洗ったあと、「ちゃんときれいになったか」は、目では見えません。汚れが、目に見えないほど小さいからです。
そこで工場では、専用の装置で、汚れを数えたり、量ったりします。この記事では、その装置のしくみを、身近なたとえで説明します。むずかしい言葉は、そのつど、かんたんに言いかえます。
この記事でわかること
- 粒子は、光を当てて数える
- 金属は、X線や、とかした液で量る
- 有機物は、出てくるガスを調べる
① パーティクル測定(表面欠陥検査):レーザー光を当てて粒子を数える仕組み
ウェハの上の粒子を調べる装置の代表は、光学式パーティクルカウンタです。クリーンルーム分野の専門誌「Cleanroom Technology」に載った分析会社の記事(2026年5月)も、これを「定番の方法」としています。
暗い部屋で、懐中電灯の光を横から当てると、空気中のほこりが、きらきら光って見えますよね。あれと同じです。ウェハにレーザー光を当てて、粒子にぶつかって散らばった光を、センサーで受け止めて数えます。何個あるか、どこにあるかがわかります。(しくみの説明は一般的なものです)
粒子が見つかったら、SEM-EDX(電子顕微鏡で拡大して見て、同時に、何の元素でできているかも調べる装置)で、正体を調べます。正体がわかれば、原因(装置、薬品、人など)を特定して、なくせるからです。数えるだけでは、「多い」「少ない」しかわかりません。
Cleanroom Technology「Cleanroom compatibility of wafers: Practical guidance on selecting the right analysis methods」(Kalle Niiranen、2026年5月7日。分析会社Measurlabsの技術担当者による記事。一部のみ閲覧)。
確認クイズ:ウェハの粒子を数える、代表的な装置は何ですか?
答え:光学式パーティクルカウンタです。
② 金属汚染の評価(TXRF・ICP-MS):X線を当てて、出てくる光で調べる
金属の汚れは、ごく少ない量でも問題になるので、高感度の方法が必要です。代表は、次の2つです。
正式名は「全反射蛍光X線分析」です。物質にX線を当てると、元素ごとに決まった色の光(蛍光X線)が出ます。これは、元素の「指紋」のようなものです。その光を調べれば、どの金属が、どれだけあるかがわかります。ウェハにX線を、表面すれすれの角度で当てるので、表面の汚れだけを、よく見られます。ウェハを壊さずに測れる(非破壊)のも特長です。
ウェハの表面を、薬品の蒸気でうすく溶かして、1滴に集め、その1滴を、装置で分析します。ウェハ全体の汚れを、まとめて調べられるので、日常の検査に向いています。(しくみの説明は一般的なものです)
ステップ1:「10の10乗」とは?
1のうしろに、0を10個つけた数です。
10の10乗 = 10,000,000,000 = 100億。
ステップ2:何を数えているのか
EAGの資料によると、TXRFで見つけられる最小の量(検出下限)は、多くの金属で1平方センチメートルあたり、10の9乗〜10の10乗個(10億〜100億個)の原子です。1平方センチメートルは、親指の爪くらいの広さです。
ステップ3:それは、どれくらい少ないのか
シリコンの表面には、1平方センチメートルあたり、約7×10の14乗個(約700兆個)の原子が並んでいます。(シリコン結晶の格子の一辺 約0.543ナノメートルから計算した目安です)
汚れの金属が100億個なら、
10,000,000,000 ÷ 700,000,000,000,000 ≒ 1 ÷ 70,000。
つまり、シリコンの原子約7万個に、金属の原子が1個という、ごくわずかな量です。
TXRFは、そんなわずかな汚れでも、見つけられる装置なのです。
EAG Laboratories「The Total Solution For Surface Contamination Measurements」。TXRFの検出下限は10の9乗〜10の10乗 atoms/cm²、分析径は約10ミリメートル、非破壊、100〜300ミリメートルのウェハ全体を測れる、と記載。VPD-ICP-MSは、Cleanroom Technologyの記事で、日常の検査に向く方法とされ、検出下限は元素によって10の6乗〜10の10乗 atoms/cm²とされています。
確認クイズ:TXRFは、何を測る方法ですか?
答え:ウェハの表面にある、金属の汚れの種類と量です。
③ 有機物汚染の評価(加熱脱離ガスの分析・GC-MS):あたためて出るガスを調べる
有機物は、ウェハをあたためて、出てくるガスを集めて分析するATD-GC-MSという方法で調べます(Cleanroom Technologyの記事)。ガスを成分ごとに分けて(GC)、重さで見分ける(MS)、という二段階の方法です。
汚れの種類ごとに、性質がちがうからです。粒子は「数と大きさ」、金属は「元素の種類と量」、有機物は「ガスの成分」を見ます。1つの方法で、すべての汚れは測れません。だから、目的に合わせて組み合わせます。
TXRFが苦手な、軽い元素(水素〜硫黄)は、SIMS(二次イオン質量分析)という別の方法で測ります。EAGの資料では、その検出下限は多くの金属で、1平方センチメートルあたり10の8乗〜10の9乗個(1億〜10億個)です。
TXRFの下限(10億〜100億個)と比べると、SIMSの下限(1億〜10億個)は、ひと桁(約10倍)小さい量まで見つけられる、ということです。
洗浄の出来ばえは、汚れの種類ごとに測り分ける。粒子は光学式カウンタ(光る点を数える)とSEM-EDX(正体を調べる)、金属はTXRF(X線の指紋)とVPD-ICP-MS(溶かして集めて分析)、有機物はATD-GC-MS(出るガスを調べる)。TXRFの検出下限は、多くの金属で10の9乗〜10の10乗個/平方センチメートル。
確認クイズ:粒子が見つかったあと、その正体を調べる方法は何ですか?
答え:SEM-EDXです。
これで、洗浄コース3級(入門)の5講は終わりです。2級(基礎)では、すすぎと乾燥、洗浄装置の方式、薬液の管理などを、くわしく学ぶ予定です。
ことばのおさらい
- 検出下限:その方法で、見つけられる、いちばん少ない量です。
- 非破壊:測るときに、ウェハを壊さないことです。
- TXRF:X線を当てて、出てくる光で、表面の金属を調べる方法です。
- VPD-ICP-MS:表面をうすく溶かして集め、その液を分析する方法です。
- SEM-EDX:電子顕微鏡で見て、何の元素かも調べる方法です。
- ATD-GC-MS:あたためて出たガスを、成分ごとに分けて調べる方法です。
よくある誤解
Q. 目で見てきれいなら、洗浄は成功ですか?
いいえ。問題になる汚れは、目に見えないほど小さいので、専用の装置で測ります。
Q. 金属は、粒子と同じ方法で測れますか?
いいえ。粒子は「光で数える」方法、金属はX線や、溶かして分析する方法など、元素を調べる方法を使います。
参考にした公式情報
- EAG Laboratories「The Total Solution For Surface Contamination Measurements」
- Cleanroom Technology「Cleanroom compatibility of wafers: Practical guidance on selecting the right analysis methods」(2026年5月7日)
- KTH Royal Institute of Technology, IH2655「Lecture 3: Wafer Clean and Wet Processing」(Mikael Östling、2012年春)

