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多層配線とlow-k(低誘電率膜)とは?RC遅延と層間絶縁膜をわかりやすく解説【平坦化・配線3級・第4講】

SEMICON CAMPUS 無料講座平坦化(CMP)・配線コース3級 入門 ・ 第4講
トランジスタなどの部品(ウェハ)上の層:太く長い配線(電源やクロックなど)下の層:細く短い配線(近くの部品どうし)茶色:ビア(上下の層をつなぐ縦の接続)青灰:層間絶縁膜(配線のあいだを埋める膜)
橙が配線、茶色がビア、青灰が層間絶縁膜です。下の層は細く短い配線、上の層は太く長い配線を使います。ビアが上下の層をつなぎます。(簡易の模式図)

今回のテーマは、

「配線と配線のあいだの絶縁膜は、なぜ大事で、信号の遅れとどう関係するのか」

答え:絶縁膜が、配線どうしの間にたまる電気の量(容量)を決め、配線の抵抗との積で、信号の遅れが決まるからです。そのため、電気をためにくい(誘電率が低い)絶縁膜が使われます。

黄色のマーカー = この講座のテストに出す重要ポイント

この記事でわかること

  • ① 多層配線とビア
  • ② 層間絶縁膜の役目
  • ③ 信号が遅れる理由
  • ④ 誘電率の低い絶縁膜
  • ⑤ その弱点と、空気のすき間

※各節の「くわしく見る」は、計算で確かめたい人向けです。

① 多層配線とビア:配線は何層にも重なる

大事なポイント:回路の配線は、何層にも重ねてつくります。層と層のあいだは絶縁膜で分け、ビアという縦の接続でつなぎます。

現在の回路は、1層の配線だけでは足りません。そのため、配線を何層にも重ねる多層配線が使われます。参考にした資料では、複雑な回路では15層を超えるものもあると書かれています(2018年時点)。

層は、役目で使い分けられます。資料には、上の層ほど太くて幅が広く、抵抗が小さいため、電源や、回路全体のタイミングをそろえる信号(クロック)に使われ、下の層は細くて密で、近くの部品どうしをつなぐのに使われる、と説明されています。

各層のあいだは、層間絶縁膜という絶縁膜で分けられています。そして、上下の層の配線をつなぐのが、第3講で学んだビアです。

層を増やすと、回路の性能は上げられますが、資料には、歩留まり(良品の割合)が下がり、費用が増えるとも書かれています。そのため、配線の層数は、性能と費用のかね合いで決まります。

確認クイズ:上下の層の配線をつなぐ、縦の接続を何といいますか?

答え:ビアです。

② 層間絶縁膜の役目:配線どうしを離し、土台になる

大事なポイント:層間絶縁膜は、配線どうしを電気的に離し、次の層の土台になります。代表的な材料は、酸化ケイ素です。

層間絶縁膜には、2つの役目があります。1つめは、隣り合う配線や、上下の層の配線を、電気的に離すことです。離さないと、別々の信号が混ざって、回路が動きません。2つめは、配線を埋めて、次の層をのせる土台になることです。ここでCMPを使うと、表面が平らになり、次の層をきれいに重ねられます(第1講)。

代表的な材料は、酸化ケイ素(SiO₂)です。絶縁膜の性質は、比誘電率(記号はk、κ)で表されます。これは、その材料が、電気をためやすい度合いを、真空を1としたときの比で表した数です。資料では、酸化ケイ素のkは3.9とされています。kが小さい材料ほど、電気をためにくい絶縁膜です。

電気をためにくいことが、なぜ大事なのかは、次の節で説明します。

確認クイズ:酸化ケイ素の比誘電率kは、本文ではいくつとされていますか?

答え:3.9です。

③ RC遅延:配線が細くなると、信号が遅れる

大事なポイント:信号の速さは、配線の抵抗(R)と、配線のあいだの容量(C)の積で遅くなります。細かい回路ほど、この遅れが目立ちます。

抵抗R:配線の電気の通りにくさ(細く長いほど大きい)絶縁膜C容量C:配線のあいだに、電気がたまる量(間の絶縁膜の誘電率が小さいほど、小さい)信号の遅れ(RC遅延)の目安R × CRもCも小さいほど速い
上の配線の抵抗Rと、配線のあいだの容量Cの積が、信号の遅れの目安になります。(簡易の模式図)

配線に信号(電気の変化)を流すとき、2つのものが速さを決めます。1つは抵抗(R)です。配線が細く長いほど、電気が通りにくくなります。もう1つは容量(C)です。配線と、隣の配線や上下の配線のあいだには、絶縁膜をはさんで電気がたまります。信号を変えるたびに、この電気を出し入れする必要があり、たまる量が大きいほど、時間がかかります。

水の流れにたとえると、細くて長い管(抵抗が大きい)と、大きなタンク(容量が大きい)をつなぐと、水が満ちるまでに時間がかかります。この遅れをRC遅延といい、遅れの目安は、R × C に比例します。

回路が細かくなると、配線は細く(Rが大きく)、隣との間隔は狭く(Cが大きく)なります。資料では、2005年ごろ、プロセッサの動作が約3GHzに達して、この遅れが速さを決める最大の制約になり、Rを下げる銅と、Cを下げる低誘電率の絶縁膜に変わった、と説明されています。抵抗を下げる銅と、容量を下げる絶縁膜は、セットで使われます。

確認クイズ:RC遅延は、何と何の積に比例しますか?

答え:配線の抵抗(R)と、配線のあいだの容量(C)の積です。

くわしく見る:RC遅延を、数字で比べる(目安の計算)

他の条件が同じなら、容量Cは比誘電率kに比例するとします(一般的な目安です)。kが3.9から3.0に下がると、

C は 3.0 ÷ 3.9 ≒ 0.77 倍(約23%減)

になり、Rが同じなら、RC遅延も約0.77倍です。さらに、銅にしてRが0.8倍になり、Cが0.75倍になったと仮定すると(仮の値です)、

0.8 × 0.75 = 0.6 倍

です。一方、配線が細くなる側の効果も見てみます。厚さが同じで、幅が半分になると、断面積が半分になり、Rは2倍です。間隔が半分になると、Cはおよそ2倍になるため、RC遅延は約4倍になります(長さは同じとした、理想化した目安です)。

▶ 2級でくわしく:RC遅延の式と、配線の微細化による変化。

④ 誘電率の低い絶縁膜(low-k):電気をためにくくする

大事なポイント:酸化ケイ素より比誘電率が低い絶縁膜をlow-k(ロウ・ケイ)といいます。炭素を混ぜたり、空孔をつくったりして、kを下げます。

比誘電率kの目安(小さいほど、電気をためにくい)酸化ケイ素(SiO₂)3.9フッ素を混ぜた酸化ケイ素3.5炭素を混ぜた酸化ケイ素3.0多孔質(空孔が多い)2.0未満の報告空気約1.0
棒が長いほど、比誘電率が大きい(電気をためやすい)ことを表します。数値は、参考にした資料の記述にもとづく一例です。多孔質は、2.0より低い値が報告されている、という記述です。

酸化ケイ素(k=3.9)より、kが小さい絶縁膜を、low-k膜といいます。参考にした資料には、次のような例が書かれています。

  • フッ素を混ぜた酸化ケイ素:kは3.5。比較的早い世代(180nm、130nm世代)で使われました。
  • 炭素を混ぜた酸化ケイ素(有機ケイ酸ガラス):kは3.0。90nm世代から使われています。
  • 多孔質(空孔の多い)の膜:空孔の中は空気に近いため、空孔を増やすほど、kが下がります。2.0より低い値も報告されています。

多孔質の膜は、2段階でつくる方法があります。まず、あとで取り除く成分(ポロジェン)を混ぜて膜を付け、紫外線の照射や、最大400℃ほどの加熱で、その成分を抜いて、空孔をつくります(45nm世代から使われています)。そして、空気のkは約1.0で、最も低い材料です。kを下げる最後の手段は、材料の中に空気を入れることです。

確認クイズ:多孔質の絶縁膜のkが低くなるのは、なぜですか?

答え:膜の中に空孔があり、空孔の中は空気に近い(kが約1.0)ため、空孔が多いほど膜全体のkが下がります。

⑤ low-kの弱点:もろさと、エアギャップ

大事なポイント:kを下げるために空孔を増やすと、膜は弱くなります。そのため、研磨や加工で壊れないようにする工夫が必要です。

low-kには弱点があります。参考にした資料では、多孔質の酸化ケイ素は機械的な強度が低く、エッチングや研磨の工程との組み合わせが難しいと書かれています。強度が低い膜に、研磨のような機械的な力が加わると、割れたり、層の境目ではがれたりするおそれがあります。実際、資料にも、CMPの不良として、割れとはがれが挙げられています。

また、配線の資料では、強度の低いlow-k膜は、配線が密で支えになる、いちばん下の層に使われることが多い、と書かれています。low-kは、kの低さと、強さの両立が課題です。

さらに進んだ方法として、配線のあいだに、膜の代わりに空気のすき間(エアギャップ)をつくる方法があります。資料によれば、2014年に、14nm世代の量産で、一部の配線層にエアギャップが使われました。ただし、機械的な安定性が落ちるため、使う場所を限る必要があります。

この講では、「配線を細かくして、速く動かすために、材料が変わってきた」流れを学びました。次の講では、その研磨や配線で起きる不良を学びます。

確認クイズ:kを下げるために空孔を増やすと、絶縁膜のどんな点が心配になりますか?

答え:強度が下がり、割れやはがれが起きやすくなる点です。

この講のまとめ

この講のポイント

配線は何層にも重ねてつくり、層のあいだを層間絶縁膜で分けて、ビアで上下をつなぎます。
信号の遅れ(RC遅延)は、配線の抵抗Rと、配線のあいだの容量Cの積が目安です。
Cを下げるために、kの低いlow-k膜が使われますが、空孔を増やすと弱くなるため、強度との両立が課題です。

次の講では、研磨や配線で起きる不良(ディッシング、エロージョン、傷、ボイド、エレクトロマイグレーション)と、その検査を学びます。

ことばのおさらい

  • 多層配線:配線を何層にも重ねた構造です。
  • 層間絶縁膜:層と層のあいだ、配線どうしを分ける絶縁膜です。
  • 比誘電率(k):電気をためやすい度合いを、真空を1とした比で表した数です。
  • 抵抗(R):電気の通りにくさです。
  • 容量(C):配線どうしのあいだに、電気がたまる量です。
  • RC遅延:R × C に比例する、信号の遅れです。
  • low-k:酸化ケイ素よりkが小さい絶縁膜です。
  • エアギャップ:配線のあいだに、膜の代わりにつくる空気のすき間です。

よくある誤解

Q. kが小さい絶縁膜は、電気を通しやすいのですか?

いいえ。kは、電気をためやすい度合いで、小さいほど、ためにくい絶縁膜です。電気を通さない(絶縁)性質とは別の話です。

Q. kは、小さければ小さいほど良いのですか?

電気の面では良いですが、空孔が増えると膜が弱くなり、割れやはがれが心配になります。

参考にした公式情報

容量が比誘電率に比例する式、R・Cのスケーリング(幅が半分で2倍など)、水の流れのたとえは、一般的な知識にもとづく目安です(0.8倍、0.75倍は仮の値)。図は、記事用に描いた簡易の図です。

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