Rapidusが17社と始めたRapidus COREを解説。2nm半導体に必要なGAA、EDA、IP、PDKの役割と、発表の意義、未確認の課題、今後の注目点を初心者向けに整理します。
Rapidusは2026年10月5日、先端半導体の開発・量産を支える連携枠組み「Rapidus Collaborative Open Rapid Ecosystem(Rapidus CORE)」を構築すると発表しました。第一弾として、Cadence Design Systems、Synopsys、大日本印刷、TOPPAN、東芝情報システムなど、国内外17社を「Design Solution Associate」として公表しています。今回のニュースは、2nm半導体の新しい性能値や量産実績を発表したものではありません。Rapidusの2nmプロセスを使って顧客がチップを設計しやすくするため、設計会社や関連企業との窓口を整えた発表です。Rapidusの発表
Rapidus COREで何が始まったのか
Rapidusの説明では、Design Solution Associateは顧客とRapidusをつなぎ、各社の設計リソースや専門知識を提供します。先端半導体の開発では、製造会社だけでなく、回路設計、EDAツール、半導体IP、設計検証、パッケージなど多くの専門分野が必要です。COREは、こうした企業を組織化し、顧客が設計開始から製造まで進みやすくするためのエコシステム、つまり協力企業のネットワークです。
今回公表された17社には、EDA大手のCadenceとSynopsysのほか、AION Silicon、GreatAsic Technology、HCLTech、Infinecs Systems、Infosys、メイビスデザイン、MosChip Technologies、NSW、Oppstar Technology、Quest Global Services、SkyeChip、TOPPAN、東芝情報システム、Wiproなどが含まれます。Rapidusは今後、設計関連だけでなく、EDAやIPなど対象カテゴリーを広げる方針も示しました。これは、参加社数の多さだけを競うというより、顧客が利用できる設計環境を増やそうとする動きと考えられます。Rapidusの英語発表
2nmとGAAを初心者向けに理解する
「2nm」は、すべての部品の寸法が文字どおり2ナノメートルになるという意味ではありません。半導体業界が世代を表すために使うプロセスノード名です。世代が進むと、同じ面積により多くのトランジスタを配置したり、性能と消費電力のバランスを改善したりすることが期待されます。
Rapidusが背景技術として説明しているのが、GAA(Gate All Around)です。トランジスタは、電気の通り道であるチャネルをゲートで制御するスイッチです。従来のFinFETでは、立体的なひれ状のチャネルをゲートが三方向から囲みます。一方、GAAではゲートがチャネルを四方から囲むため、電流をより細かく制御し、電気が意図せず流れる漏れ電流を抑えることが期待されます。
IBM Researchは、Rapidusとの共同研究で、薄いシリコンのシートを積み重ねたnanosheet型GAAを扱ったと説明しています。さらに、低消費電力向けと高性能向けなど、異なるしきい値電圧を実現するため、選択的層薄化などの製造技術を研究しています。しきい値電圧とは、トランジスタが電気を流し始める目安となる電圧です。低ければ動作しやすい一方で漏れ電流との両立が課題になり、高ければ電力を抑えやすい一方で速度との調整が必要になります。IBM Researchの解説
なぜ設計エコシステムが重要なのか
半導体工場を建設しても、顧客がすぐに製品を作れるとは限りません。顧客はまず回路を設計し、EDA(Electronic Design Automation)という設計自動化ツールで検証します。次に、他社が開発した機能ブロックであるIPを組み込み、PDK(Process Design Kit)を使って、その工場の製造ルールに合うか確認します。PDKは、配線幅や電気的な制約など、特定のプロセス向けに設計するためのルール集です。
これらが十分にそろっていなければ、設計した回路を工場で正しく製造できません。特に2nmのような先端世代では、トランジスタの構造、配線、電力供給、検証方法が従来世代と異なるため、設計会社側にも専門的な経験が必要です。COREは、Rapidusが製造設備だけでなく、顧客の設計開始を支える人材やツールの接点も増やそうとしている点に意味があります。
Rapidusは北海道のIIMで2nm GAA半導体のパイロット生産を進めていると説明しています。また、単一ウェーハ処理やAIによる製造データ解析を組み合わせ、設計・前工程・後工程をつないで開発期間を短くする構想も示しています。ただし、これらは同社が掲げる計画や事業説明であり、COREによって短縮効果が実測されたことを示すデータではありません。Rapidusの技術・事業説明
今回の発表で確認できないこと
COREの発表から確認できるのは、17社の参加表明と、設計から製造までの連携を強化する方針です。一方で、各社の具体的な担当範囲、契約条件、案件数、サービス開始時期、対応するPDKやIPの詳細は明らかになっていません。参加企業がいることは、量産受注、製品のテープアウト、歩留まり、性能、消費電力、量産能力が確認されたことを意味しません。
また、今回のCORE発表は2nm製造プロセスそのものの新しい実証発表でもありません。IBMとRapidusの共同研究は、nanosheet型GAAや製造技術に関する背景を示しますが、今回の発表によって量産性能が証明されたわけではありません。したがって、「17社が集まったから2nm量産が成功した」と読むのは早計です。
これから注目したいポイント
今後は、COREに参加する企業が実際にどのEDAフロー、IP、PDK、設計サービスを提供するのかが重要です。さらに、具体的な顧客名や製品分野、テープアウトの実績、試作チップの性能、歩留まり、量産契約が公表されれば、エコシステムが実際に機能しているかを判断しやすくなります。
Rapidusにとって、工場を動かす技術と同じくらい、顧客が設計を完了し、安定した製品を量産できる仕組みが重要です。今回のニュースは、その設計側の基盤を17社の参加表明によって可視化した一歩です。今後は、発表された計画と、実際に設計・試作・量産へ進んだ実績を分けて確認する必要があります。
出典
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このニュースの背景となる製造世代と微細化を、基礎から確認できます。
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