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CMPと配線の不良とは?ディッシング・エロージョン・ボイド・エレクトロマイグレーションと検査をわかりやすく解説【平坦化・配線3級・第5講】

SEMICON CAMPUS 無料講座平坦化(CMP)・配線コース3級 入門 ・ 第5講
理想:高さがそろう広い配線細い配線が密集表面は、すべて同じ高さディッシング広い配線細い配線が密集広い銅の中央が凹むエロージョン広い配線細い配線が密集密な所の絶縁膜が減る
橙が銅、青灰が絶縁膜です。赤い点線は、本来の表面の高さです。中央は、広い配線で銅が凹む様子(ディッシング)、右は、細い配線が密な所で、絶縁膜も銅も低くなる様子(エロージョン)です。(簡易の模式図)

今回のテーマは、

「研磨や配線では、どんな不良が起きるのか。それをどう見つけるのか」

答え:銅が凹む、絶縁膜が減る、傷や残りかすがつく、埋め込みで空洞ができる、電流で断線する、といった不良があります。段差の測定や電気テストで調べて、原因の工程へ戻します。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 凹みと削れすぎ
  • ② 傷と残りかす
  • ③ 埋め込みの空洞
  • ④ 電流による断線
  • ⑤ 不良の見つけ方

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① ディッシングとエロージョン:凹みと削れすぎ

大事なポイント:研磨のあと、広い銅配線の中央が凹むのがディッシング、密な所の絶縁膜まで削れるのがエロージョンです。

CMPは、高い所を狙って削りますが、配線の形(広さや密度)によって、削れ方にむらが出ます。このむらを、2つに分けて説明します。参考にした研究資料では、ディッシングを「銅の配線が、隣の酸化膜より凹んでいる高さ」、エロージョンを「酸化膜の、元の高さと研磨後の高さの差」と定義しています。

ディッシングは、幅の広い配線で目立ちます。講義資料によれば、パッドが完全に硬い板ではなく、少し曲がるため、広い配線の中央で銅が余分に削れます。エロージョンは、銅の配線が近くに多くある所で起きます。そこでは、配線のあいだの酸化膜に、強い圧力がかかり、酸化膜が削れます。銅の密度が高いほど、どちらも起きやすくなります。

困る理由は2つあります。1つは、銅が薄くなって、配線の抵抗が高くなることです。もう1つは、表面が平らでなくなり、次の層の工程で、段差の問題が戻ってくることです。研究資料には、場所によって抵抗や容量が変わり、表面の凹凸が製造上の問題になる、と書かれています。

対策として、資料には2つの方法が書かれています。幅の広い配線に絶縁膜の島を入れて銅の密度を下げる方法(スロッティング)と、配線のない広い所に、電気的につながらない銅の島を足して密度を上げる方法(ダミーフィル)です。銅の密度を、研磨しやすい範囲にそろえるのが狙いです。

確認クイズ:幅の広い銅配線の中央が、凹んで削れる不良を、何といいますか?

答え:ディッシングです。

くわしく見る:凹んだ分だけ、抵抗がどれだけ増えるか

銅の厚さが300nmの配線が、ディッシングで50nm凹んだとします(仮の値です)。残る厚さは 300 − 50 = 250nm です。幅と長さが同じなら、断面積は厚さに比例し、抵抗は断面積に反比例するので、

300 ÷ 250 = 1.2 倍(約20%増)

になります(バリア膜などは無視した目安です)。わずかな凹みでも、薄い配線ほど、抵抗への影響が大きくなります。

② 傷と残りかす:研磨のあとに残るもの

大事なポイント:研磨では、表面に傷がついたり、粒や削りくずが残ったり、薬品で腐食したりすることがあります。洗浄が大切です。

研磨は、粒で表面を削る工程なので、表面に細い傷(スクラッチ)がつくことがあります。大きな粒が混ざった場合や、硬いごみがパッドとウェハのあいだに入った場合に起きやすい、と一般に説明されます。傷が深いと、配線や絶縁膜が欠けて、不良につながります。

また、研磨のあとには、スラリーの粒や、削りくずが、表面に残ります。残ったままだと、次の工程で、膜がうまく付かない、配線が短絡(つながってしまう)するなどの原因になります。だから、研磨のあとは、洗って、粒や削りくずを落とします。

参考にした資料には、CMPの不良として、ほかに、スラリーの薬品による腐食、強い力による割れ、層の境目でのはがれ、が挙げられています。割れやはがれは、第4講で学んだように、強度の低い絶縁膜で特に心配されます。

確認クイズ:研磨のあとに、スラリーの粒や削りくずが残ると、どうなる心配がありますか?

答え:次の工程で、膜がうまく付かない、配線が短絡するなどの不良の原因になります。

③ ボイド:埋め込みでできる空洞

大事なポイント:細くて深い溝やビアに銅を埋めるとき、入口が先にふさがると、中に空洞(ボイド)が残ります。

① めっき開始壁にうすく銅が付く② 入口側が厚くなる入口のほうが先に厚くなる③ 入口がふさがる中に空洞(ボイド)
細くて深い溝やビアに銅を付けるとき、入口が先にふさがると、中に空洞(ボイド)が残ります。橙が銅、青灰が絶縁膜です。(簡易の模式図。ふつうは、添加剤などの工夫で、底から埋めます)

第3講で学んだように、銅は、めっきで溝やビアに埋めます。細くて深い所では、奥に銅イオンが届くのが遅く、奥のめっきが遅くなります。入口が先に銅でふさがると、その下に、空洞が残ります。この空洞がボイドです。参考にした資料にも、このような埋め込みで、内部にボイドができることが書かれています。

ボイドは、配線の断面を減らして抵抗を上げたり、ひどいと配線を切ったりします。また、最初は問題がなくても、使っているうちに、ボイドが成長して断線することがあります。ボイドは、埋め込みの工夫(底から先に付ける)と、検査で防ぎます。

ほかにも、シード層(めっきの土台)に切れ目があると、その部分には銅が付かず、空洞や欠けの原因になります(一般的な説明です)。

確認クイズ:めっきで、溝の入口が先にふさがると、何ができますか?

答え:中に、空洞(ボイド)ができます。

④ エレクトロマイグレーション:電流で配線が壊れる

大事なポイント:配線に電流が流れ続けると、電子が金属の原子を押して動かし、配線の一部が切れたり、盛り上がったりします。

ボイド(原子が抜けた所)断線のもとヒロック(原子がたまって盛り上がる)隣の配線と接触するおそれ電子の流れる向き(原子も、この向きに動く)青い丸は電子です。電子が原子を押して、少しずつ動かします
銅の配線の断面を、横から見た模式図です。電子の流れが金属の原子を押して動かし、原子が抜けた所にボイド、たまった所にヒロックができます。

エレクトロマイグレーションは、電子が金属の原子に勢いを与えて、原子が少しずつ動く現象です。参考にした資料では、粒の境目や膜の境目など、原子の結びつきが弱い所で、特に起きやすいと説明されています。電流が大きい、温度が高い、電流が一部に集中する、といった条件で、進みやすくなります。

原子が動くと、2つの故障が起きます。原子が抜けた所にはボイドができ、配線が切れます(開放)。原子がたまった所にはヒロックという盛り上がりができ、隣の配線と接触すると、短絡(ショート)します。

銅は、アルミより、この現象に強いとされます。資料によれば、同程度の信頼性で、銅はアルミの約5倍の電流密度に耐えます。ただし、配線が細くなると、電流密度が上がり、問題はなくなりません。対策として、配線を広くする、ビアを複数にして電流を分ける、90度の角を避ける、設計の検査ソフトで確認する、などがあります。細い銅配線でも、電流密度と温度に余裕をもたせて設計します。

確認クイズ:エレクトロマイグレーションで、原子が抜けた所と、たまった所には、それぞれ何ができますか?

答え:抜けた所にボイド(断線のもと)、たまった所にヒロック(盛り上がり。隣と短絡のおそれ)ができます。

くわしく見る:寿命の見積もり式(ブラックの式)

配線が壊れるまでの平均時間(MTTF)の目安として、資料には、次の式が紹介されています。

MTTF = A ÷ Jⁿ × exp(Eₐ ÷ kT)

Jは電流密度、Tは温度(ケルビン)、Eₐは活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Aは配線の断面積などで決まる定数で、nは、ブラックは2としたと書かれています。温度が高いほど寿命は短くなります。nが2のとき、電流密度が2倍になると、寿命は、

1 ÷ 2² = 1/4

になります(他の条件が同じとした目安です)。なお資料には、この式は、ナノメートルの大きさの配線では、当てはまりが怪しくなる、とも書かれています。

▶ 2級でくわしく:活性化エネルギーと温度による寿命の変化。

⑤ 不良の見つけ方:形を測る検査と、電気を測る検査

大事なポイント:研磨後の形は段差などを測って、配線の良し悪しは電気を測って調べます。結果を研磨や設計に戻して、不良を減らします。

不良は、見つけて、原因を直すことが大切です。調べ方は、大きく2つに分けられます。

  • 形を測る:研磨後の表面の高さの変化を、針でなぞる方法(段差計、プロファイロメトリ)などで測ります。研究資料には、段差の測定が、ディッシングとエロージョンの調べに有用だと書かれています。外観の検査で、傷や残りかすを調べる方法もあります(一般的な説明です)。
  • 電気を測る:配線の抵抗を測って、断線(抵抗が極端に高い)や、短絡(つながってはいけない所がつながっている)を調べます。研究資料には、試験用の配線パターンの電気の測定から、配線の厚さを求められると書かれています。また、高温で長時間電流を流す試験を行い、結果から寿命を見積もる方法が、エレクトロマイグレーションの評価に使われます。

測った結果は、研磨の条件や、配線の設計(密度をそろえるなど)に戻します。不良を見つけるだけでなく、原因の工程へ戻して、直すことが大切です。

この講までで、平坦化と配線の工程の、全体像を学びました。平らにする(第1講)、研磨する(第2講)、銅を埋める(第3講)、絶縁膜を選ぶ(第4講)、不良を防ぐ(第5講)が、1つの流れになっています。

確認クイズ:配線の断線やショートを調べるのは、形を測る検査と、電気を測る検査のどちらが向いていますか?

答え:電気を測る検査です(抵抗を測って、断線や短絡を調べます)。

安全のひとこと:研磨液や洗浄に使う薬品は、種類によって危険なものがあります。検査装置や、高温の試験でも同様です。取り扱いは、必ず職場の決まりとSDS(安全データシート)に従います。

この講のまとめ

この講のポイント

研磨では、広い銅配線が凹むディッシング、密な所の絶縁膜が減るエロージョン、傷や残りかすが起きます。
埋め込みではボイドができ、使っているうちに、電流で原子が動くエレクトロマイグレーションで、断線や短絡が起きます。
形を測る検査と電気を測る検査で不良を見つけ、研磨条件や設計に戻して減らします。

これで、平坦化(CMP)・配線3級の5講は終わりです。2級では、研磨の条件や、配線の信頼性を、式を使って、さらにくわしく学びます。

ことばのおさらい

  • ディッシング:広い銅配線の中央が、凹んで削れる不良です。
  • エロージョン:配線が密な所で、絶縁膜が削れて低くなる不良です。
  • スロッティング:広い配線に絶縁膜の島を入れて、銅の密度を下げる方法です。
  • ダミーフィル:配線のない所に、電気的につながらない銅の島を足す方法です。
  • スクラッチ:研磨でつく、細い傷です。
  • ボイド:配線や埋め込みの中にできる空洞です。
  • エレクトロマイグレーション:電流で、金属の原子が動いて、配線が壊れる現象です。
  • ヒロック:原子がたまってできる、配線の盛り上がりです。

よくある誤解

Q. 研磨すれば、どんな配線の形でも、同じように平らになりますか?

いいえ。配線が広い所や密な所では、ディッシングやエロージョンが起きます。そのため、配線の密度をそろえる工夫をします。

Q. 銅は、エレクトロマイグレーションが起きないのですか?

いいえ。アルミより強いだけで、細くなって電流密度が上がると、問題になります。

参考にした公式情報

300nmと50nmの凹み、電流密度2倍などの数値は、理解のために置いた仮の値です。スクラッチの原因と、傷・残りかす・シード層の切れ目の説明、外観検査は、一般的な知識にもとづく目安です。図は、記事用に描いた簡易の図です。MITの資料は、要旨と導入部のみを読みました。

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