成膜とは何か?ウェハの上に薄い膜を作る半導体製造の積み上げ工程をやさしく解説

半導体成膜工程のアイキャッチ画像 ウェハ・材料

成膜とは、ウェハの上に絶縁膜・金属膜・保護膜などの薄い層を作る工程です。CVD、PVD、ALDの違いと、リソグラフィやエッチングとのつながりを初心者向けに解説します。

前回は、ウェハの上に回路を作り込む「前工程」の全体像を見ました。今回からは、その前工程を一つずつ分解していきます。

最初に見るのは「成膜」です。名前だけだと地味ですが、ここを理解すると半導体製造が一気に立体的に見えてきます。なぜなら成膜は、ウェハの上に機能を積み上げる工程だからです。

成膜のイメージ
ウェハ白い土台
薄い膜機能を積む
パターン必要な場所を決める
回路構造残す・削るを繰り返す
なおき

前工程で「膜を作る」って出てきたけど、膜ってラップみたいなもの?ウェハに何かを貼ってるの?

ふくろう先生

かなり良い例えです。ただし半導体の膜は、ラップよりはるかに薄く、しかも「電気を通す」「電気を止める」「守る」「あとで削られる」など、役割が細かく分かれています。

なおき

じゃあ、ただ塗ってるだけじゃなくて、チップの性質そのものを積み上げている感じ?

ふくろう先生

その通りです。成膜は、ウェハの上に「機能」を積み上げる工程です。

成膜とは何か

成膜とは、ウェハの表面に非常に薄い材料の層を作る工程です。英語では deposition、thin film deposition などと呼ばれます。

半導体は、シリコンウェハを削るだけでは作れません。絶縁する膜、電気を流す膜、表面を守る膜、後で削るための膜などを何層も重ね、その一部を残したり削ったりしながら、トランジスタや配線の構造を作っていきます。

まずはここだけ押さえればOK。
成膜は「ウェハの上に、必要な性質を持つ薄い層を作る工程」です。膜を作るだけでは回路の形にはなりません。次のリソグラフィやエッチングと組み合わせて、必要な場所だけを残していきます。

なぜ膜を作る必要があるのか

成膜が必要な理由は、半導体チップの中にいろいろな役割を持つ層が必要だからです。ウェハ全体がただのシリコンのままだと、電気を流す場所と止める場所を作り分けられません。

絶縁する電気が流れてはいけない場所を分ける。酸化膜や窒化膜などが関わります。
電気を流すゲート電極や配線につながる金属膜など、信号や電源の通り道を作ります。
守る・整える表面を保護したり、次工程で削るための下地を作ったりします。
なおき

なるほど。膜って聞くと保護フィルムみたいに思ってたけど、実際には電気の通り道や壁そのものになるんだ。

ふくろう先生

そうです。半導体の膜は、ただのカバーではありません。チップの構造と性能を決める部品の一部です。

成膜は前後工程とセットで理解する

成膜だけを単独で覚えると、少し使いにくい知識になります。重要なのは、成膜の前後です。

前工程の基本リズム
洗浄汚れを減らす
成膜薄い膜を作る
リソグラフィ模様を写す
エッチング不要部分を削る

たとえば、ウェハ表面に絶縁膜を作っただけでは、まだ回路の形にはなりません。その膜の上にフォトレジストを塗り、リソグラフィでパターンを写し、エッチングで不要な部分を削ることで、ようやく「必要な場所だけに膜が残る」状態になります。

半導体で使われる膜の種類

半導体製造で出てくる膜は、一種類ではありません。役割によって材料も作り方も変わります。

酸化膜代表例はシリコン酸化膜。絶縁や保護、下地として重要です。
窒化膜保護膜、絶縁膜、エッチングの止め膜など、工程上の役割が多い膜です。
金属膜電極や配線など、電気を流すために使われます。
High-k膜微細化で重要になった高誘電率材料。ゲート絶縁膜などで登場します。
Low-k膜配線間の容量を減らすために使われる低誘電率材料です。
バリア膜金属が不要な場所へ拡散するのを防ぐなど、見えない守り役です。

成膜方法の大きな分類

成膜方法にはいくつもありますが、初心者はまず CVD、PVD、ALD を押さえると見通しがよくなります。Applied Materialsの金属成膜ページでも、金属はALD、CVD、PVDなどの技術で成膜されると説明されています。

CVD

反応するガスから膜を育てる

化学反応を使ってウェハ表面に膜を作ります。絶縁膜、導電膜、半導体膜など幅広く使われます。

PVD

材料を飛ばして表面に付ける

物理的に材料を飛ばして膜を作ります。金属膜などで重要です。

ALD

原子層レベルで少しずつ積む

非常に薄く均一な膜を制御しやすい方法です。3D構造や微細化で重要性が高まっています。

なおき

CVD、PVD、ALDって、英語の略語が急に来ると一気に難しくなるな。

ふくろう先生

最初は名前よりもイメージです。CVDは「反応するガスから育てる」、PVDは「材料を飛ばして付ける」、ALDは「一層ずつ丁寧に積む」。このくらいから始めれば十分です。

CVD、PVD、ALDはどう使い分けるのか

使い分けは、膜の材料、厚さ、均一性、段差への付き回り、処理温度、生産性などで決まります。

CVDは、反応性ガスを使って膜を作るため、さまざまな材料に使いやすい方法です。Lam Researchの解説では、CVDやALDが金属膜や絶縁層などの形成に使われることが説明されています。

PVDは、金属材料を物理的に飛ばして膜を作るイメージです。金属膜では重要ですが、深い溝や複雑な段差の奥まで均一に膜を付けるのが難しい場合があります。

ALDは、原子層レベルで少しずつ膜を作るため、非常に薄い膜や複雑な3D構造で力を発揮します。Lam ResearchのALD解説でも、ALDはCVDの一種として薄膜形成に使われる技術だと説明されています。

成膜が難しい理由

成膜は「膜を作るだけ」と思うと簡単そうですが、実際にはかなり難しい工程です。なぜなら、ウェハ全体にわたって、狙った厚さ・狙った組成・狙った品質で膜を作る必要があるからです。

膜厚の均一性ウェハの中心と端で厚さがずれると、性能や歩留まりに影響します。
段差への付き回り溝や穴の側面・底まできれいに膜を付ける必要があります。
不純物と欠陥わずかな汚染や粒子が、リークや断線の原因になります。
温度制約高温で品質は上げやすくても、下の構造を壊せない場面があります。
量産性研究室でできる膜と、工場で安定して作れる膜は別物です。
微細化・3D化GAAや3D NANDのような構造では、膜の制御がさらに難しくなります。

企業や職種はどこにつながるのか

成膜を理解すると、半導体製造装置メーカーや材料メーカーが見えやすくなります。たとえばApplied Materials、Lam Research、東京エレクトロンなどは、成膜を含む半導体製造装置の領域で重要な企業です。東京エレクトロンも公式サイトで、成膜、リソグラフィ、エッチング、洗浄などの半導体製造プロセス向け製品を展開しています。

職種としては、プロセスエンジニア、装置エンジニア、材料エンジニア、品質管理、歩留まり改善、フィールドサービスエンジニアなどにつながります。

まとめ: 成膜はウェハに機能を積み上げる工程

成膜とは、ウェハの上に必要な性質を持つ薄い膜を作る工程です。絶縁する膜、電気を流す膜、保護する膜、後で削るための膜などを作ることで、ウェハの上に半導体デバイスの構造を積み上げていきます。

大事なのは、成膜だけで回路が完成するわけではないことです。洗浄で表面を整え、成膜で膜を作り、リソグラフィで模様を写し、エッチングで不要な部分を削る。この流れの中で、成膜は「機能を積む」役割を持っています。

参考にした公式情報

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