Semicon Campus半導体を、知るところから。
メニュー
企業の方へ

NuvotonのEIS内蔵IC、26セル電池の劣化診断を身近に

半導体ニュース

ヌヴォトンが発表した26セル対応EIS内蔵バッテリ監視ICを解説。EISの仕組み、発表の意義、限界、2027年1月のサンプル提供で注目すべき点を整理します。

このページの案内詳しい解説へ次に読む記事と、その理由へ

ヌヴォトン テクノロジージャパンは2026年9月29日、EIS機能を内蔵した第6世代バッテリ監視IC「KA85010UA」を発表しました。最大26セルの電池に対応し、セル電圧・電流・温度の測定に加えて、電池内部の状態を調べるEIS測定を1チップに統合した製品です。同社は2027年1月からサンプル提供を始める計画を示しています。ここでいうサンプルは評価用の提供予定であり、量産出荷や一般販売、車両・蓄電システムへの採用開始を意味しません。ヌヴォトン公式発表、日本語発表

何が発表されたのか

KA85010UAの主な特徴は、電池を構成する最大26個のセルを監視しながら、EIS(電気化学インピーダンス分光)による測定も行えることです。一般的なバッテリ監視では、セルごとの電圧、流れる電流、表面付近の温度などを確認します。これらは重要な情報ですが、電池の内部で進んでいる反応や劣化を直接すべて見られるわけではありません。

同社の日本語発表には、電圧測定精度として±2.0mV(EOL)、ISO 26262 ASIL-D対応、AEC-Q100対応なども記載されています。ただし、これらは企業発表に基づく仕様・対応表明であり、独立した第三者による量産品評価や、実際の車両・蓄電所での安全効果を示すデータとは区別して見る必要があります。発表された製品情報

EISとはどのような技術か

EISは、電池に小さな交流成分を加え、そのときの電圧と電流の応答からインピーダンスを求める測定方法です。インピーダンスは、直流でいう抵抗に似た概念ですが、交流の周波数によって変化します。電池の端子や配線、電解液、電極、内部の反応や拡散は、それぞれ異なる周波数の応答に現れるため、周波数ごとの変化を調べると、単純な電圧測定だけでは分かりにくい状態変化を分析できる可能性があります。ヌヴォトンによるEISの説明

もう一つ重要な用語がSOH(State of Health)です。これは電池が新品時と比べてどの程度の健康状態、つまり利用可能な容量や性能を保っているかを表す指標です。EISのデータを温度や充電状態などと組み合わせれば、SOHの推定や異常兆候の検知に使える可能性があります。ただし、EISの波形を取得できることと、劣化度合いや危険状態を正確に判定できることは同じではありません。

なぜ今、電池監視にEISなのか

電気自動車や大規模蓄電システムでは、多数のセルを安全に管理する必要があります。電圧や温度の急な変化を検知してから対応する方法だけでは、異常の初期段階や、静止しているときの状態を十分に把握できない場合があります。米国運輸省NHTSAが掲載するSandia National Laboratoriesの技術報告書は、電圧・温度だけの監視には熱暴走前の変化を予測するうえで限界があり、急速EISを安定性や故障初期兆候の評価に利用する可能性を検討しています。NHTSA掲載の技術報告書

一方、従来のEISには課題もあります。幅広い周波数を順番に測るフルスペクトル測定は時間がかかり、単一周波数だけを測ると得られる情報が限られます。高速化した方式でも、専用の測定回路や複雑な解析が必要になることがあります。今回の製品は、こうしたEISを研究室の計測器だけでなく、バッテリ監視システムに組み込みやすくする方向の製品化と解釈できます。ただし、これは技術の可能性を示すものであり、すべての電池で診断性能が確認されたという意味ではありません。技術報告書の背景説明

発熱を抑える回路がポイント

ヌヴォトンは、EIS測定時の交流電流を作る方法として、従来の抵抗方式ではなく独自のインダクタ方式を採用したと説明しています。抵抗方式では電流を抵抗に流すため、電力の一部が熱として失われます。インダクタ方式では、FETで電流の向きを制御し、コイルに蓄えたエネルギーを交流電流として循環させることで、損失を抑える考え方です。

同社の評価では、従来の抵抗方式と比べ、EIS測定時の電力損失と基板温度上昇を約93%低減したとしています。ただし、この数値は同社が示した特定条件での比較結果です。発表では、電力損失と温度上昇で異なる電池電圧や重畳電流の条件が示されており、あらゆる電池、温度、負荷、基板設計に同じ割合で当てはまるとは確認できません。インダクタ方式と評価結果

電池診断ICから、電気とデータの基礎へ

EIS内蔵ICの役割を理解したら、測る量、測定条件、温度、判定範囲を表にします。部品の機能だけで電池全体の安全性や寿命を決めず、評価の条件を確かめましょう。電気・計測の学び直しと、公開サンプルを表計算やPythonで整理する技能学習を選べます。自分で電池を分解せず、公開データの練習から始めます。教材は専用の安全教育や診断結果の確定を代替するものではありません。

研究から製品化へ進む流れ

ヌヴォトンは2025年12月、産業技術総合研究所との共同研究について、異なる充電状態や温度条件で取得したEISデータを等価回路モデルに適合し、電池内部温度を推定するアルゴリズムを構築・検証したと発表しました。等価回路モデルとは、電池内部の複雑な電気化学現象を、抵抗や容量などの電気部品に置き換えて近似する考え方です。ヌヴォトンと産総研の共同研究発表

この研究と今回のIC発表をつなげると、測定回路だけでなく、取得したデータをモデルやアルゴリズムで解釈し、実際のアプリケーションに組み込む流れが見えてきます。同社は専用EIS測定器やIEC 62620の1kHz交流内部抵抗測定との比較を、特定条件下で行い、高い整合性を確認したと説明しています。しかし、測定値の整合性は、実際のシステムで異常を高い精度で見つけられることや、事故を防げることを直接証明するものではありません。

限界とこれから注目する点

今回の発表だけでは、具体的な異常検出率、誤警報率、SOH推定誤差、内部温度推定誤差、寿命予測誤差、測定に必要な時間、対象となる電池化学系は確認できません。EISの診断結果は、セルの設計、温度、充電状態、ノイズ、基準データ、解析モデル、判定しきい値によって変わる可能性があります。安全機能として使うには、IC単体の性能だけでなく、データ収集から警告・停止制御までを含むシステム検証が必要です。

今後は、2027年1月に予定されるサンプル提供が実際に始まるか、評価キットや詳細な測定条件が公開されるかを確認したいところです。さらに、量産出荷の時期、顧客による採用、実車やESSでの長期評価、異なる電池材料への対応、診断アルゴリズムの精度が公表されるかが重要になります。現時点で言えるのは、EISを26セル対応のバッテリ監視ICに組み込む計画が発表されたことまでです。研究技術を現場へ近づける一歩ですが、量産・実用効果が完成したというニュースではありません。

理解した内容から、次の学習と比較へ

測定条件と公開サンプルデータの整理を、対象・条件・出典の三つで整理しましょう。関連する基礎記事、学習の入口、PCの要件を目的別に確認すると、無料で試せる範囲と有料の選択肢を分けて検討できます。

出典

次に読む

関連技術を記事一覧から探す

この話題に近い技術解説を記事一覧から選べます。

無料・登録不要

この案内の確認日: / 記事の事実確認日とは別に、関連導線を確認しています。

タイトルとURLをコピーしました