Applied Materialsが説明した3D NAND向けMo選択除去技術を、発表日、仕組み、3D積層の背景、量産検証の限界と今後の注目点から初心者向けに解説します。
何が起きたのか:発表日と内容を整理
Applied Materialsは2026年9月24日付の公式ブログで、3D NANDのモリブデン(Mo)ワード線を高精度に分離する「Producer Selectra Mo Etch」を詳しく説明しました。ただし、9月24日は技術ブログの公開日です。装置そのものの発表日は2026年6月15日であり、両者は同じ出来事ではありません。Applied Materialsの技術ブログと同社のプレスリリースが、それぞれの日付と概要を示しています。
今回の中心は、3D NANDの深く狭い構造の中で、Moを必要な場所だけ取り除く加工です。3D NANDでは、Moをワード線の材料として成膜した後、縦方向のスリット側に残った余分なMoを除去し、隣り合うワード線を電気的に分離する必要があります。Applied Materialsは、この工程にガスベースの選択除去を使う装置を提案しています。公式ブログ
ここで注意したいのは、「量産工程で検証済み」という説明が同社の主張であることです。公開資料には、顧客名、具体的な工程条件、従来方式との比較データ、改善率、量産開始時期までは示されていません。したがって、装置の発表・技術説明と、広範な量産採用が確認されたことは分けて考える必要があります。公式プレスリリース
なぜ難しいのか:3D NANDの加工を基礎から理解
3D NANDは、データを記憶するセルを平面上に並べるだけでなく、セルの層を垂直方向に積み重ねたメモリです。従来の平面型NANDでは、横方向にセルを小さくして記憶密度を高めてきました。しかし微細化が進むと、隣のセルとの距離や加工の余裕が小さくなります。そこで、セルを縦に積む3D化によって容量を増やす考え方が重要になりました。MicronのNAND解説
層数が増えると、加工対象は「深く、狭い」形になります。このような形状を高アスペクト比構造と呼びます。アスペクト比とは、穴や溝の深さと幅の比率です。深さに対して幅が小さいほど高アスペクト比になり、加工液や反応ガスを底まで均一に届けることが難しくなります。
ワード線は、メモリセルを選択するための導電層です。Moはその導電材料の一例で、成膜時には横方向のワード線キャビティだけでなく、加工用の縦スリット側にも回り込むことがあります。余分なMoが残ると、隣接するワード線を意図せずつなぐ導電経路になり得ます。一方で削り過ぎると、ワード線の形状を損ない、セルを制御する性能に影響する可能性があります。Applied Materialsの技術説明
Selectra Mo Etchの技術:選択性と均一性が鍵
技術のもう一つの重要語が選択除去です。これは、取り除きたい材料には強く作用し、残したい周辺材料にはできるだけ作用しないように加工する考え方です。今回の装置では、Moを狙って除去しながら、周囲の材料を保護するガスベースの処理が説明されています。製品ページ
従来の液体ベースのウェットエッチングでは、高い積層構造の深部まで薬液を均一に作用させることが難しい場合があります。その結果、構造の上部では削り過ぎ、下部では削り不足になるような処理プロファイルが生じる可能性があります。Applied Materialsは、ガス供給とプロセス制御によって、スタックの上部から下部までワード線分離の均一性を高めることを狙うと説明しています。公式ブログ
記事タイトルなどで使われる「原子精度」という表現も、慎重に読む必要があります。公開資料からは、原子層単位の誤差値、具体的な選択比、エッチング速度、処理温度や圧力は確認できません。したがって、ここでは「非常に細かな加工制御を目指す」という技術上の表現として理解し、測定済みの原子レベル性能値と断定しないのが適切です。
NANDの配線分離から、工程・計測の仕事へ
Mo配線の加工を理解したら、膜を作る工程、分離、洗浄、測定のつながりを整理します。高精度という表現だけで工程全体の歩留まりが決まるわけではありません。装置条件の記録、測定、点検や品質確認の経験は、工程・設備の仕事を調べる接点です。機械・電気・計測の基礎を補い、求人相談では担当工程と必要経験を具体的に比較しましょう。
期待される効果と、まだ分からないこと
Applied Materialsは、均一なワード線分離によって、セル間のばらつき、リーク、データ保持に関係する課題の改善を狙うとしています。リークとは、本来流れてほしくない経路に電流が漏れる現象です。データ保持は、書き込んだ情報を一定期間正しく保てる性質を指します。加工のばらつきが小さくなれば、メモリの電気的な安定性に寄与する可能性がありますが、これは同社の説明であり、公開された独立試験結果ではありません。公式プレスリリース
また、同社はこの選択除去技術を、将来的に高度なDRAMや先端ロジックなどへ広げられる可能性にも触れています。ただし、これは適用可能性や事業上の計画であり、それらの製品で量産採用された事実を示すものではありません。用途ごとに材料、構造、加工条件が異なるため、3D NANDでの説明をそのまま他の半導体へ当てはめることはできません。製品ページ
今後の注目点
今後確認したいのは、第一に顧客名や対象製品を含む量産採用の具体化です。第二に、ウェットエッチングとの比較で、均一性、リーク、歩留まり、データ保持がどの程度改善したのかを示す測定データです。第三に、より高い積層数や狭い構造でも同じ性能を維持できるかです。
3D NANDの高層化が進むほど、材料を単に削るだけでなく、深さ方向の均一性と、残す材料を守る選択性が重要になります。今回のニュースは、目立つ新しいメモリ製品の発表というより、3D積層を支える製造工程の改良です。2026年9月28日時点で、Applied Materials公式ニュースルームなどを確認した範囲では、9月24日のブログを訂正・更新する後続の公式告知は確認できませんでした。Applied Materials公式ニュースルーム
この記事の知識を、次の仕事・学習へつなげる
装置条件記録、測定、点検、品質確認の経験を、対象・作業・確認した結果で整理します。担当範囲と必要経験、勤務地、勤務・出張、教育体制を比較すると、次に補う知識も具体的になります。
使用した情報源
- Applied Materials「Scaling Next-Generation 3D NAND with High-Precision Selective Removal」
- Applied Materials Investor Relations「Applied Materials Unveils Deposition and Selective Etch Systems to Advance 3D Chip Scaling」
- Applied Materials「Producer Selectra Mo Etch」
- Micron Technology「The evolution of NAND」
- Applied Materials Newsroom
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