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成膜とは?半導体チップの薄膜をつくる工程の役割をわかりやすく解説【成膜3級・第1講】

成膜とは?半導体チップの薄膜をつくる工程の役割をわかりやすく解説【成膜3級・第1講】 お知らせ
SEMICON CAMPUS 無料講座成膜コース3級 入門 ・ 第1講
シリコンのウェハ(土台)ゲート絶縁膜ゲート(ポリシリコン)層間絶縁膜配線配線上の階の配線保護の絶縁膜(いちばん上)下から順に膜を重ねていくどの膜も成膜でつくるチップの断面のイメージ(実際の層の数や厚さは、図とは違います)
土台のシリコンの上に、絶縁する膜と電気を通す膜を、下から順に重ねてチップができます。

今回のテーマは、

「半導体チップの工程で、なぜ薄い膜を何度も重ねるのか」

答え:チップは、電気を通す膜と通さない膜を、順に重ねてできているからです。その膜をつくる工程が成膜で、材料を飛ばして付ける方法と、ガスの化学反応でつくる方法に、大きく分かれます。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① チップは膜の積み重ね
  • ② 膜の4つの役目
  • ③ 膜はどれほど薄いか
  • ④ 成膜の大きな分け方(飛ばして付ける方法・ガスの反応でつくる方法)
  • ⑤ 成膜に求められる条件

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① チップは、薄い膜の積み重ねでできている

大事なポイント:成膜とは、ウェハの上に、薄い膜を付ける工程です。チップは、この膜を何層も重ねてできています。

まず、言葉の確認です。ウェハとは、半導体チップの土台になる、シリコンの薄い円盤です。直径は最大300mm(約12インチ)のものが使われています。このウェハの上に、材料をごく薄く付けたものが膜です。膜を付ける工程を成膜といいます。

チップの中には、電気を通さない材料(絶縁体)、電気を少し通す材料(半導体)、電気をよく通す材料(導体)の層が重なっています。この層の1枚1枚が、成膜でつくる膜です。たとえば、建物に床や壁や配管があるように、チップにも「隔てる膜」と「電気の通り道になる膜」があります。

最新のチップでは、金属の配線の階が11以上あり、全体で300以上の工程を順に行う、と説明されています。成膜は、その途中で何度もくり返されます。つまり、成膜は半導体づくりの中で、とても出番の多い工程です。

① ウェハシリコン② 膜を付ける(成膜)③ 次の工程へこの講座では、②の「膜を付ける」だけを学びます(形をつくる工程は別のコース)
膜を付けたウェハは、あとの工程で、不要な所を削るなどして形がつくられます。
確認クイズ:成膜とは、何をする工程でしょう?

答え:ウェハの上に、薄い膜を付ける工程です。

くわしく見る:ウェハ全面に付ける膜は、どれくらいの量か

直径300mmのウェハの面積を、円の面積の式で計算します。半径は150mmなので、

π × 1502 ≈ 3.14 × 22,500 ≈ 70,700 mm2 = 約707 cm2

ここに厚さ100nmの膜を付けます。100nm = 10−5 cm なので、膜の体積は

707 cm2 × 10−5 cm ≈ 7.1×10−3 cm3 = 約7 mm3

小さじ1杯(5mL = 5,000 mm3)の約700分の1です。広い面積に、ごく少ない量を、むらなく広げているのがわかります。

② 膜には、4つの役目がある

大事なポイント:膜の役目は、おもに「隔てる」「電気を通す」「スイッチ部分の絶縁」「金属の広がりを防ぐ」の4つです。

1つめは、隔てる膜です。電気を通さない絶縁膜は、配線どうしや、トランジスタ(電気を流したり止めたりするスイッチの部品)どうしを、電気的に分けます。昔から二酸化ケイ素(シリコンと酸素の化合物)などが使われてきました。なぜ必要か:隔てる膜がないと、となりあう配線どうしで電気が行き来して、回路がショートし、チップが動かなくなるからです。

2つめは、電気を通す膜です。チップの中の電気の通り道(配線)は、金属の膜でつくります。かつてはアルミニウムが、いまは銅が主役です。なぜ必要か:配線がないと、たくさんのトランジスタを回路としてつなげず、1つ1つの部品が役に立たないからです。また、上下の配線をつなぐ縦の柱(プラグ)にタングステンが使われ、これはCVDという方法で付けます。

3つめは、ゲート絶縁膜です。トランジスタのスイッチ部分(ゲート)の下に敷く、とても薄い絶縁膜です。なぜ必要か:ゲートの電圧でシリコンの中の電気の流れを操作するには、ゲートとシリコンのあいだを、電気が直接流れない状態にしておく必要があるからです。薄くしすぎると、電気がしみ出してしまうため(トンネル電流といいます)、いまは酸化ハフニウムのような、電気をためやすい材料に置きかえる工夫がされています。 ▶ 2級でくわしく

4つめは、バリア膜です。銅は、まわりの材料やシリコンの中へ広がると、部品の性能を悪くします。そこで、銅を窒化タンタルなどの膜で包んで、広がらないようにします。なぜ必要か:銅が広がると部品の性能が悪くなり、せっかくつくった配線が、チップを傷める原因になるからです。

つまり、4つの役目は、チップを「ショートさせず」「電気をつなぎ」「スイッチを動かし」「汚さない」ために、どれも欠かせません。

① 隔てる膜(絶縁膜)② 配線② 配線周りのオレンジ色が④ バリア膜シリコン③ ゲート絶縁膜(薄い黄色)
断面の模式図です。実際の配置とは異なります。
確認クイズ:銅の配線を、窒化タンタルなどのバリア膜で包むのは、何のためでしょう?

答え:銅が、まわりの材料へ広がって、部品の性能を悪くするのを防ぐためです。

③ 膜は、とても薄い(ナノメートルの世界)

大事なポイント:薄膜の厚さは、原子1層に満たない厚さから、数マイクロメートルまでです。作業時間は、「厚さ÷付く速さ」で見積もれます。

単位の確認です。1マイクロメートル(μm)は、1ミリメートルの1000分の1です。1ナノメートル(nm)は、1μmのさらに1000分の1です。つまり、1μm = 1000nmです。

薄膜は、「原子1層に満たない厚さ(1nmより薄い)から、数μmまで」の層をさします。チップの中の膜の多くは、数nmから数百nmです。髪の毛の太さは、約80μm(一般的な目安)なので、100nmの膜は、髪の毛の約800分の1の厚さになります。

1 nm10 nm100 nm1 μmゲート絶縁膜など配線・絶縁膜の多く目盛りは10倍ごとに等間隔(対数の目盛り)。左へ行くほど薄く、原子1層に近づきます薄膜の範囲:原子1層に満たない厚さ〜数μm
帯の位置は、目安です。実際の厚さは、膜の種類や世代で変わります。

膜を付ける時間は、厚さを付く速さで割れば、おおよそわかります。速さは、方法や条件で大きく変わります。

確認クイズ:1 μmは、何nmでしょう?

答え:1000nmです。

くわしく見る:時間を見積もる(ポリシリコンの例)

ポリシリコン(結晶の向きがそろっていないシリコン)を、600〜650℃で付ける方法では、1分間に10〜20nm付くとされています。200nmの膜に必要な時間は、

200 nm ÷ 20 nm/分 = 10分 〜 200 nm ÷ 10 nm/分 = 20分

です。速さがおよそ2倍ちがえば、時間もおよそ2倍ちがいます。この速さは、あくまでも1つの例です。別の膜や装置では、大きく変わります。

④ 成膜の大きな分け方:PVDとCVD(とALD)

大事なポイント:成膜は、材料を「物理的に運ぶ」PVDと、「化学反応でつくる」CVD、ALDに分かれます。

PVD(物理気相成長)は、固体の材料を蒸気(バラバラの原子)にして、ウェハの上で再び固体に戻す方法です。空気を抜いた真空の容器の中で行います。水蒸気が冷たいガラスに水滴として付くのと、似たイメージです。材料は、ほぼ一方向から飛んでくるため、膜は向きのそろった付き方になります。

CVD(化学気相成長)は、ガスどうしを反応させて、ウェハの表面で固体の膜をつくる方法です。原料のガス(前駆体)が、ウェハの表面で反応して分解し、膜になります。ガスは、表面に沿って広がるため、凹凸にも沿って膜が付きやすい特徴があります。反応でできる余分なもの(副生成物)は、ガスの流れで外へ運び出します。

反応させるガスは、1種類のことも、数種類のこともあります。たとえば、シリコンの膜は、シランというガス1種類を熱で分解してつくります(SiH4 → Si + 2H2)。二酸化ケイ素の膜は、シランと酸素の2種類を反応させてつくります。

反応すると固体の膜ができるのは、反応でできる物質のうち、膜になる物質(シリコンなど)が、その温度では気体にならず、固体のまま表面に残るからです。膜にならない物質(水素など)は気体のままなので、ガスの流れで外へ出ていきます。 ▶ 2級でくわしく

ALD(原子層堆積)は、CVDの仲間で、ガスを1種類ずつ入れて、原子の層を1枚ずつ重ねる方法です。とても薄く、均一な膜に向きます。これらのほかに、銅の配線の埋め込みには、電気を使った「めっき」も使われます。

PVD:材料を飛ばして付ける材料のかたまり一方向から上から当たるので、真上が付きやすいCVD:ガスの反応で付ける原料ガス(あらゆる向き)表面で反応して、固体になるALDは、CVDの反応を1層ずつ区切って行う方法です
左は材料が一方向から降る様子、右はガスが表面で反応する様子です。
確認クイズ:ガスを表面で反応させて、膜をつくる方法は、PVDとCVDのどちらでしょう?

答え:CVDです(PVDは、固体の材料を蒸気にして付ける方法です)。

⑤ 成膜に求められる5つの条件

大事なポイント:膜は、付けば良いわけではありません。厚さ、むら、付き方、きれいさ、温度の5つを満たす必要があります。

成膜の方法を選ぶとき、次の5つを見ます。

  1. 厚さ:狙いの厚さに、きちんと合わせます。
  2. 均一さ:ウェハの全面で、厚さが同じになるようにします。
  3. 付き回り:段差や、穴の側面や底にも、膜が付くようにします。
  4. 純度:余計な原子(不純物)が、少ない膜にします。
  5. 温度:すでに作ってある下の部品を、傷めない温度で付けます。

たとえば、PVDは低い温度でも付けられるのが利点です。一方、CVDは凹凸に沿って付きやすいのが利点です。ALDは最も薄く均一に付けられますが、時間がかかります。どれか1つが万能なのではなく、膜の目的に合わせて使い分けます。次の講から、方法ごとに順に見ていきます。

1厚さ狙いどおり2均一さ全面で同じ3付き回り穴の中にも4純度不純物が少ない5温度下を傷めないこれらを満たす方法を、膜の目的に合わせて選びます測り方は、第5講で学びます
5つの条件の簡単な見取り図です。
確認クイズ:すでに部品が入っているウェハに、膜を付けるとき、温度について何に気をつけるでしょう?

答え:下にある部品を傷めない温度で付けることです。

くわしく見る:「均一さ」を数字で見る

100nmを狙ったウェハで、場所によって±2%(プラスマイナス2パーセント)のばらつきがあるとします。

100 nm × 0.02 = 2 nm(→ 98nm〜102nm)

となります。10nmの膜で同じ2nmのずれがあれば、ずれの割合は20%にもなります。薄い膜ほど、同じ大きさのずれが、目立つのがわかります。

なお、「±○%」の数え方は会社や装置で少しずつ違うため、ここでの割合は、考え方をつかむための目安です。

安全のひとこと:成膜に使うシランなどのガスは、空気に触れると燃えたり、毒性があったりします。工場では、専用の設備と決まりで厳重に管理されます。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。

この講のまとめ

この講のポイント

チップは、絶縁する膜と電気を通す膜を重ねてできていて、その膜をつくる工程が成膜です。
膜の厚さは、原子1層に満たない厚さから数μmまでで、物理的に付けるPVD、化学反応でつくるCVD、1層ずつ重ねるALDに分かれます。
膜は、厚さ・均一さ・付き回り・純度・温度の5つを満たす必要があり、目的に合わせて方法を選びます。

次の講では、PVDのうち、真空蒸着とスパッタについて、どのように膜を付けるのかを見ていきます。

ことばのおさらい

  • ウェハ:チップの土台になる、シリコンの薄い円盤です。
  • 成膜:ウェハの上に、薄い膜を付ける工程です。
  • PVD:固体の材料を蒸気にして、ウェハの上で固体に戻す方法です。
  • CVD:ガスの化学反応で、ウェハの表面に固体の膜をつくる方法です。
  • ALD:ガスを1種類ずつ入れて、原子の層を1枚ずつ重ねる方法です。
  • バリア膜:銅などが、まわりへ広がるのを防ぐ膜です。

よくある誤解

Q. 成膜は、ペンキを塗るようなものですか?

似ている点もありますが、ちがいます。膜の厚さをnm単位で合わせ、ウェハ全面でむらなく付ける必要があります。

Q. 膜は、厚ければ厚いほど良いのですか?

いいえ。膜が厚すぎると、割れたり、時間がかかったりします。目的に合う厚さがあります。

参考にした公式情報

髪の毛の太さ、小さじの量、単位の換算、図の層構成は、一般的な知識や記事用の簡易な目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。

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