この講で答える問いは1つです。
「半導体は、導体や絶縁体と、何がちがうのか」
答え:半導体とは、電気を運ぶ電子の数を、自分たちで変えられる物質です。
この記事でわかること
- ① 電気が流れるとは(電子)
- ② 導体と絶縁体
- ③ 半導体は中間(バンドギャップ)
- ④ 電子を増やす方法 温度
- ⑤ 電子を増やす方法 不純物(n型・p型)
各節の「くわしく見る」は式や図で確かめたい人向けです。飛ばしても次に進めます。
① 電気が流れるとは、電子が動くこと
大事なポイント:電気を運ぶのは、動ける電子です。
物質の中の電子の多くは、原子に結びついていて、動けません。電気を運べるのは、結びつきから外れて、自由に動ける電子だけです。
確認クイズ:電気を運べるのは、結びついた電子と、動ける電子の、どちらでしょう?
答え:動ける電子です。
② 導体と絶縁体は、動ける電子の数がちがう
大事なポイント:動ける電子が、多いか、ほとんどないか。それだけで分かれます。
銅やアルミのように、動ける電子がたくさんある物質が導体です。ガラスやゴムのように、ほとんどない物質が絶縁体です。冒頭の図の、左と右の関係です。
確認クイズ:動ける電子がほとんどない物質は、導体と絶縁体のどちらでしょう?
答え:絶縁体です。
③ 半導体は、その中間にある
大事なポイント:半導体は、動ける電子が「少しだけ」あり、その数が変えられる物質です。
代表はシリコンで、最も広く使われています。2番目に多いのはヒ化ガリウムです。
なぜ「少しだけ」動けるのか。まず、電子は、どんな高さのエネルギーでもいられるわけではありません。ビルの階に例えると、電子には「いられる階」と「いられない階」があります。
- 下の階(価電子帯):電子が、原子に結びついている階です。ここにいる電子は、動けません。
- 上の階(伝導帯):電子が、原子から自由になって、動ける階です。
- 階のあいだ(バンドギャップ):電子がいられない高さです。この高さの差が、バンドギャップです。
電子が動けるようになるには、下の階から上の階へ、この高さの差のぶんだけ、エネルギーをもらって上がる必要があります。差が大きければ、ほとんど上がれず、小さければ、少し上がれます。
すき間は、ダイヤモンドが5.5eV、シリコンが約1.1eV、ゲルマニウムが約0.67eV、ヒ化ガリウムが約1.43eVです(eVはエネルギーの単位)。一般に、約4eVより大きいものは半導体とは呼びません。ただし、この線引きは、ある程度は決めごとです。
確認クイズ:すき間が大きいのは、シリコンとダイヤモンドのどちらでしょう?
答え:ダイヤモンド(5.5eV)です。
④ 電子の数を変える方法① 温度
大事なポイント:温度を上げると、動ける電子が増えます。金属とは逆です。
なぜ温度で、電子が上の階へ上がるのか。温度が高いとは、結晶の中の原子が、激しく揺れている状態です。揺れる原子は、まわりの電子にぶつかって、エネルギーを分けます。電子がもらえる量は、一定ではありません。大半の電子は少ししかもらえず、ごく一部の電子が、たまたま大きくもらいます。階の差より大きくもらえた電子だけが、上の階へ上がります。温度が高いほど、原子の揺れが激しいので、大きくもらえる電子が増えます。すき間が小さい物質ほど、少ないエネルギーで上がれるので、上がる電子が多くなります。
熱のエネルギーで、すき間を越える電子が増えるため、半導体は温度が上がるほど電気を通しやすくなります。金属は、温度が上がると原子の振動がじゃまをして、通りにくくなります。絶対零度(0K)では、半導体も絶縁体と同じ状態です。
確認クイズ:温度が上がると、半導体の電気の通りやすさは、どうなるでしょう?
答え:増えます。
くわしく見る:電子がどれだけ増えるか(式と計算)
純粋な半導体で、すき間を越える電子の数 ni は、おおまかに次の形です(半導体物理の一般的な式で、目安をつかむためのものです)。
ni ∝ exp( −Eg / 2kT )
Eg はすき間、T は温度、k はボルツマン定数です。室温(300K)で kT は約0.0259eVです。
| 物質 | Eg | Eg/2kT | exp(−…) |
|---|---|---|---|
| シリコン | 約1.12eV | 約21.6 | 約4×10−10 |
| ダイヤモンド | 5.5eV | 約106 | 約10−46 |
計算には、室温の値(シリコンは約1.12eV)を使っています。
すき間が5倍ほどのちがいで、電子の数は36桁もちがいます。これが、半導体と絶縁体の差の正体です。T が大きくなると値が急に増えるので、温度を上げると通りやすくなることも、式から読み取れます。
⑤ 電子の数を変える方法② 不純物(ドーピング)
大事なポイント:ごく少量の不純物で、電気の通りやすさを桁ちがいに変えられます。これが半導体の最大の強みです。
別の原子を少し混ぜることをドーピングと呼びます。混ぜる量は、数十万個から数億個に1個ほどの、ごくわずかな割合です。たとえば、リンやヒ素を、シリコン原子100万個に約2個の割合で混ぜると、自由な電子が1立方センチメートルあたり約10の17乗個増え、電気の通りやすさが桁ちがいに大きくなります。
シリコンは、結びつきに使う電子を4個もっています。
- n型:電子を5個もつ原子(リン、ヒ素、アンチモン)を混ぜる。電子が1個あまり、その電子が電気を運びます。
- p型:電子を3個しかもたない原子(ホウ素、ガリウム)を混ぜる。電子の足りない場所ができ、この「電子の抜けた穴」が正孔(ホール)として、正の電気を運ぶ粒のように動きます。▶ 2級でくわしく
確認クイズ:ホウ素を混ぜたシリコンは、n型とp型のどちらでしょう?
答え:p型です。
くわしく見る:どれくらい少量か、通りやすさの式
シリコンは、1辺0.5431nmの立方体に原子が8個入る結晶です(ダイヤモンド構造の一般的な性質)。
8 ÷ (0.5431×10−7 cm)3 ≈ 5.0×1022 個/cm3
増える電子は約1017 個/cm3 なので、割合は 1017 ÷ (5×1022) = 2×10−6(100万個に約2個)。それだけで、通りやすさが桁ちがいに大きくなります(下の計算)。
純粋なシリコンの抵抗率は、20℃で約2.3×103 Ω·m です(大きいほど通りにくい)。通りやすさに直すと約4.3×10−6 S/cm です。電子が1017 個/cm3、動きやすさ(移動度)が約700 cm²/(V·s) のとき、σ ≈ 1.6×10−19 × 1017 × 700 ≈ 11 S/cm で、桁ちがいの差になります(目安。移動度は第2講で説明します)。
通りやすさ σ は、運ぶ粒の数と動きやすさで決まります(半導体物理の基本の式)。
σ = q ( n μn + p μp )
q:電子1個の電気の量、n・p:電子と正孔の数、μn・μp:動きやすさ。温度とドーピングで n・p を大きく変えられる、というのが、この講の結論です。
電気を運ぶのは動ける電子で、導体は多く、絶縁体はほとんどなく、半導体はその中間です。
半導体は、バンドギャップが小さいので、温度を上げると動ける電子が増えます。
ごく少量の不純物でも、通りやすさが桁ちがいに変わり、電子が運ぶのがn型、正孔が運ぶのがp型です。
次の講では、電子と正孔が、実際にどのように電気を運ぶのかを見ていきます。
ことばのおさらい
- 電子:電気を帯びた小さな粒です。動ける電子が電気を運びます。
- バンドギャップ:価電子帯と伝導帯のあいだの、電子がいられないすき間です。
- ドーピング:少量の不純物を混ぜて、電気の通りやすさを決めることです。
- n型・p型:電子が運ぶ半導体/正孔が運ぶ半導体です。
- 正孔(ホール):電子の抜けた穴で、正の電気を運ぶ粒のように動きます。
参考にした公式情報
式の形は、半導体物理の一般的な知識にもとづく目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。

