインへ、電気が流れる部分です。
  • フィン:ひれのように、細く高く立てた、シリコンの通り道です。
  • FinFET:フィンを、ゲートで囲んだ、立体のトランジスタです。
  • しきい電圧:スイッチが入りはじめる電圧です。

よくある誤解

Q. FinFETは、チップそのものを、立体にすることですか?

いいえ。立体になったのは、トランジスタの、電気の通り道の部分です。チップ全体を、積み重ねる技術とは、別の話です。

Q. ゲートで囲む面が増えると、何がよくなりますか?

通り道への、ゲートの力が届きやすくなり、スイッチを切ったときの、漏れが減りやすくなります。

Q. FinFETにすれば、漏れは、完全になくなりますか?

いいえ。ゲートで囲む面が増えることで、漏れが減りやすくなる、という話です。漏れがなくなる、という話ではありません。

まとめ

平らなトランジスタは、小さくなると、ゲートから遠い、通り道の下から、電気が漏れました。
FinFETは、ひれ状の通り道を、ゲートで三方向から囲んで、電気の逃げ道を減らした、立体の形です。
Intelは、22ナノメートルで、低い電圧のとき37%速く、消費電力は半分以下になると発表しました。

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