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露光とは?半導体の回路をウェハに写すフォトリソグラフィの役割をわかりやすく解説【露光3級・第1講】

露光とは?半導体の回路をウェハに写すフォトリソグラフィの役割をわかりやすく解説【露光3級・第1講】 お知らせ
SEMICON CAMPUS 無料講座露光コース3級 入門 ・ 第1講
露光:マスクの形を、光でレジスト(感光する膜)に写す光マスク(白い所が光の通り道。黒い所は光を止める)レジストウェハ光が当たった所(黄色)だけ、レジストの性質が変わる
光は上から下へ進みます。マスクの白い所を通った光だけが、レジストに届きます。

今回のテーマは、

「半導体の回路の細かい形は、どうやってウェハの上につくるのか」

答え:光で形を写し取ります(露光)。マスク(回路の形が描かれた原版)の形を、レジストという感光する膜に光で写し、その形を型にして下の層を加工します。この1サイクルを、ウェハ1枚に何度もくり返します。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 回路は層の重なり
  • ② 露光の1サイクル(7手順)
  • ③ マスク(原版)
  • ④ 光の利点とポジ型・ネガ型
  • ⑤ どれだけ細かく写せるか

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① 回路は、形の違う層を重ねてつくる

大事なポイント:半導体の回路は、形の違う層を重ねてできていて、各層の「形」をつくる工程が露光です。

半導体チップは、ウェハ(シリコンでできた、薄い円盤)の上につくります。ウェハの上にトランジスタや配線をつくるには、まず、膜を付けます。次に、いらない部分を削ったり(エッチング)、不純物を打ち込んだり(イオン注入)して、形をつくります。このとき、「どこを削るか、どこを守るか」を決める型が必要です。その型を、光でつくる工程が、露光(フォトリソグラフィ、略してリソグラフィ)です。

先ほど出てきた2つの用語について、説明します。まず、エッチングは、薬品やガスで、むき出しの部分を削る工程です。次に、イオン注入は、不純物の原子を加速して、ウェハに打ち込む工程です。どちらも、レジストで覆われた部分には届きません。このため、レジストは、下の層を守る壁の役目をします。

ウェハ(土台)第1層:素子の下ごしらえ第2層:トランジスタ第3層:つなぐ穴第4層:配線重ねる向き(層の数や中身は、わかりやすくした例です。実際はもっと多くの層になります)
回路は、ウェハの上に、形のちがう層を下から順に重ねてつくります。

回路は、1回で完成しません。形の違う層を、下から順に重ねます。そのたびに、型をつくり直します。複雑なICでは、露光を含む1サイクルを、最大で50回ほどくり返すことがあるとされます。このように、露光は、チップづくりの中で何度も登場する、中心的な工程です。

たとえば、建物をつくるとき、階ごとに、間取りの図面が必要になります。ウェハの上でも、層ごとに図面(型)が必要で、露光は、その図面を、層ごとにウェハへ写す作業にあたります。

層を重ねるとき、上の層は下の層と、ぴったり位置を合わせる必要があります。 ▶ 2級でくわしく

確認クイズ:露光(リソグラフィ)は、何のための工程でしょう?

答え:削る場所や守る場所を決める「型」を、光でつくるための工程です。

くわしく見る:1サイクルあたりの手順数を、数で見る

次の節で見る手順は7つです。50サイクルをくり返すとすると、手順の数は次のとおりです。

7 × 50 = 350(回)

この数は、あくまで目安です。実際の手順の数は、工程や層によって変わります。それでも、同じような手順を何百回も重ねることで、1枚のウェハの回路ができあがると考えられます。

② 露光の1サイクルは、7つの手順

大事なポイント:露光は単独の作業ではなく、前処理から除去までの一連の流れの、真ん中にあります。

露光の1サイクルは、次の順に進みます。

  1. 前処理:ウェハを洗い、水分を飛ばして、レジストがつきやすい状態にします。
  2. レジスト塗布:光で性質が変わる膜(フォトレジスト、略してレジスト)を、ウェハ全面に薄く塗ります。
  3. ベーク:熱で、膜を安定させます。
  4. 露光:マスクを通した光を、レジストに当てます。
  5. 現像:液体(現像液)で、溶ける所を洗い流し、形を浮かび上がらせます。
  6. エッチングかイオン注入:残ったレジストを型にして、下の層を削ったり、不純物を入れたりします。
  7. レジスト除去:役目を終えたレジストを、薬液や酸素のプラズマで取り除きます。
露光を含む1サイクルの流れ(左から右へ)1前処理2レジスト塗布3ベーク4露光5現像6エッチングか注入7レジスト除去光を使うのは、4番の「露光」だけです(黄色)露光の前後にベーク(加熱)が入ることがあります(第3講)
番号は手順の順です。矢印の向きに進みます。

6のエッチングやイオン注入は、別のコースで学びます。このコースでは、1〜5を中心に、5回の講で順に学びます。

ここで大切なのは、露光が単独の作業ではないことです。レジストの塗り方が不十分だと、どれだけ良い光を当てても、形はきれいに写りません。逆に、露光が上手でも、現像が不十分だと、形が崩れます。各手順は、前後の手順に支えられています。

確認クイズ:エッチングやイオン注入の直前にある手順は、何でしょう?

答え:現像です(レジストの形を浮かび上がらせてから、削ったり注入したりします)。

くわしく見る:手順の順番を入れ替えると、どうなるか

たとえば、現像の前にエッチングをしたらどうなるでしょう。レジストには、まだ形が浮かび上がっていません。守る所と削る所が決まっていないので、狙った形になりません。このように、手順の順番には、それぞれ理由があります。

この手順は、一般的な流れを示したものです。実際には、露光の後に加熱する「露光後ベーク」が入るなど、ふえることがあります(第3講で学びます)。

③ マスクは、光を通す所と止める所を決める原版

大事なポイント:マスクは、回路の形が描かれた透明な板です。通った光だけが、ウェハに届きます。

マスクは、写真でいうフィルムのような、形の原版です。つくりは、透明な石英ガラスの板の上に、クロムなどの光を止める膜で形を描いたものです。膜のある所では光が止まり、ない所では光が通ります。半導体の工場では、マスクをレチクルと呼ぶこともあります。

マスク(断面)と光石英板クロム膜×××××光が通る光が通る止まる止まるクロム膜がある所では光が止まり、ない所では光が通ります
光は上から下へ進みます。×は止められた光です。

マスクの形は、そのままの大きさではウェハに写しません。多くの装置は、レンズで4〜5倍に縮めて投影します。たとえば、マスク上の100nmの形は、ウェハ上では25nmになります。nm(ナノメートル)は、1mの10億分の1の長さです。縮めて写すので、マスクの形は、実際のチップより大きく描けて、つくりやすくなります(この理由は、一般的な説明です)。

マスクの形は、ウェハ上のすべてのチップに写ります。マスクにゴミや傷があると、その欠けた形が、すべてのチップに写ってしまいます。そのため、マスクは、きれいに保つ必要があります(一般的な説明です)。また、マスクは、層ごとに別のものを使います。第1層には第1層用のマスク、第2層には第2層用のマスク、という具合です。

確認クイズ:縮小比が4倍のとき、マスク上の100nmの形は、ウェハ上で何nmになるでしょう?

答え:25nmです(100 ÷ 4 = 25)。

くわしく見る:縮小比から、長さと面積を計算する

ウェハ上の長さは、マスク上の長さを縮小比で割って求めます。

ウェハ上の長さ = マスク上の長さ ÷ 縮小比

逆に、ウェハ上に16nmの線をつくりたいときは、マスク上では 16 × 4 = 64nm の線が必要です。

面積で考えます。マスク上で100mm四方の領域は、4倍縮小でウェハ上では25mm四方になります。面積は、10,000mm² から 625mm² になり、625 ÷ 10,000 = 1/16 です。長さが1/4になると、面積は1/16になります。

縮小比が4倍か5倍かは、装置によって異なります。ここでは4倍の例で計算しました。

④ 光で写す利点と、ポジ型・ネガ型

大事なポイント:光を使うと、ウェハ全面の形を一度に写せます。レジストには、ポジ型とネガ型があります。

光を使った露光の利点は、ウェハ全面にまたがる形を、1つのステップで写せることです。1つずつ線を描くのではなく、マスクを通した光で、まとめて写します。ただし、実際の装置は、1回に写せる範囲を、ウェハの上で順にずらしながら露光するのが一般的です(一般的な説明です)。 ▶ 2級でくわしく

次に、レジストの種類です。光が当たった所の変わり方で、2つに分かれます。

  • ポジ型:光が当たった所が、現像液に溶けるようになります。現像後は、光が当たらなかった所が残ります。最も一般的な種類とされます。
  • ネガ型:光が当たった所が、現像液に溶けなくなります。現像後は、光が当たった所が残ります。
ポジ型① 露光② 現像光が当たった所が溶けて消えるネガ型① 露光② 現像光が当たった所だけが残る
どちらも、黄色の所に光を当てています。現像で溶けて消える所が、逆になります。

同じマスクを使っても、ポジ型とネガ型では、残る形が逆になります。写真の「ポジ(ふつうの写真)」と「ネガ(フィルム)」に近い関係です。レジストの中身は、第2講で説明します。

ポジ型とネガ型のどちらを使っても、露光の流れは同じです。違いは、現像で、どの部分が溶けるかだけです。どちらを選ぶかは、つくりたい形や、レジストの性質で決まります。

確認クイズ:ポジ型のレジストで、光が当たった部分は、現像後にどうなるでしょう?

答え:現像液に溶けて、なくなります。

くわしく見る:一つずつ描く場合との手間のちがい(仮の数字)

仮に、素子1億個を、1個ずつ描くとします。1個に1ミリ秒(1/1000秒)かかるとすると、

108 × 10−3 秒 = 105 秒 ≈ 27.8 時間(105 ÷ 3,600)

です。光でまとめて写せば、この時間を大きく減らせます。ただし、これは考え方を示すための仮の数字です。実際の装置の速さや、描画方式の速さを表したものではありません。

⑤ 露光の腕の見せどころは、どれだけ細かく写せるか

大事なポイント:光の波長を短くすると、細かい形を写しやすくなります。露光の歴史は、波長を短くしてきた歴史です。

回路を細かくしたいと思ったら、露光では、まず光の波長を見直してきました。波長は、光の波の、山から山までの長さです。ふつう、nmで表します。これまでに、次の光が使われてきました。

  • 水銀ランプの光:g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)。g、h、iは、水銀ランプの光の線につけられた名前です。
  • エキシマレーザーの光:KrF(248nm)、ArF(193nm)。紫外線を出すレーザーの一種で、KrFとArFは、中に入れるガスの組み合わせの名前です(この説明は一般的なものです)。
  • EUV(極端紫外光):13.5nm
露光に使われてきた光の波長(棒の長さは波長に比例)g線436 nmi線365 nmKrF248 nmArF193 nmEUV13.5 nm波長が短いほど、細かい形を写しやすくなります(くわしくは第4講)
EUVの波長13.5nmは、g線436nmの約32分の1です。

波長が短いほど、細かい形を写しやすくなります。ただし、波長だけで決まるわけではありません。レンズの性能や、レジストの性質にも左右されます。これらは第4講以降で、順に学びます。第2講から第3講でレジストとその前後の手順、第4講で光学系、第5講でEUVを扱います。

写真のピントが合っていないと、細かい文字は読めません。露光でも、光が広がってぼやけると、細かい形は写せません。波長を短くすると、ぼやけの原因になる光の広がりを、小さくできます(くわしい理由は第4講で学びます)。なお、g線は紫に近い、目に見える光ですが、i線以降は、人の目には見えない紫外線の仲間です(一般的な説明です)。

確認クイズ:次の光のうち、波長が最も短いものはどれでしょう?(g線、KrF、ArF、EUV)

答え:EUV(13.5nm)です。

くわしく見る:波長の差を、倍率で見る

g線(436nm)とEUV(13.5nm)を比べます。

436 ÷ 13.5 ≈ 32.3(倍)

g線の波長は、EUVの約32倍です。ArF(193nm)とEUVでは、

193 ÷ 13.5 ≈ 14.3(倍)

です。この倍率は、波長の比です。写せる最小の大きさが、そのまま同じ倍率になるわけではありません(第4講で学びます)。

この講のまとめ

この講のポイント

露光は、マスクの形を光でレジストに写し、削る場所や守る場所の「型」をつくる工程です。
1サイクルは、前処理、塗布、ベーク、露光、現像、エッチングか注入、除去の流れで、ウェハ1枚に何度もくり返します。
光の波長を短くするほど、細かい形を写しやすく、歴史的にg線からEUVへと短くしてきました。

次の講では、型の材料である「フォトレジスト」が、光でどのように変わるのかを学びます。

ことばのおさらい

  • ウェハ:シリコンなどでできた、薄い円盤です。この上に回路をつくります。
  • 露光(リソグラフィ):マスクを通した光で、形をレジストに写す工程です。
  • フォトレジスト(レジスト):光で、現像液への溶けやすさが変わる膜です。
  • 現像:液体で、溶ける部分を洗い流し、形を浮かび上がらせる手順です。
  • マスク(レチクル):回路の形が描かれた、透明な板の原版です。
  • 波長:光の波の、山から山までの長さです。nmで表します。

よくある誤解

Q. 露光は、ウェハに回路をそのまま描く工程ですか?

いいえ。露光でつくるのは、エッチングやイオン注入のための「型」(レジストの形)です。回路そのものは、そのあとの工程でできます。

Q. マスクの形は、ウェハ上で同じ大きさになりますか?

いいえ。多くの装置は、4〜5倍に縮めて写します。マスク上の形は、ウェハ上より大きく描かれています。

参考にした公式情報

縮小比4倍の例、nmの説明、層の図、手順の7つへの整理は、一般的な知識や、記事用に描いた簡易の図です(「縮めるとつくりやすい」という理由も一般的な説明です)。実際の手順や層の数は、工程によって異なります。

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