第4講では、洗いすぎや、液が粒子をもちこむことなど、ウェット洗浄の課題を見ました。この補講では、その課題とも関わる、洗浄装置の方式を見ます。
ウェハを、まとめて洗うバッチ洗浄と、1枚ずつ洗う枚葉洗浄。そして、バッチ洗浄が、どのように進化してきたのかを、歴史の資料と、数字で見ていきます。
この記事でわかること
- バッチ洗浄と枚葉洗浄の、ちがい
- 複数槽方式から、1槽方式への進化(1994年)
- 1槽方式の、よいところ
- 枚葉洗浄が、重視される理由
① 洗い方には、2つの方式がある
洗浄の「液」や「順番」を、これまで見てきました。では、それを、どんな装置で行うのでしょうか。大きく分けて、2つの方式があります。
- バッチ洗浄:ウェハを、まとめて(かごに入れて)洗う方式
- 枚葉洗浄(まいようせんじょう):ウェハを、1枚ずつ洗う方式
どちらにも、よいところと難しいところがあり、工場では、目的に合わせて使い分けます。この補講では、バッチ洗浄の、大きな進化の一つを見てから、枚葉洗浄が重視される理由を見ます。
確認クイズ:ウェハを、1枚ずつ洗う方式は、何といいますか?
答え:枚葉洗浄(まいようせんじょう)です。
② バッチ洗浄の進化:複数槽から1槽へ
日本の半導体の歴史を伝える、半導体産業史資料館(Semiconductor History Museum of Japan)の資料によると、昔のバッチ洗浄は、複数の槽(そう)を並べる方式でした。さまざまな薬液を入れた槽を並べて、ウェハを入れたかごを、次々に浸していきます。
同じ資料によると、大日本スクリーン製造(のちのSCREENホールディングス)は、1994年に「FS-820L」という、1槽方式の洗浄装置を発売しました。1つの槽の中で、薬液と、すすぎの純水を、入れ替えながら、一連の洗浄を行う方式です。
1槽方式の、よいところは、資料によると、2つです。
- 薬液を替えるあいだ、ウェハが大気にさらされないので、洗浄の水準を、高くできる
- 装置が、大幅にコンパクトになり、省エネにもなる
第3講の図1の流れは、SC-1 → すすぎ → SC-2 → すすぎ → 乾燥、でした。複数槽方式なら、槽は4つ。ウェハを、槽から槽へ、そして乾燥へ移す回数は、3 + 1 = 4回です。移すたびに、ウェハは、大気にふれます。1槽方式なら、液を入れ替えるだけなので、槽から出す回数は、洗浄の途中では0回です。
その後も、進化は続きます。同じ資料によると、1995年には、洗浄のあとの低圧での乾燥ができるようになりました。そして2001年には、300ミリメートルのウェハ用の1槽方式(FC-3000)が登場し、300ミリメートルのバッチ洗浄の、中心の装置になりました。液を替えるときの、すすぎを、純水をシャワー状にかける方法に替えたことで、処理できる量(スループット)も、大きく上がった、とされています。
確認クイズ:1994年に登場した、1槽方式の洗浄装置は、何がよかったのですか?
答え:薬液を替えるあいだ、ウェハが大気にさらされず、洗浄の水準が上がったこと。装置がコンパクトで、省エネになったこと。
③ 枚葉洗浄が重視される理由
第4講で、ウェット洗浄の課題として、「洗いすぎ」や「液が粒子をもちこむこと」を見ました。この課題と、枚葉洗浄は、深く関わっています。
第3講の補講で紹介した、ペンシルベニア州立大学のRuzyllo教授の解説(2010年)には、いまの洗浄の特徴として、うすめた液を広く使うこと、手順を簡単にすること、枚葉洗浄を重視すること、オゾン水を広く使うことが、並べられています。
1枚ずつ洗う方式では、一般に、そのウェハの上で、液と時間を、細かく調整しやすい、といわれます。バッチ洗浄は、一度に多くのウェハを、まとめて洗えるのが強みです。つまり、量がほしいときはバッチ、1枚ごとの細かい調整がほしいときは枚葉、という考え方です。
線が細くなり、構造がこわれやすくなると、洗いすぎや、液の持ちこみが、ますます、大きな問題になります。1枚ごとに、液の量や時間を調整しやすい枚葉洗浄は、その問題に向いている、という考え方です。(この点は、一般的な説明です)
バッチ洗浄の装置と、枚葉洗浄の装置は、SCREEN SPE Techの公式ページで、それぞれ見られます。バッチ式は「Wet Station WS-620C / WS-820C / WS-820L」(150〜200ミリメートル)、枚葉式は「SU-2000」(150〜200ミリメートル)です。
確認クイズ:「量がほしいとき」と「1枚ごとの細かい調整がほしいとき」は、それぞれ、どちらの方式が向いていますか?
答え:量がほしいときはバッチ洗浄、1枚ごとの細かい調整がほしいときは枚葉洗浄です(一般的な考え方)。
洗浄装置には、まとめて洗うバッチ式と、1枚ずつ洗う枚葉式がある。バッチ式は、複数槽から、液を入れ替える1槽方式(1994年)へ進化し、大気にふれず、コンパクトで省エネになった。いまの洗浄では、枚葉洗浄が重視されている。
次は、第5講の「測り方」から、金属の汚れを測るTXRFの仕組みを、もう少し詳しく見ていきます。
ことばのおさらい
バッチ洗浄:ウェハを、かごに入れて、まとめて洗う方式です。
枚葉洗浄:ウェハを、1枚ずつ洗う方式です。
槽(そう):液を入れておく、大きな容器です。
1槽方式:1つの槽の中で、薬液と純水を入れ替えながら、一連の洗浄を行う方式です。
スループット:一定の時間に、処理できる量です。
よくある誤解
Q. バッチ洗浄は、もう古い方式ですか?
いいえ。SCREENの製品ページには、現在もバッチ式の装置が並んでいます。まとめて洗えるので、量がほしい場面で使われます。
Q. 1槽方式は、1回の洗浄で、薬液を1種類しか使えないのですか?
いいえ。1槽方式は、1つの槽の中で、薬液と純水を入れ替えながら、一連の洗浄を行います。
参考にした情報
- Semiconductor History Museum of Japan「1994 One-bath wafer cleaning system」(複数槽から1槽方式へ。1994年のFS-820L、1995年の低圧乾燥、2001年のFC-3000)
- SCREEN SPE Tech 製品一覧(バッチ式のWS-620C / WS-820C / WS-820L、FC-821L、枚葉式のSU-2000)
- J. Ruzyllo「Semiconductor Cleaning Technology: Forty Years in the Making」, The Electrochemical Society Interface, 2010年春号(いまの洗浄の特徴)

