太陽HDは2026年9月10日、imecとの共同研究で配線・ビアとも700nmの3層RDL形成を発表。FPIM材料の役割、従来評価からの進展、量産に向けて確認が必要な課題を初心者向けに解説します。
何が起きた?12インチウエハーで700nmの配線・ビアを形成
太陽ホールディングスは2026年9月10日、ベルギーの研究機関imecとの共同研究で、半導体パッケージング用材料「FPIMシリーズ」を使い、12インチウエハー上に3層のRDL構造を形成したと発表しました。配線と、層の間をつなぐビアの双方で、CDと呼ぶ寸法指標が700nmに達したとしています。同社によると、共著論文も同日のIEEE ESTC 2026で発表しました。9月10日は公表日と学会発表日であり、試料を作った日や実験を終えた日は明らかにされていません。太陽HDの公式発表
今回のニュースは、チップをつなぐ微細な配線を作るための材料と加工技術の評価が進んだというものです。発表の「当社初」は太陽HDにとって初めてという意味で、世界初や業界最小を示す表現ではありません。また、完成したAI半導体の性能向上や量産開始を報告した発表でもありません。英文発表
RDLとビアとは?チップの接続を引き直す仕組み
RDL(再配線層)は、チップの電気接続を、必要な位置へ引き直すための配線層です。建物に例えるなら、部屋の配置に合わせて電線の行き先を整える役割に近いものです。一方、ビアは、異なる層の配線を上下方向につなぐ接続部分です。横方向の配線だけを細くできても、上下の接続部分が大きければ、構造全体の微細化には制約が残ります。今回、配線とビアの両方で700nmを報告した点は、この二つを併せて評価した成果として読めます。従来の構造説明、今回の評価結果
700nmは0.7μmに相当します。ここでのCD(Critical Dimension)は、形成したパターンの重要な寸法を表す指標です。トランジスタの製造技術を示す「製造ノード」とは別の数値です。また、配線の幅、配線同士の間隔、配線の中心から隣の中心までの距離であるピッチも、それぞれ異なります。したがって、今回の発表を「700nmピッチの配線」と言い換えることはできません。公表された寸法の説明
「3層」の読み方にも注意が必要です。2025年の先行発表では、二つのRDL層と、その間をつなぐビア層からなる評価構造を説明していました。この経緯を踏まえると、今回の「3層RDL」という表現を、そのまま金属配線が3層ある構造と読み替えるべきではありません。2025年の評価構造
なぜAI時代に重要?複数のチップをつなぐ技術
背景にあるのは、複数の小さなチップである「チップレット」を高密度に接続する先端実装の開発です。imecは、こうした接続技術がシステムの性能、電力効率、データをやり取りできる量に関わると説明しています。計算を担うチップそのものに加え、チップ間をどう結ぶかも重要な技術課題なのです。imecによる先端実装の説明
この背景から、微細な再配線を作れる絶縁材料の開発は、高密度な接続を支える基礎技術として意味があります。ただし、今回の700nmという寸法だけで、AI処理が何倍速くなるか、消費電力がどれだけ減るかは判断できません。imecの別のRDL資料もFPIMの採用を示すものではなく、その資料の性能予測を今回の材料の実績に置き換えることはできません。太陽HDの評価範囲、imecの技術開発の位置付け
材料には、細かく描けること以外も求められる
FPIMは、デュアルダマシンプロセス向けの、光に反応する絶縁材料です。企業発表では「ネガ型i線感光性絶縁材料」と説明されています。ダマシンは、絶縁膜に設けた溝を金属で埋めて配線を作る方法です。溝を作った床に金属を埋め込み、表面をそろえる様子を思い浮かべると、加工の考え方をつかみやすくなります。FPIMの材料説明、ダマシンの技術説明
表面を平らにする工程がCMP(化学機械研磨)です。化学的な作用と機械的な研磨を組み合わせて平坦化します。そのため、材料は微細な形を描けるだけでなく、後に続く加工工程にも適応する必要があります。太陽HDは今回、高解像性とCMP工程への適応を確認したとしています。配線を細く描けたことに加え、その形を配線構造へ仕上げる工程との相性も評価した点がポイントです。CMPの説明、今回確認した特性
RDL材料の進展を、実装・品質の仕事へ
配線形成の発表を読んだら、線幅だけでなく、材料、形成条件、層間接続、検査と信頼性を整理します。研究で得られた値を量産工程全体の保証にしないことが大切です。測定・品質記録、組立や装置点検の経験は、実装・工程の仕事を調べる入口になります。電気・計測・品質を学び直しながら、公開英文資料の数値や条件を原文で確認しましょう。
2025年の評価からどこが進んだのか
共同研究は2022年10月に始まりました。2025年11月13日の先行発表では、12インチウエハー上で二つのRDL層がCD1.6μm、ビア層がCD2.0μmだったと報告しています。今回の配線・ビアともCD0.7μmという結果は、公表された寸法を比べると、双方の微細化が進んだことを示します。ただし、異なる時点の評価であり、同一の工程条件をそろえた比較とは確認できません。2025年11月の発表、2026年9月の発表
実用化の進み具合を考える際は、出荷の目的も区別する必要があります。同社によると、FPIMは2025年から研究開発向けの少量サンプルを出荷しています。これは評価用材料の提供が始まっていることを意味しますが、顧客製品への採用や量産供給の開始を示す情報とは異なります。サンプル出荷の説明
残る課題と、次に確認したい情報
太陽HDは、CD700nmのM1について、リーク電流と抵抗の評価が良好だったと説明しています。リーク電流は、本来流れてほしくない場所へ漏れる電流です。ただし、公開リリースには具体的な測定値や測定条件、サンプル数がありません。M1の評価を、全層と全ビア接続の長期信頼性が保証された証拠へ広げることはできず、ウエハー全面の寸法均一性や歩留まりも確認できません。評価結果は企業発表に基づくもので、独立した再現実験の確認ではありません。電気特性の公表内容
次の開発目標はCD500nm以下のRDL形成で、電気特性と信頼性の長期性能検証も続ける計画です。500nm以下は今回の達成事項ではなく、達成期限も示されていません。今後は、微細化の追加成果に加え、長期間使った際の安定性、製造のばらつき、顧客採用や量産供給に関する具体的な情報が判断材料になります。現時点では、先端実装を支える材料評価の前進として受け止めるのが適切です。今後の開発計画
この記事の知識を、次の仕事・学習へつなげる
配線・接合の評価、品質記録、装置点検の経験を、対象・作業・確認した結果で整理します。担当範囲と必要経験、勤務地、勤務・出張、教育体制を比較すると、次に補う知識も具体的になります。
出典
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このニュースの背景となる先端パッケージを、基礎から確認できます。
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