SEMIが欧州ReSiLientへの参画を発表。シリコンとSiCを域内鉱物や産業廃棄物から得る計画の狙い、技術的な難しさ、今後の確認点を初心者向けに解説します。
何が発表されたのか
SEMIは2026年9月14日、欧州の研究開発プロジェクト「ReSiLient」へのSEMI Europeの参画を発表しました。ReSiLientは、半導体材料に使われるシリコン(Si)と炭化ケイ素(SiC)について、欧州域内の鉱物だけでなく、産業活動から生じる副産物や廃棄物も原料候補にし、供給経路を多様化しようとする取り組みです。今回の日付はSEMIによる参画発表日であり、プロジェクトそのものの開始日や参画契約の成立日とは限りません。SEMIの発表
欧州委員会のCORDIS登録では、事業期間は2026年6月1日から2030年5月31日までの48カ月です。総費用は957万3137.50ユーロ、EUからの拠出額は799万8854.77ユーロと記載されています。「約957万ユーロのEU補助金」ではなく、約957万ユーロはプロジェクト全体の総費用です。また、2030年5月31日は現時点の終了予定日であり、完了実績ではありません。CORDISのプロジェクト情報
二つの原料経路をパイロット規模で試す
発表された計画では、域内の鉱物資源を利用する経路と、産業副産物・廃棄物を再利用する経路の二つから、冶金級シリコンと高純度SiCの製造をパイロット規模で検証します。パイロット規模とは、研究室での少量実験より実用化に近い条件で工程を試す段階ですが、安定した量産を意味する言葉ではありません。設備を動かせても、必要な純度、収率、製造コスト、環境負荷を同時に満たせなければ商用化には進めません。SEMIの発表
計画には、STMicroelectronics Silicon Carbide ABとInfineon Technologiesが、得られた材料を商用原料と比較評価することも含まれています。重要なのは、これは今後行う予定の評価であり、両社がすでに品質を認定した、製品へ採用した、量産を始めたという発表ではない点です。今回確認できる資料には、歩留まり、製造単価、量産認定、顧客採用の完了を示す測定結果はありません。SEMIの発表
SiとSiCは何が違うのか
シリコン(Si)は、現在の半導体産業で最も広く使われる基盤材料です。参加研究機関のbifaは、ロジック半導体、メモリー、太陽電池などの用途を挙げています。ロジック半導体は計算や制御を担当するチップ、メモリーはデータを保存するチップです。高品質な結晶を作る技術と大規模な製造基盤が整っていることが、Siの強みです。bifaの事業説明
炭化ケイ素(SiC)は、シリコンと炭素からなる化合物半導体です。高い電圧や温度に耐えやすく、電力を変換するときの損失を抑えやすいため、電気自動車や再生可能エネルギー設備などのパワーエレクトロニクスで重要になります。パワーエレクトロニクスとは、電気を単に流すのではなく、必要な電圧・電流・周波数へ効率よく変換して制御する技術です。SiとSiCは競争する場面もありますが、用途や製造工程が同一の材料ではありません。bifaの事業説明
回収できることと半導体に使えることは別
冶金級シリコンは、鉱石から還元して得るシリコンの基礎的な材料段階です。ここから不純物を大幅に減らさなければ、半導体用の原料にはなりません。WACKERの既存製法の説明では、冶金級シリコンからトリクロロシランという化合物を作り、蒸留で不純物を除去した後、Siemens法で高純度ポリシリコンを析出させます。半導体用途では、さらに洗浄工程も加わります。WACKERの技術説明
Siemens法は、精製したシリコンを含むガスを加熱した細いシリコン棒の表面で分解し、高純度の多結晶シリコンを成長させる方法です。ここで紹介したWACKERの工程は、ReSiLientが同じ製法を採用すると示すものではありません。ただし、「廃棄物からシリコン成分を回収できた」ことと、「微細な半導体を安定して作れるほど高純度の材料になった」ことの間には、複数の精製・評価工程があると理解する手掛かりになります。WACKERの技術説明
原料の循環から、材料品質と工程の学習へ
Si・SiCの原料循環を読んだら、回収、精製、品質評価、製造への適用を分けて整理します。研究への参画と商用供給の実績を同じ欄にしないことが大切です。材料・品質の基礎を補う教材と、公開英文資料を読み直す道具を併用できます。まず公式資料で工程と評価条件を確かめ、不足する知識が具体化してから学習を比較しましょう。一般教材を精製設備の操作教育と同一視せず、生成された説明や数値は原文と照合します。
なぜ供給網の取り組みが重要なのか
bifaは、原料となる高品質石英の確保、欧州内の処理能力、既存工程の環境負荷を課題として挙げています。つまり、鉱山や廃棄物から原料候補を見つけるだけでは不十分です。精製設備、エネルギー、品質管理、利用企業による評価までがつながって初めて、半導体材料の供給網になります。ReSiLientが資源、加工、利用側の比較評価を一つの計画に組み込んでいることには、この点で意味があります。bifaの事業説明
SEMI Europeは、社会的受容、成果の普及、広報、標準化を扱うWP8を主導すると発表しています。WPは「ワークパッケージ」の略で、大きな研究計画を役割別に分けた作業単位です。標準化は、材料の品質や評価方法を関係者間で比較しやすくするうえで重要ですが、標準化活動を始めること自体が材料性能の保証になるわけではありません。SEMIの発表
限界と今後の注目点
現段階で示されているのは研究開発計画です。欧州の輸入依存がどれだけ下がるのか、既存材料より安くなるのか、環境負荷がどれほど改善するのかは、まだ実証された成果ではありません。参加機関による将来目標や見通しと、第三者が確認できる生産・品質データは分けて読む必要があります。日本の材料企業にとっても供給網多様化の動向は重要ですが、受注増減や競争力への具体的影響を示す情報は確認されていません。
今後は、次の点を確認すると計画の進展を判断しやすくなります。
- 域内鉱物と二次資源から、目標とする純度のSi・SiCを再現性よく作れるか
- 商用原料との比較で、電気特性や不純物濃度がどこまで近づくか
- 回収率だけでなく、精製に必要なエネルギーと総コストを抑えられるか
- 環境・循環経済・技術経済の評価結果が数値で公開されるか
- パイロット実証後に、量産設備、顧客認定、継続的な調達へ進めるか
このニュースの核心は、欧州がSiとSiCの新しい原料候補を探すだけでなく、実際に利用する企業による品質比較まで計画に入れたことです。一方で、供給網の強化が実現したと判断できるのは、品質、経済性、環境性、量産性について具体的な結果がそろった後です。
理解した内容から、次の学習と比較へ
原料回収、精製、品質評価の整理を、対象・条件・出典の三つで整理しましょう。関連する基礎記事、学習の入口、PCの要件を目的別に確認すると、無料で試せる範囲と有料の選択肢を分けて検討できます。
出典
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