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半導体の線幅(CD)ばらつき・LER/LWRの原因とCD制御

検査・計測・歩留まり
学習レベル★☆☆☆☆初級

ステンシルシートの穴にスプレーを吹きつけて、文字を書いたことはありませんか。穴の太さは決まっているのに、できあがった文字は、少し太くなったり、縁がにじんだりします。

半導体の回路の線でも、似たことが起こります。設計どおりの太さで作ったはずなのに、できあがった線を測ると、少し太い。あるいは、少し細い。

先に答えを言うと、線の太さは、一つの工程だけで決まるわけではありません。光で形を写す、削る、測る。この途中で、少しずつ変わります。どこで変わったのかは、測って確かめないと分かりません。

ステンシルの例が合っているのは、「型どおりの太さにならないことがある」という点だけです。スプレーの仕組みと、半導体の工程の仕組みは、別のものです。

この記事でわかること

  1. この記事の目的:線の太さが、作る途中でどう変わるかと、測った数字の受け取り方を、つかむこと
  2. 「線幅」と「CD」という言葉の意味
  3. 線の太さが、作る途中で変わる理由
  4. 測った数字を、どう受け取ればよいか
設計、レジスト、エッチング後で、線の太さが変わりうることを示す概念図
線の太さが工程の途中で変わりうることを表した模式図。太さは説明用の例で、実測値ではありません。
図の要点

  • 設計:決めた線の太さ
  • レジスト:光で形を写した後
  • エッチ後:削った後。この二つの時点で測る
助手

博士、線の太さがずれるって、設計図が間違っていたということですか?

博士

そうとは限らんのじゃ。線は、光で形を写して、削って、最後に測る。その途中で、少しずつ太さが変わることがあるんじゃよ。

助手

なるほど。じゃあ、どこで変わったのかを見つけるのが大事なんですね。

博士

その通りじゃ。測った数字も、ある方法で見た結果にすぎん。順番に、やさしく見ていこう。

線幅(CD)とは、線の太さのこと

半導体の回路は、ウェハと呼ぶ薄い円盤の上に、とても細い線で作ります。この線の太さを「線幅」と呼びます。工場では、大切な寸法をまとめて「CD(シーディー)」とも呼びます。

CDは、「ウェハの上で、確実に作れて、確実に測れる、いちばん小さい寸法」のことだと、Averroesの解説は説明しています。線の太さのほかに、線と線のすき間や、穴の直径もCDに入ります。この記事では、まとめて「線の太さ」と書きます。

むずかしい言葉が出てきたら、「線の太さの話だな」と読み替えてください。それで十分に、この記事の中身がつかめます。

光で写して、削って、測る。太さは途中で変わる

回路の線は、次の順番で作ります。まず、レジストという、光に反応する膜に、光で線の形を写します。次に、エッチングという方法で、下の膜を削って、形を移します。この流れを「パターン転写」と呼びます。

形を移すたびに、線の太さは少しずつ変わることがあります。PTIの用語集は、エッチングで変わった寸法を「エッチングバイアス」と呼び、削る前のCDと、削ったあとのCDの差で表す、と説明しています。同じ資料は、数字で伝えるときには、「太くなったらプラスか、細くなったらプラスか」といった決まりを、はっきり書く必要があるとも述べています。

つまり、「ずれた」と言うだけでは、情報が足りません。いつの時点と比べて、どちら向きに、どれだけ変わったのかを、はっきりさせる必要があります。

削り方で、壁の形が変わる

削る方法は、大きく二つあります。一つは、薬液で溶かす方法です。ふつう、どの向きにも同じように削れるので、横にも削れてしまいます。これを「等方的」と呼びます。

もう一つは、プラズマという、電気を帯びた気体の中で削る方法です。ケンタッキー大学の設備紹介によると、この方法では、イオンという小さな粒が、ほぼ真上からウェハに当たります。そのため、壁が垂直に近い形に削れます。これを「異方性」と呼びます。

イオンがほぼ垂直に当たる加工と、横にも削れる加工の断面の違いを示す概念図
イオンがほぼ垂直に当たる加工と、等方的な加工の壁の形の違いを表した模式図。実際の形や寸法を示すものではありません。
図の要点

  • 左:イオンがほぼ垂直に当たり、壁が垂直に近い
  • 右:横にも削れる等方的な加工

圧力、電気の強さ、ガスなど、形を決める条件はいくつもあります。どれかが変われば、プラズマの状態も変わると考えられます。ただし、条件が少し変わると線の太さが何nm変わる、という関係は、この資料からは言えません。装置や、削る膜によって違うからです。

溝の幅や、削る場所でも、掘れ方が変わる

削る速さは、場所によって同じとは限りません。Samcoの解説は、シリコンを削る場合、溝が狭いほど、底まで届く「反応する粒」が減って、削る速さが遅くなる、と説明しています。これを「マイクロローディング」と呼びます。

狭い溝は底に届く反応種が少なく、掘れる速さが下がる様子を示す概念図
溝の幅によって底に届く量が変わるイメージを表した模式図。実際の寸法・量を示すものではありません。
図の要点

  • 狭い溝ほど、底に届く反応種が減る
  • パターンの幅が狭いほど、掘れる速さが下がる

半導体製造装置メーカーのLam Researchの技術ブログも、似たことを述べています。設計のルールを守っていても、製造装置の力に限りがあるために、性能や歩留まり(良品の割合)が下がることがある、という内容です。

設計図どおりに作れば、そのままの形ができる、とは限りません。作る途中の条件によって、できあがりが変わります。

線の「縁」がギザギザになることもある

線の太さの平均が設計どおりでも、線の縁がギザギザしていることがあります。片側の縁のギザギザを「LER」、線の幅のばらつきを「LWR」と呼びます。名前は、いまは覚えなくて大丈夫です。

線の片側の端のゆらぎがLER、線の幅のゆらぎがLWRであることを示す概念図
LERとLWRの違いを表した模式図。ゆらぎの大きさは見やすいよう誇張しており、実測値ではありません。
図の要点

  • LER:片側の縁のゆらぎ
  • LWR:線の幅のゆらぎ

Lam Researchの解説は、LERは先端の半導体で大切なばらつきの原因で、性能が下がったり、故障したりする原因になりうる、と述べています。ただし、この解説の結果は、コンピューターの上の仮想の実験で、実際に測った値ではありません。

測った数字は、形そのものではない

CDを測る代表的な装置が、CD-SEM(シーディーセム)です。電子顕微鏡の一種で、日立ハイテクの解説によると、画像の明るさの違いから、線の太さを計算します。測るのは、光で形を写した後と、削った後です。

ここで、大事なことがあります。線の断面が台形の場合、上の幅と下の幅は違います。日立ハイテクの解説は、どこの幅を測った値にするかは、測定の設定で決める、と説明しています。つまり、同じ線でも、測る高さによって、数字が変わります。

「数字が合っている」ことと、「形が合っている」ことは、別のことです。数字は、ある方法で、ある場所を見た結果だと考えましょう。

測る装置を、もう少し詳しく

測る装置そのものを、もう少し詳しく知りたい方は、CD-SEMとSEMレビューの記事も読んでみてください。

寸法のずれは、何が困るのか

線の太さや縁の形が変わると、電気の流れやすさなど、回路の性質が変わる可能性があります。ただし、「何nmずれたら不良」という決まりは、この記事の資料からは言えません。製品や工程によって違うからです。確認できた範囲は、縁のギザギザが、条件によって性能低下や故障につながりうる、というところまでです。

ずれの原因は、どうやって探すのか

現場で線の太さのずれを見つけたら、次のような順番で調べる、と考えられます。

  1. もう一度測る。測り方で、数字が変わることがあるためです。
  2. 比べる基準をそろえる。光で写した後と、削った後の、どちらを比べるのかを決めます。
  3. 場所の特徴を見る。ウェハのどこで、どの装置で、いつ作ったものかを整理します。
  4. 装置の記録を調べる。圧力や電気の強さなど、形を決める条件の記録と、点検の履歴を見比べます。
  5. 追加のデータで確かめる。たまたま同時に起きただけかもしれないので、確かめてから判断します。

設備の調整や復旧は、所属する工場やメーカーの正式な手順と、権限のある人の判断のもとで行います。この記事は、原因を考えるときの見方を紹介するもので、設備の操作を指示するものではありません。

この問題を追う仕事は、設備保全、生産技術、プロセス、計測・品質などの担当が分担します。製造業で、寸法の公差や工程の記録を扱った経験は、「どの時点の、何の寸法なのか」をそろえる力として活きる、と考えられます。仕事の全体像は、半導体製造の仕事を工程別に見てみるから確認できます。

ことばのおさらい

この記事に出てきた言葉を、やさしい言い方で、もう一度まとめます。

  • 線幅・CD:線の太さのこと。穴の直径や、線のすき間も含みます。
  • レジスト:光に反応する膜。ここに、光で線の形を写します。
  • エッチング:膜を削って、写した形を下の膜へ移す工程です。
  • LER・LWR:線の縁のギザギザと、線の幅のばらつきのことです。
  • CD-SEM:線の太さを測る電子顕微鏡です。

よくある誤解

Q. 線は、細ければ細いほどよいのですか?

細さだけでは決まりません。太さの平均に加えて、縁のギザギザや、壁の形も関わります。この記事の資料からも、「小さければよい」と言える根拠は見つかっていません。

Q. CD-SEMの数字が設計どおりなら、形も設計どおりですか?

そうとは限りません。断面が台形なら、上と下で幅が違います。どこを測った数字なのかを、確かめる必要があります。

Q. 装置の設定が正常なら、ずれは装置のせいではないのですか?

設定の確認だけでは、足りません。同じ設定でも、溝の幅によって、削る速さが変わる例があるためです。設定、パターン、測り方の三つを合わせて見ます。

まとめ:線の太さのずれは、どこで変わったかを確かめる入口

線幅(CD)は、光で写す、削る、測る、という途中で、少しずつ変わることがあります。
測った数字は、ある方法で、ある場所を見た結果で、形そのものではありません。
原因は、測り直す、基準をそろえる、場所を見る、装置の記録を調べる、確かめる、の順で探します。

YouTubeでも、半導体をやさしく解説しています

図解で復習したい人向けに、YouTubeでも半導体製造を短く解説しています。

参考にした公式情報

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